チームについて教えてください。
- Y.K
- JR西日本グループでは2023年に、グループ共通の会員・ポイント制度「WESTER会員」と「WESTERポイント」をスタートしています。このチームはこれらのWESTERサービスがスタートするのに先立ち、2022年6月、お客様データを活用しグループ全体の視点でマーケティングを担える人財である「グループマーケター」の育成を目的に発足しました。JR西日本の社員に加えて、データ活用を展開するグループ会社から集まったメンバーで構成されています。お客様にJR西日本グループの様々なサービスを繰り返しご利用いただけるような仕掛けづくりとして、データ分析の専門家とともに、それぞれの経験や知見を活かしながら、魅力的なポイントキャンペーン等を積極的に開催しています。まさに多様性を活かし、グループの価値創出を推進しているチームとなります。ここで得た経験は、再びグループ会社へ戻った後も取り入れてもらいたいと考えておりまして、第1期目の取り組みは2025年5月末に一区切りし、現在、第2期目のメンバーが集まり活動しているところです。
チームとして大切にしていることは?
- Y.K
- 第1期チームのときにグループシナジーを推進するにあたって、よりどころが欲しいという話になりまして、まず「志」や自分たちが「大切にする価値観」について言語化することから始めました。そのときにチーム名も「Synergy’z(シナジーズ)」としました。
- H.F
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全くバックグラウンドが異なるメンバーが集まっていますので、もしも判断に悩んだときには、ここに立ち返ることで、チームの大きな方向性がぶれないようにしたいと考えたのです。JR西日本グループの「私たちの志」と同じような役割です。当初、第1期のメンバーが作成して以降も、半年〜1年に1回のタイミングで実施するチーム合宿において、メンバーで集中議論し、時には内容を見直し、ブラッシュアップしてきました。
「Synergy’zの志」として掲げているのは、「私たちは、JR西日本グループのお客様に選ばれ続けるために、お客様の行動・心理を深く理解し、よりよい顧客体験価値を提供します」というものです。JR西日本グループは、幅広い事業を展開しています。この強みを最大限に活かして価値を創出するためには、それぞれの事業単独で考えるのではなく、「グループ横断でお客様がどのように行動し、何を感じているのか」を深く理解することが大切だと考えました。そのため、定量・定性的なデータに加えて、各メンバーのこれまでの業務経験や、いち利用者としての実体験から得た感覚をを掛け合わせることで、お客様像の解像度を上げていこうとしています。
中長期的には、こうして得た理解をもとに、リアル店舗でのお客様とのコミュニケーションを含めた会員向けサービス・商品にも関わっていきたいと考えています。
- H.F
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「大切にする価値観」についても少しお話ししましょう。
このチームができたときに、メンバーから「これは何のためにやっている取り組みなのか」という問いが投げかけられました。言われたからやる、決まっていることだからやるというのではいけない。自分たち自身が目的を理解し、納得したうえで取り組むことが大切だと考え、まず「目的志向で」臨むことを大切にしようと決めました。目的を明確にし、かつシンプルに整理していくこと。それらをチーム内だけでなくグループ会社の皆さんとも共有し、同じ方向を向いて価値創造につなげようという思いが込められています。
次は「多角的な視点で捉える」です。メンバーそれぞれのバックグラウンドもそうですし、お客様の視点、サービスを提供する企業側の視点、各グループ会社などで手掛けてきたプロジェクト経験など、いろいろな角度から物事を捉えることを意識しています。また、ただ多くの視点を持つだけでなく、状況に応じて適切な視点を使い分け、相手の目線に立ってシンプルに伝えることも重視しています。
最後に「多様性を力に」です。このチームは考え方の前提条件や人生経験、感じ方が異なるまさに多様なメンバーで構成されています。そのため、感覚や違和感を言語化し、対話を通じて共有しなければ、理解は深まりません。意見を出し合い、ときにはぶつかり合いながら対話を重ねることで、アイデアは広がり、深まっていきます。多様な経験や知識、考え方を言語化して共有することで、チーム全体の力として活かし、シナジーを生み出していきたいと考えています。
多様なメンバーがいることで大変なこと、
多様性が活かされた瞬間は?
- S.M
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チームの「大切にする価値観」でもふれましたが、価値観を共有することは大変なことの1つだと思います。みんな同じJR西日本グループで働いてはいるのですが、それぞれの経歴や所属しているグループ会社によって価値観、重要視していることが少し異なるところがあると感じます。自分はこうだと思って話していて、相手も頷いているのに、よくよく話していくと全然違うふうに捉えていることもあって、大変だなと感じる一方で、これがまさに多様さということかと思います。
例えば、お客様との接点は私が所属している物販飲食系のグループ会社が一番近いのではないかと思っていまして、マーケティング本部は本社の中で企画立案するのでお客様との接点がすごく遠くにある部署だと感じます。物販飲食系のグループ会社にいると、すぐそこに駅ナカのコンビニやお土産のお店がありお客様がいらっしゃるので、わからないときはお客様に直接聞くこともできます。チームのメンバーと話をしていると、お客様の行動や気持ちを想像するっていう時間が長くて、距離感が違うのだなと思います。逆に、私は距離が近すぎて見えていないこともあるので、チームメンバーから学ぶ部分も多いですね。
- E.T
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同感です。まず共通言語が違うので、それぞれの感覚を言語化して共有しようという話が出たと思うのですが、「お客様」という言葉1つとってみても想像することが全く異なるんです。例えば、お客様のインサイトを考えるプロジェクトを進めていたときに、ホテル出身の方が考えるお客様と、百貨店・SC・駅出身の方が考えるお客様では、異なるインサイトを想像しているのだろうなと思うわけです。ただ、その感覚・考えの違いを言語化して共有することで、グループ全体のいろいろなお客様像が浮き彫りになってきて、これまで想像できなかったお客様像も見えてきてすごく勉強になりました。
百貨店だと52週マーチャンダイジングの計画があり、毎週スピード感を持って施策を打ち出していきます。そのような状況なので、事前分析に時間をかけるよりも感性を優先させて迅速に進めていきます。一方、鉄道事業では安心・安全を重視し、様々な観点を丁寧に整理し、得た有益な情報を最大限に活かし計画するのが常です。このチームに来てから仕事への向き合い方の多様さにもふれ、一旦立ち止まって考えることの重要性にも気づかされました。
- D.Y
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同じくです。JR西日本グループと言っても事業の内容は様々で、2年前にこのチームに来たときは、言葉1つとっても各々の捉え方が違っていて、会話が噛み合っていると思っていたら、実は全然噛み合っていなかったり。振り返るとコミュニケーションコストがかかって非常に大変だと思いました。
「大切にする価値観」の1つに「多角的な視点で捉える」とありましたが、ネガティブに捉えると、視点のベースがかなり違うので合わせることは大変です。ですので、逆に合わせなくてもいいのではないかとも思っています。
一人のお客様を捉えるにしても、ある一面から見てもそれが全てではありません。他の事業の方を通してお客様の違う側面に気づくことが多々あり、SC系のグループ会社だけにいると周囲のメンバーにはない視点ですし、自分でも気づかなかったと思います。同じ事象を見るにも、いろいろな見え方や考え方があることを学んで、思考が広がったと感じます。ただ、チームのメンバーが入れ替わると、理解がまた薄れてしまうことは課題です。「多様性を力に」するには、今後、言葉として受け継いでいくことが大事だと思っています。
- Y.T
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本当にその通りですね。ほとんど言うことがありません(笑)。
私が経験してきた鉄道の運輸に関する仕事はお客様に近いようで遠いところがあるのだと気づかされました。より多くのお客様をいかに安全にお届けするかが主題で、実は一人ひとりのお客様を捉える力は弱かったのではないかと思います。マーケティング本部に来て、「そもそもお客様とは何か」と見つめ直して解像度を上げる経験をしてみると、苦労というよりも衝撃を受けるほうが大きかった気がします。
運輸系の仕事環境では阿吽の呼吸で伝わり同意を得ていたことも、価値観が異なる多様性のあるメンバーといることで改めて捉え直し、意見を出し合うことができます。違和感があったらすぐに伝え、議論を活性化できることがとてもいいと思います。コミュニケーションコストが高いという話もありましたけど、むしろお互いの意見をぶつけ合うことでコミュニケーションがしっかり取れますし、結果として、よりよいものにたどり着けるのではないでしょうか。
- H.F
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今までもいろいろなグループ会社の方と関わることは比較的多かったものの、同じチームで多様なグループ会社の方と一緒に同じ施策づくりに取り組む経験は初めてのことでした。今の第2期のチームメンバーからも様々な意見が出てきますが、各グループ会社に戻った第1期のメンバーが絡むと一層意見が飛び交います。そうして意見を出し合うことから建設的な議論が生まれるよさを実感しますし、皆さんの意見が1つの施策としてアウトプットされ、しかも取り組みのサイクルとしても確立されていることに感動します。
例えばお客様のリピート頻度で捉えても、ホテルと物販飲食店舗の利用客とでは評価基準が違います。そんなふうに事業によって前提条件が違うことは頭でわかっていても、メンバーと話し合うときは「自分が思っていることは当たり前ではない」ことを意識しながら日々発言するようにしています。
- K.A
- 皆さんがおっしゃる通り言葉も文化も違うので、会議で理解して聞いているつもりでも、後々「ああ、そういう意味だったんだ」と思うことが多くあります。すり合わせには時間がかかるし、言葉や文化が違うと意思決定のスピードも違います。でも興味深いのは、それぞれ皆さんの事業特性上の強みも違うことです。SCや物販飲食系のグループ会社は集客が上手。ホテルは接客するのが上手ですが、この集客がウィークポイントになっています。
一緒に施策を展開することによって、ホテルにSCや物販飲食のお客様を呼び込むことができたときは、多様さが生きた瞬間かなと思います。
- Y.K
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私自身としては人事系の仕事経験は長いものの、JR西日本グループにはたくさんの事業があるのに事業の経験がありません。だからといって今からホテルのことを勉強することは難しいですよね。それならば、能力のある人たちに集まってもらっているので、多様さや経験を活かすようなチーム運営をサポートするのなら力が発揮できると考えています。
多様な背景を持つメンバーとして集まっていても、ときには先輩後輩関係が生まれてしまうので、会議で何か発言を躊躇していると感じたら意識的に意見を聞くようにしています。耳の痛い意見もありますが、ありがとうと思うように心がけています。
先ほど出たように、ここでの取り組みを再現性のある形にしていかないといけないというのも考えています。ちゃんと記録に残して、次の人、次の体制に引き継ぐということも意識しています。
具体的な取り組みエピソードがあれば教えてください。
- K.A
- 例えば、ホテルのWESTER会員を増やすキャンペーンを考案するときに、ホテル系のグループ会社の皆さんといろいろ議論をして内容を固めていったのですが、キャンペーンのホームページについて、このチームのメンバーに見せてみると「これだとお客様に伝わりづらいのでは?」と自分や同じホテル業界のメンバーでは気がつかなかった点をいろいろとアドバイスしてもらえました。
- Y.T
- 自分も鉄道利用と絡めたポイントキャンペーンを企画しているときに似たような経験があります。自分の中では「こうしたい」というこだわりがある一方で、メンバーから「お客様の視点で見るとこうしたほうがいい」という意見が出てきまして、自分の価値観にはない視点から意見をもらえる環境はとても良いと感じました。
- Y.K
- 2025年の夏に実施した「WESTER de BINGO(ウェスターでビンゴ)」という企画は話題になりましたよね。あれはS.Mさんの力だと思っているのですけど。
- S.M
- ありがとうございます。「WESTER de BINGO」は、WESTERアプリを使ったデジタルスタンプラリーで、ビンゴを達成するとWESTERポイントのプレゼントや景品が当たるという内容でした。ビンゴの達成には駅ナカの店舗やホテル、駅の利用や大阪・関西万博への訪問など、クリアするために様々な条件を設定することで、このビンゴを通してJR西日本グループの多様な商品やサービスを利用してもらう仕掛けとしました。褒めてはいただきましたが、BINGOの9個のマスに何をどう組み合わせて配置するといいかを、物販飲食やホテル系グループ会社の方と議論していくことで、最適解を見つけることができました。
- H.F
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それと、駅ナカ自販機curicoを使ったキャンペーンは新しい気づきが得られた事例ですね。
curicoは西日本エリア全体の駅ナカに約2,000台ありまして、ICOCAを使ってその自販機で飲み物を買い、さらに鉄道を利用するとポイントがもらえる企画です。普段、駅や鉄道を使っていても自販機には気づかず通りすぎていたお客様に対してアピールするのが目的でした。キャンペーンに参加したお客様のICOCA利用データから得られた示唆として、駅ナカの自販機を利用する人は鉄道を日常的に利用する人が多いと想定していたところ、意外と中長距離の新幹線や特急などで旅行に行くお客様が使っていることがわかりました。
- S.M
- 京阪神エリアに住んでいると、curicoを利用するのは、普段通勤・通学で駅・鉄道を使うお客様のイメージがありました。ところが広島駅や岡山駅を利用されるお客様データを見てみると、通勤・通学で電車に乗るというよりも、旅行に行くために電車に乗る方が多いことがわかったんです。2026年の春にも駅ナカ自販機curicoキャンペーンを実施するのですが、今回はICOCAで鉄道に乗るだけではなく、特急や新幹線の予約ができるJR西日本ネット予約サービスの「e5489(いいごよやく)」の利用も条件に追加することにしました。
- Y.K
- メンバーの多様性があることでよりよい形で実現できた取り組みもあれば、取り組みを通じて得られたデータからお客様の多様性に改めて気づく機会を得られるというのもこのチームならではですね。
今後の展望を教えてください。
- S.M
- 多様な意見を今は同じチームのメンバーに気軽に聞くことができますが、元の会社に戻るとなかなか難しいかもしれません。メンバーの入れ替わりもありますし、自分が受け継いだものと育てたものをどう整理して残していくと良いのだろうかと考えています。
- E.T
- 現状は、どちらかというと各グループの会社へ施策を持ちかけるような一方的な流れが多いと思うのですけど、今後は各グループの方から頼ってもらえるチームになっていけたら良いと考えています。これまでの知見を形式化していって、データベースなどに蓄積して、ビジネス担当でありながらコンサルティングもできるような存在になれると良いですね。
- D.Y
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Synergy’zは、JR西日本グループという組織のハブとして、各事業や各グループ会社を上下関係ではなく、一定の対等関係でつなぐ役割があると思っています。この取り組みを単なるチームの営みで終わらせたくはないというのがあります。
JR西日本グループ各社が、組織対組織で連携していくことができたら、もっとグループの一体感は発揮されるはずです。何年後かわかりませんが、最終的にはこのチームは発展的解消をして、「グループシナジー」という概念自体がグループ全体に浸透していくことができたらと思います。
- Y.K
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Synergy’zという人事交流の取り組みから巣立った人たちが、自分の会社に戻ったあとも活躍してシナジーを生み出してくれることを期待しています。彼らがさらに成長した将来、「あのときは大変だったよね」と語り合っている姿を見てみたいものです。







