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奈良電車区 鼻野 賢介 運転士
運転士として、これまでに非常ブレーキをかけた経験は幾度とあります。
その中でも、「異常を感じたら迷わず止める」行動の1つとして、昨年の奈良線での事象が心に残っています。稲荷駅からJR藤森駅間を走行中に、運転する線路上の架線のあたりまで竹が伸びているのに気付きましたが、直近の列車の運行には影響がないと判断し、運転を継続しました。しかしながら、しばらくして、強い雨が降ってきたため、「先ほどの竹が傾いて、架線の障害となるかもしれない」と考え、次の停車駅到着後に、直ちに指令所へ連絡し、竹の対処の依頼を行いました。
この事例もそうですが、列車の運転中は、前方を注視することはもちろん、ある一点に集中せず、広い視野で想像力を働かせ、線路や架線、車両の状態、さらには天候などにも気を配ることを意識しています。
問題ないと思って運転するのではなく、常に「何か異常があるのではないか」という視点を持つことが大切であると考えて、乗務しています。
「安全に確信が持てないときに列車を止めることは、運転士の最も重要な責務である」と考えています。
しかし、非常ブレーキをかけると、ご乗車いただいているお客様を不安にさせてしまうかもしれないという意識があり、どんな時も列車を止めることに不安がないとは言えません。
だからこそ、判断に迷う場面を減らすために、普段から規程を読み込み、先輩の経験談を積極的に聞くなどして、自己研鑽に努めています。
また、職場で定期的に開催されている、個々が感じたリスクや過去の事例について共有・議論する場へも積極的に参加し、判断力を高めるための努力を惜しみません。
「異常を感じたら迷わず止める」こと以外にも、取り組んでいることがあります。
車掌がドアを閉める際に、運転士が後部の確認(お客様の乗降を確認し、ドア挟みなど危険を感じたら車掌にブザーで知らせる)をする駅は指定されていますが、すべての駅で行い、お客様の安全に最大の注意を払っています。
また、他の列車の通過待ちや乗り換え接続などで駅に停車中は、ホームに出て、ホームからの転落の危険がないかなど、お客様の歩行や乗降を見守ります。
「お客様は、鉄道の安全を信じてご利用くださっている」
この思いを胸に、お客様の安全を最優先にした行動を、日々積み重ねています。