主な研究成果
近年の主な研究テーマ
(1)基礎的な研究
- ○ミスの連鎖の発生メカニズムに関する基礎的研究
- ○ワークエンゲイジメント(指標)と安全行動の関連の検討
- ○作業終盤の失念エラーに重要性認知が及ぼす影響
(2)社員のヒューマンファクターに関する研究
- ○運転士等の眠気予防策に関する研究
- ○異常時の対処法に関する研究
- ○ヒューマンファクター教育の効果測定
- ○ヒューマンエラーに起因する鉄道事故の防止に関する一考察
- ○夜勤時の眠気に関する研究
- ○ホーム柵が運転士に与える心理的負担についての研究
- ○リスク感度の向上に関する研究
- ○役割や権限が与えられたときの対人行動の変化に関する研究
(3)人と装置とのインターフェイスに関する研究
- ○人と装置とのインターフェイスに関する研究
- ○列車運転時における警報音の適正な音量に関する研究
- ○旅客流動確認モニターの検証
- ○新型車両導入時の運転士の習得度の変化について
- ○227系運転台前面パネルの機器配置に関する研究
- ○検査修繕作業における最適な照明に関する研究
(4)お客様などのヒューマンファクターに関する研究
- ○ホーム上の酔客対策の研究
- ○駅でのスマートフォン利用に関する調査
- ○鉄道トンネル火災事故における避難行動と救助活動
- ○踏切道における高齢ドライバーの行動特性
あんけんVol.14〜研究成果レポート〜

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列車内閉じ込めに遭遇した乗客の援助行動に関する調査
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異常時に乗客同士が助け合う援助行動は、車内において急病人が発生した場合や要支援者を介助する際のほか、席の譲り合いなどにより急病人の発生を未然に抑止する効果があると考えます。ところが車内は常に見知らぬ者同士の乗客が乗り合わせており、援助行動が速やかに行われるとは限りません。本調査では、大阪北部地震発生にともない駅間停車した車内における乗客の援助行動の実態を把握しました。
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計画運休実施時の情報提供に関する調査
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当社では、台風接近時に事前にお客様へ周知したうえで全面運休する計画運休を2014年より実施しています。本調査では、台風接近にともなう計画運休の実施場面を鉄道利用者に思い浮かべてもらい、計画運休実施前に発信する計画運休の可能性を伝える情報と計画運休の実施が確定したことを伝える情報に関し、鉄道事業者に提供してほしいタイミングを計画運休の実施曜日、開始時刻ごとに明らかにしました。
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リスク感度の向上に関する研究
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私たちが目指している「全員参加型の安全管理」を進めていくためには、一人ひとりの安全考動を促進し、社員一人ひとりがリスクを適切に発見し周囲に共有できることが重要になります。一方で、同じ状況を見ても、その状況にどのようなリスクがあるかを感じとる「リスク感度」には個人差が大きいことも指摘されています。そこでリスク感度の高い係員が、なぜリスクを察知できるか明らかにすることを目的に、駅係員を対象に調査を行いました。
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駅利用者の歩きスマホの低減に向けた研究
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2018年度の調査(以下、「先行研究」という。)では、当社管内で発生した歩きスマホによる危険事例を再現した映像(以下、「実例映像」という。)を視聴することにより、歩きスマホに対する危険性・迷惑性や事故の被害の程度に関する意識が向上することが分かりました。今回は先行研究と同じ映像を用いて、実際の行動も変容させる効果があるのか検証を行いました。検証を行うにあたり、鉄道事業者として働きかけたい対象である歩きスマホをよくする人、つまり自身が触車・転落したり周りの人を怪我させたりする等の危険性が高い人にターゲットを絞ることとしました。また、実例映像の受け止め方により行動変容効果が異なると考えました。そこで本研究では歩きスマホをよくする人をターゲットとし、「映像を強く受け止める人は実例映像の視聴により歩きスマホが減少する」という仮説を立てて実例映像の効果検証を行いました。
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踏切内に閉じ込められた高齢ドライバーの行動と意識
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自動車が関連する踏切事故は、社会的影響の大きい事故となりやすく、鉄道事業者にとって重要な課題となっています。国土交通省の発表では、平成23〜27年度に発生した踏切事故のうち、衝撃物が自動車の件数は646件であり、このうち、60歳以上のドライバーが47.4%を占めます。そこで、本研究では踏切事故防止策の検討のために高齢のドライバーが踏切内に閉じ込められる事象に着目し、聞き取り調査を実施しました。
踏切内で自動車が故障や脱輪等で動けなくなった場合、速やかに非常ボタンを押し、そのまま踏切の外で待機することが望まれます。自動車が自走できる状態で踏切内に閉じ込められた場合、当社では速やかに自動車で前進して遮断桿を押し上げて踏切外へ脱出することを推奨しています。自動車が列車との衝突に至った事象では、これらの対処がなされていないことが少なくありません。本研究では踏切事故防止策の検討のため、踏切内に閉じ込められた高齢のドライバーがどのような行動を採る傾向にあるのか明らかにすることを目的としました。
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エスカレーター利用時の安全(実態調査)
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お客様がご利用される駅設備のひとつにエスカレーターがあります。エスカレーターは多くのお客様を効率よくホーム階、または改札階まで移動していただくことと、バリアフリーの観点から設置されており、当社管内では約150駅に設置されています。
日本エレベーター協会の資料によると、建物用途別の事故発生率では交通機関のエスカレーター事故が突出しており、当社においても転倒や転落、衣服の挟まれ等(以下、「事故等」とする。)が発生しています。
そこで、本調査ではお客様のご利用とエスカレーター設置台数の多い京都、大阪、神戸支社(以下、「3支社」とする。)を対象に、どのような事故等が発生しているか実態調査を行いました。
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運転室内の走行騒音下における音サインの聞き取りやすさ及び警告感調査
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報知音や警報音など、何らかのメッセ―ジを伝える音はサイン音と呼ばれています。中でも、本研究では音声を含まないサイン音を「音サイン」と呼んでいます。鉄道車両の運転室には様々な音サインがあり、走行騒音が発生する環境下でも、運転士はこれら音サインを聞き取ることが必要となります。また、音のパターン(リズムや断続の有無)や周波数、また各自が持つ知識・経験などによって音の警告感が変わってくるとされています。
そこで、鉄道車両の運転室内に相応しいサイン音の検討を目指し、運転室内の走行騒音を模擬した環境下における様々な種類の音サインの聞き取りやすさと、音サインが与える警告感について調査を行いました。
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過去の主な研究成果について
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2019年度まで
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2018年度まで
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2017年度まで
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平成28年度まで
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平成27年度まで
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平成26年度まで
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平成25年度まで
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平成24年度まで
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平成23年度まで
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平成22年度まで
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平成21年度まで
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平成20年度まで
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平成19年度まで
いずれも無断複製厳禁です。
教材の発行と社内外への配布
事例でわかるヒューマンファクター
安全研究所では、2007年3月に教材「事例でわかるヒューマンファクター」を発行し、2019年3月までに社内・社外に対し15万部あまりを配布してきました。この教材は、ヒューマンファクターとは何かをやさしい表現でわかりやすく解説しており、社内外のヒューマンファクター教育に活用されています。
一方、発行後10年以上が経過したことから、新たに正常性バイアス、確証バイアスの追加など内容の見直しを図るとともに、この間の研究活動等から得た知見や成果を盛り込み、「ヒューマンファクターの一層の理解・浸透に向け」改訂し、この度、「事例でわかるヒューマンファクター1【基本編】」(A4版89頁)として発行しました。
事例でわかるヒューマンファクター(初版)

事例でわかるヒューマンファクター1【基本編】


第1章では、ヒューマンファクターの基本的な考え方などを説明し、第2章では、「脳への情報がうまく伝わらなかった」とき第3章では、「判断をうまくできなかった」ときにそれぞれ生じるエラーについて紹介しています。
第4章では前章で紹介したヒューマンファクターを含め、エラーを防止するために、皆で取り組むべき対策や守るべきルール等、私たちをとりまくものについて説明しています。
事例でわかるヒューマンファクター2 リーダー編
2017年3月には『事例でわかるヒューマンファクター』の続編として、前書と同様に学界の知見等も参考にしつつ、現場第一線の管理監督層に知ってほしい事項を盛りこんだ教材を発行、現場第一線の社員およびグループ会社へ配付しました。
管理監督層として実践して欲しい事項(7項)を抽出し、前編より、ステップアップした内容ではありますが、身近な事象を例にあげ、イラストや図表を豊富に盛り込みわかりやすく解説しました。(A4版50頁)
この内容についても安全研究所が各支社に赴き、教材の活用法などについて出前講義を行っています。

乗務員のための睡眠ハンドブック
2009年11月に運転士のための眠気防止ガイドラインを発行しました。安全研究所では、乗務員への眠気防止対策として、学界の知見を参考に、眠気防止に必要と考えられる、個人の「身体や睡眠のメカニズム」を知ってもらう研究をおこなってきました。
このガイドラインをベースに新たな知見や日常生活で留意すべき事項を追記・改訂する形で、2018年3月に「乗務員のための睡眠ハンドブック〜安全と健康のために〜」を発行しました。2021年3月に、よりわかりやすく正確な記述とするため、内容の一部を改変しています。(A4版53頁)
