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匠への道

技術を受け継ぐ旗手たち(第21回)

(株)ホテルグランヴィア岡山 宿泊部 宿泊予約課 セールス担当 ターパ ゴダル ウパカル 主任

(株)ホテルグランヴィア岡山 宿泊部 宿泊予約課 セールス担当 ターパ ゴダル ウパカル 主任

今回の主人公 ターパ ゴダル ウパカルは、南アジアに位置するネパール連邦民主共和国で生まれ育ち、大学留学で日本にやって来た。「母国ネパールと日本をつなげ、自分をここまで成長させてくれた両国に恩返しがしたい」これが彼の原動力であり夢だ。初の外国人社員としてホテルグランヴィア岡山に入社。外国人だからこそ気づけること、強みがたくさんあると笑顔で話す。「ホテルグランヴィア岡山を、岡山ナンバーワンのホテルにし、日本中に、また世界中に発信したい」という思いを胸に、夢に向かって奮闘し続ける姿を追った。

ターパ ゴダル ウパカルの経歴図

自分が本当に良いと思ったものをお客様におすすめしたい

母国ネパールでは大学を飛び級で卒業し、さらなる高みをめざし日本の大学への留学を決意した。ネパールは観光国であるため観光学科を選択。観光に関わる仕事がしたいと考え、アルバイトとしてホテルグランヴィア岡山に入社した。同社を岡山の中でナンバーワンのホテルにし、持続・発展させていきたい、またお世話になった岡山の人と街に恩返しがしたいと考え、大学卒業後、そのまま社員となった。

今では日本人よりも流暢なのではないかと感じるほどの美しい日本語を話すが、入社当初は言葉の壁で苦労した。周りの先輩の接客、テレビや本を見て必死に勉強した。休日には県外のホテルにも足を運び、おもてなしを学んだ。

アルバイト・社員を通算すると、おおよそ4年間、宿泊部宿泊サービス課でベル・フロント係として従事した。ベル・フロント係とはお客様を部屋までアテンドしたり、荷物を運んだり、チェックイン・チェックアウトの手続きをする役割である。また、岡山の情報をご案内するコンシェルジュの役割も担う。「せっかくお客様がコンシェルジュに問い合わせてくださっているのだから、ガイドブックに掲載されていること以外の情報もお伝えしたい」と、休日には地元で人気の飲食店やイベントなどに足を運んだ。自分の目で見て、耳で聞いて、舌で感じて、本当に良いと思ったものをお客様にお伝えしたいという強い思いがある。実際に、お客様が自分のおすすめした場所を訪れ、ホテルにお戻りになった際に「良かった」とおっしゃっていただけると、大きなやりがいを感じるという。

何が最善か自ら考えて動く

お客様を岡山駅までアテンドすることもある。

社員になって数カ月が経ったころ、イギリスからお越しになったお客様が、深夜に持病の症状に苦しみ、フロントに薬を依頼された。話を聞くと、日本に来る飛行機の中に常用している薬を忘れたとのこと。何の薬かが明確だったので近くの病院に薬の処方を依頼したが、断られた。しかし、お客様は非常に苦しんでおられ、「苦しまれる姿を見てそのままにはできない、助けたい」という一心で、粘り強く病院と交渉し、結果、薬を出してもらうことができた。お客様は涙を流して喜んでくださり、後日社内ベストサービス評価ももらった。

また、社員になって一年が経ったころ、イタリアから団体のお客様がいらっしゃった。倉敷美観地区をガイドと共に観光される予定だったが、お客様の一人が急病になられガイドは病院に連れ添うことになった。団体の他のお客様が時間を持て余すことになってしまうので、上司と相談しウパカルがガイド役を買って出た。ホテルスタッフがそこまでしなくてもという考えもあるかもしれないが、旅がお客様にとって最高の思い出となれば、「また来たい」という思いにつながり、いずれ自分たちの仕事に返ってくると信じてご案内した。お客様はとても喜んでくださったという。

経験年数や立場は関係ない。一人のホテルスタッフとして何が大切で、お客様にとって何が必要かを考えて実行し続けている。

岡山とホテルグランヴィア岡山の良さを世界中に伝えたい

2018年5月から、宿泊部 宿泊予約課でセールス担当を担っている。世界中のお客様に岡山の良さを伝え、ホテルグランヴィア岡山をご利用いただくことが使命だ。名所や食などの観光商材、岡山という地のアクセスの良さを伝えるべく、日本全国、月に一回は海外へも飛ぶ多忙な日々を過ごしている。

直近の目標は「インバウンドのお客様比率を25%にすること」。昨年の春は15%、今春は19%と着実に伸びてきている。日本国内のお客様のご利用ももちろんだが、インバウンドにもっと力を入れていきたいと考えている。彼一人の力だけでは、この目標は達成し得ない。言葉で後輩指導を行うのではなく自身の姿を見て自発的に行動してくれればと考え、セールス担当になった今も、時間を見つけてはフロントに出てお客様と接するようにしている。

「母国ネパールと日本をつなげ、自分をここまで成長させてくれた両国に恩返しする」という最終目標に向かって、ウパカルは今日も歩み続ける。

影響を受けた言葉「一歩一歩前へ前へ」

私の恩人であり尊敬しているアルピニストの野口健さんからいただいた言葉です。「どんな困難があっても、前に進むことが未来につながる。くよくよ悩んで前に進まずにいては、何も見えてこない」という意味が込められています。私は来日した当初、外国人というだけで辛い思いをしたことがありました。そんな失意のどん底にいた時に、野口さんの本によって救われて、野口さんが主催する富士山の清掃ボランティアに参加したことから親交がはじまりました。野口さんもエジプトと日本のハーフということで苦労された経験をお持ちで、嫌なこと、できないことがあったとしても、自分にできることは何かを考え一歩ずつ前に進んでいくことの大切さを気づかせていただきました。

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