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輝く匠

安全・安心を支える技術(第47回)

広島総合指令所 厚狭派出 中森 敏彦 副所長

1980年国鉄入社。駅構内係や駅営業、出向で飲食店勤務などさまざまな経験を経て、1999年、広島CTCセンターに着任した。それからは指令一筋で、2018年に広島総合指令所の副所長となり、厚狭派出の運営や新任指令員の育成を担っている。
 

「指令は、運行管理を行う中で発生するさまざまな事象に対し、的確な状況把握を行い、速やかに安全な措置を講じなければなりません。そのためには常に感性を研ぎ澄ます必要があります」。今回の主人公は広島総合指令所 厚狭派出を束ねる中森 敏彦。「若手指令員を思う気持ちは我が子を思う気持ちと同じです」。厳しさの中にも愛情あふれる匠の背中を追った。

「自分自身に負けたくない」マッチ棒で練習した指令着任当初

「若い頃は色んなことに挑戦してみたいという思いが強かった」そう話す中森は、19歳で国鉄に入社してから約19年の間で、自ら進んで手を上げ駅構内係、旅行のセールス、駅営業、ハートアンドアクション・フーズ(株)に出向し飲食店での調理・接客など多様な経験を積んできた。

1999年39歳の時、広島CTCセンターに着任。ここから中森の指令員としてのキャリアがスタートした。初めて見る列車ダイヤを読み解くことに苦労した。「列車ダイヤを読み解き、手動で十数駅の信号テコを扱い、線路閉鎖工事などの対応も行う。うまくできず上司から厳しく指導を受けたことや、自分には無理かもしれないと心が折れそうになったこともありました」と当時を振り返る。

新しいことに挑戦するということは、それだけ苦労も多いはずだが、どうやって乗り越えてきたのだろうか。「とにかく自分に負けるのが嫌。あの人ができるなら自分もできるはず、できないままで終わらせたくないと思って努力してきました。信号テコ扱いを習得するために、家でもマッチ棒を信号テコに見立ててイメージトレーニングしていました」。地道な努力を積み重ねて、今の中森がいる。

※ハートアンドアクション・フーズ(株)・・・現在は(株)ジェイアール西日本フードサービスネット

“たまたま”に安心してはならない

2006年に厚狭派出の指令長となった中森だが、指令長時代に今も忘れることのできない痛恨の経験がある。大雨で終日にわたって運転規制がかかったことがあった。当日の対応や翌日の初列車からの運転規制の準備などで指令員たちは疲労困憊。そんな時、施設指令より、線路状態不良により、翌日初列車からの一定区間の速度制限(30km/h以下)の要請があった。本来の取扱いであれば、運転士に速度制限を指示するための通告内容は2人でダブルチェックすることとなっていた。しかし、指令員たちを少しでも休ませたいと思い、2人でダブルチェックすべきところを中森一人で行った結果、速度を誤り15km/h以下の通告を複数の列車に行ってしまった。

「“たまたま”速度超過にはならなかったが、雨運転規制時の誤りは大きな危険性を持っています。人命に直結する業務を行っているにもかかわらず、自分の甘さを痛感しました。ましてや指導する立場にある自分がルールを破るということはあってはならないことであり、大きな反省でした。この事象は“たまたま”助かっただけ。“たまたま”に決して安心してはなりません。お客様や仲間の命を危険にさらすことになったかもしれないという怖さを自覚して、次につなげなければならないと、自分の過ちを指令員たちに伝えています」。

辛い思いをさせたくないからこそ厳しさも必要。厳しさの後には必ずフォローを

現在は広島総合指令所の副所長として、厚狭派出の運営、新任指令員の育成を担っている。指令員を教育していく上で大切にしていることは、メリハリをつけて教えること。「指令は人命に直結する仕事。取り返しのつかないミスをして辛い思いをさせないように守ってあげたい、そのために厳しく指導することもあります。また、苦労せずに人から教わったことは、その時は理解できていてもすぐに忘れてしまいます。絶対にやってはならないこと、やらなければならないことは、何度も何度も繰り返し伝え、徹底的に教え込むようにしています」。

一方、自身もうまくできず辛い思いをしてきた経験がある。「厳しく指導した後には、必ずフォローするよう心がけています。仕事中は厳しく、休憩時間中や業務終了後はフレンドリーに接することで、質問しやすい環境づくりをめざしています。自分が育成に携わった指令員が活躍しているのを見るとうれしく、やりがいを感じます」と笑顔がこぼれた。若手・ベテラン問わずコミュニケーションを積極的にとることが、一人ひとりの成長と職場の活性化につながると信じ、今日も中森は指令員の育成に力を入れる。

考えることで人は成長する

最後に、若手社員に向けてのメッセージを聞いた。

「指示されたことを指示された通りにこなすことも必要ですが、背景や狙い、目的や理由を知って、自分で考えること、日々の業務を決して作業化しないことが大切です。考えることで人は成長し、いつもと違うことが起こった場合にも適切な対応ができるようになります。一つ一つの仕事を丁寧に積み重ね、自らを成長させることで、働きがいや誇りにつながると思います」。

匠の影響を受けた言葉「指令には三つのお客様が存在する。この三つのお客様に満足いただかなければ、指令の仕事とは言えない。」

十数年前に当時の上司から教わった言葉です。三つのお客様とは、

  一、きっぷを買っていただいて旅行をされるお客様。
  二、お客様と直接接している駅係員や乗務員。
  三、 車両を整備している車両保守担当社員、鉄道設備を守っている工務関係社員。

『お客様に満足いただくためには情報が必要で、直接お客様と接している駅係員や乗務員に、できるだけ多くの情報を提供しなければならない。鉄道のハードを守ってくれている車両保守、工務関係の社員が安心して作業できる環境をつくること、これも指令の大切な役割。物の言い方ひとつとっても思いやりを持つことが大切。』という意味が込められています。

この言葉を忘れずに指令業務に従事してきました。それぞれの立場になって考えれば、おのずと自分たちがやらなければならないことが見えてきます。

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