- 昭和51年国鉄入社。当初は電車の検査修繕に従事する。平成2年に限免運転士となり、構内の車両の入換などを行う。平成9年には指導操縦者にも指定される。その後、当直係長などを経て平成22年より現職。平成27年には、長年にわたる人材育成やリスクアセスメントの取り組みが評価され、第9回 安全推進社長表彰を受賞。
「おう、元気かー?」。金沢総合車両所 運用検修センターには、すれ違う社員一人ひとりに声を掛け、何気ない会話を交わして回る人物がいる。その声の主は、センターの総括助役として、幅広い業務の管理はもとより、人材育成、リスクアセスメント推進にも取り組んでいる安田だ。「車両職場はチームで動くことが多いので、人と人との信頼関係が一番大切です。重大労災を発生させないためにも、コミュニケーションを通して社員間の風通しを良くして、皆が仕事をしやすい環境をつくるように心掛けています」。
昭和51年に国鉄に入社し、約40年にわたる鉄道人生を歩んできた安田。これまでに、さまざまな業務を経験してきたという。
10代、20代の頃は、車両の検査修繕に従事。「初めはひたすら『修繕』を行っていました。昔は今と違い、『検査』をするためには、一定年数が必要で、さらに社内資格も取得しなければなりません。誰もができる仕事ではありませんでしたが、それでも、ベテランの方々が検査で『点検ハンマー』を扱っている姿に憧れて。早くそれを持ちたい一心で、社内資格に必要な科目を必死で勉強して取得したのを覚えています」。
30代に差し掛かると、限免運転士※1や信号取扱いなどの入換業務に携わった。その頃、車両所構内でポイント割り出し※2を目の当たりにした。「幸いにも大事には至らず、また、自分自身に直接責任のある事象ではありませんでしたが、『1つのミスが命取りになる怖さがある』と、限免運転士の職責の重大性を強く認識させられました。以降、関係する規程やマニュアル類を熟読して、絶対にミスをしないための知識を身に付けました」。必死に取り組む姿を見ていた当時の上司の推薦により、安田は後に限免運転士の指導担当者としての役割も担った。「この頃が一番苦労しましたが、安全の大切さを肌で感じることができましたし、後進育成の大変さも理解することができました。振り返ってみると一番重要な時期だったように思います」。
40代では、当直係長として車両故障など緊急時の対応を任された。「夜は当直である自分一人しかいない時間帯があります。それはもう、責任は重大です。運用指令との電話でのやり取りは切迫したもので、電話を受けるのが嫌になることもありました。しかし、そのかいもあって、
そして、50代。ここへ来て、まさにこれまでの業務の集大成と言えるような出来事を迎える。そう、2015年の3月−北陸新幹線金沢開業に伴う「ダイヤ改正」−である。「車両の転配置や方向転換、抜本的な構内ダイヤの見直しなど、多岐にわたる課題を関係箇所と協議しながら最適解を見いだすべく、これまでの経験を総動員して全身全霊で対応しました」。周知のとおり、ダイヤ改正は成功裏に終わった。安田の幅広い知識と経験が光った瞬間であった。
※1:本線以外の車両基地構内などで、車両の入換や入出庫を行う運転士
※2:線路が開通していないポイントに車両が進入すること
後進に伝えたいことを尋ねると、安田はしばし黙した後、「私はたまたま、おおむね10年という節目を転機にさまざまな業務を経験させていただきました。同時に『40代はこうしたい、50代はこうありたい』というビジョンを持って仕事をしてきました。そのおかげで今の自分があります。若い皆さんも、これから仕事・私生活の両面で節目が訪れると思います。それらの節目を大切にしつつ、その都度、明確なビジョンを持って仕事に取り組んでほしいと思います」と言葉を紡いだ。安田のこの思いは、日々のコミュニケーションを通じ、若手・中堅社員に受け継がれていく。
安田が推進したリスクアセスメントにより、右側の柵を設置。事故の芽を事前に摘み取っている。
検査修繕のため、第3セクター会社「IRいしかわ鉄道株式会社」の車両も留置されている。
久保 康規
安田総括助役は人として魅力のある方で、若い人だけでなくベテランの方からも信頼があります。また、運用検修センター内のことなら安田総括助役に聞けば何でも分かるので、みんなが頼りにしています。それだけでもすごいことですが、毎日のように出てくる職場の課題にも真摯に取り組み、そして解決に導いています。その姿勢は、私たち若手社員の目指す姿となっています。私はまだまだ未熟ではありますが、いつの日か安田総括助役のような素敵な人になっていけるよう努力します。