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輝く匠

安全・安心を支える技術(第13回)

自ら実演し技術を伝える(新幹線管理本部 博多新幹線列車区 川越 弘 専門主任車掌)

新幹線管理本部 博多新幹線列車区 川越 弘 専門主任車掌

匠プロフィール
昭和54年4月に国鉄に入社。出身地である熊本県で駅員、在来線の車掌を経て、昭和61年に大阪車掌所(現 大阪新幹線車掌所)勤務となり、新幹線の車掌となる。以来、新幹線車掌として広島新幹線車掌所、博多新幹線列車区と新幹線の全ての車掌職場を経験する。平成22 年より専門主任車掌となり、その知識や経験を生かし乗務をしながら若手などへの指導の任にあたっている。

近畿から中国、九州を結ぶ大動脈である山陽新幹線。その車内ではお客様に快適な旅行を楽しんでいただくために、多くの車掌が乗務している。川越もその一人だ。

車掌への憧れ

熊本県で生まれた川越は、国鉄入社後、地元熊本での在来線の車掌を経て、大阪で新幹線の車掌になった。

新幹線に乗務し始めたころは、川越もお客様の応対で苦労した。ある時、指定席券をお持ちでないお客様が指定席にお座りになられていた。切符を発売後、「この座席の指定席券をお持ちのお客様が来られましたら、お席を替わってください」と伝えたつもりだった。しかし、その席を予約しているお客様が来られても、そのお客様は移動されなかったためトラブルになった。「乗務を終えて3日間はずっと後悔していました。お客様へのもう一言が足りなかった」と、川越は語る。お客様にどうしたら伝わるのか、その難しさを痛感した出来事だった。以来、お客様とのやりとり一つひとつに意識を持つようになった。

お客様の空気を読む

川越が接客の際に大事にしていることがある。それは「お客様の空気を読む」ことだ。「お客様へはこちらから話し掛けることが基本です。でも、あえて声をお掛けしない場合もあります。お客様の反応や表情、仕草などから、何を求められていて、どうしたら喜んでいただけるかをいつも意識して接客しています。お客様が対応を求めていらっしゃらないと感じたら、こちらからは声をお掛けしません」。意識を持ってお客様のニーズを感じ取り、それから行動する。それは長年の車掌としての接客の経験がなしうる技である。

お客様の空気を読むことは、接客の時だけではなく、お客様の安全を守る時にもこだわっている。車掌の業務で一番神経を使うのはドアの開け閉めの時だ。川越は語る。「ドアの取り扱いはお客様を挟まないように正確に行うことがもちろん大事です。しかし、それだけではなく、ホーム上のお客様のご様子を見て、次にどのような状況になるかを予測しなければなりません。危ないと感じたらすぐに列車を止めることが基本です」。

同じ目線での指導

専門主任車掌になってから3年が経過し、指導する立場でもある川越だが、自ら手本を示して見せることにこだわっている。「指導的な言い方・やり方だけでは、なかなか相手に伝わりません。相手が自主的に動くように、実演してみせるようにしています」。例えば車内放送でもそうだ。一緒に乗務している若手車掌の一人は言う。「川越さんの放送は、どんな輸送障害の時でも慌てている様子を感じません。落ち着いた口調で、しかも的確にお客様が必要としている情報を伝えています。実際にやっている姿を見る・聴くことが一番勉強になります」。同じ職場で同じ目線に立って仕事をし、自分の背中を見せる「指導」が後輩たちに一番伝わっている。

専門主任車掌は乗務しながら後輩への指導を行う専門技術職だが、川越は自分が乗務する時間も重要な指導の時間であると考えている。「訓練の場以外でも共に乗務する中で伝えられることがありますし、逆に疑問点を聴くこともできます。内勤の指導助役・係長と実際に乗務している車掌との橋渡し役も重要な役割です」。

後輩たちに対して川越は熱く語る。「車掌という仕事に誇りを持ってほしいし、何より好きであってほしいですね。好きであれば仕事に対して真剣になれるし、まだまだ自分の知識・技術を向上させることができると思います」。新幹線の車掌になって28年が経ったが、今なお向上心に溢れている。「いまだに乗務していて新しい気付きがあります」。これからも若手車掌とともに乗務しながら、後輩たちと自分の車掌の技術を上げていく。

  • チームでお客様をお迎えする。
  • 車内放送では、分かりやすく的確な放送にこだわっている。
  • パーサー(車内販売員)との連携も欠かせない。

未来の匠

西川 真之介

川越さんは、日ごろの訓練や乗務を通じて、自ら模範となって指導をされている人です。

列車のダイヤが乱れている時でも、自ら落ち着いて情報を集め、お客様にご案内する技術は大変素晴らしく、共に乗務していても安心感があります。私もお客様が安心して新幹線に乗っていただけるように車内放送などの接客の技術を磨き、お客様に「新幹線に乗って良かった」と言われるように頑張ります。

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