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輝く匠

安全・安心を支える技術(第5回)

職場の結束力が技術継承と災害への対応力を支える(岡山支社 岡山保線区 津山保線管理室 川上 義憲 室長)

岡山支社 岡山保線区 津山保線管理室 川上 義憲 室長

匠プロフィール
昭和53年4月1日に岡山鉄道管理局津山保線区中国勝山支区に職員として配属され、津山の地を中心に雨にも負けず雪にも負けず、保線業務に従事してきた。平成24年5月に安全推進社長表彰を受賞。同年6月からは津山管理室長として職場のマネジメントに携わっている。

岡山県下第三の都市である津山市。扇形機関車庫など歴史的な鉄道遺産があるこの場所で、総延長140kmにも及ぶ線路の保守を担うのが、津山保線管理室だ。今回紹介する「匠」は、津山保線管理室で室長を務める川上だ。

国鉄時代に抱いた決意

災害発生時の対応力と強いリーダーシップに定評がある川上。その技術力は国鉄時代の職場で感じた危機感がベースにある。

国鉄の臨時雇用員、準職員を経て、昭和53年4月1日に岡山鉄道管理局津山保線区中国勝山支区に配属された川上は、国鉄に入社するまでの1年間、建築業に携わった。屋根工事や壁の塗装、生きていくためには一つでも多くの仕事を受注する必要があり、仕事を得るために労苦を惜しまなかった。国鉄入社後の職場では、仕事の進め方、職員のモチベーションの低さに違和感を感じた。「このままでは国鉄は潰れる」危機感が募った。

「まずは自分が周囲の手本となろう」。状況を打破するためにマルタイ、大型モーターカー、内燃発電機などの操作に関わる社内資格を取得し、積極的に自らの技術を磨いた。

光る災害への対応力

川上は、これまでに経験した災害から得た教訓がある。「災害発生時の初動は、速やかな現地確認と確実な状況判断に尽きる」。災害発生時には時間を無駄にできない。そのため、川上は管轄しているエリアの地理をあらかじめ頭に入れている。また、災害発生時には直ちに状況をシミュレートし、復旧に必要と思われる機材をあらかじめ手配しておくとともに、誰よりも早く災害現場に向かう。そして、対応の反省と振り返りをもとに、さらに経験と判断力を磨くのである。

平成24年の7月のことだ。大雨で山の斜面が崩れ、線路上に大量の土砂が流入していた。ユンボで土砂を取り除く作業を進めたが、土砂を収納する土のう袋が不足し、現場での作業が停滞した。川上は瞬時に頭の中で作業の段取りを変え、この状況で最も早く復旧できる方法を考えた。そして作業員を集め、指示した。「土砂を取り除く作業は継続する。追加発注した土のう袋を置く場所を確保し、土のう袋が届いたらすぐに袋に入れられる位置に土砂を移動しよう」。

仲間の連携のもと、土砂を線路外に取り除いた。そして、土のう袋が届くころには、レールの洗浄や軌道の検査測定も終了し、予定していた復旧時間よりも大幅に早く復旧にこぎつけた。

強いリーダーシップと優しい人柄

災害時に大きな力を発揮するためには、普段からのコミュニケーションに根ざした組織力が要となる。組織力を支えるコミュニケーションの不足は、社員の指示待ち姿勢を生みだし、災害時の復旧を遅くしてしまうのだ。

川上はこれまで、コミュニケーションを図るにあたり一貫したスタンスを守ってきた。「業務上の指揮命令関係とは一線を画し、業務外では同じ『人』としてのつながりを大切にする」。また、上司だろうと部下だろうと、納得いくまで議論する。要望を伝えるだけでなく、相手のニーズをくみ取り、それを満たす努力を惜しまない。

6月からは津山保線管理室長として職場をまとめる立場となった。自らが先頭に立ち、行動する姿勢はこれまでと変わらない。川上は言う。「職場のメンバーには、職場を自分の家だと思ってほしい。家をよくするためにはどんな苦労も耐えられるし、工夫を惜しまないからだ。家族のような何でも言える、言ってもらえる職場をつくっていきたい」と。

川上は今でも、国鉄入社時の採用書類を机の奥に忍ばせている。入社当時の初心を忘れず、これからもより安全で快適な鉄道を目指していく。

  • 新入社員にも簡潔で分かりやすい説明に努める。
  • 朝礼前の語らいが組織力を高める一つの機会となる。
  • 川上の国鉄入社時の採用書類。

未来の匠

小原 賢二

川上室長の保線作業に関わる関係者との調整は要諦を押さえており、指示は簡潔かつ的確です。また、災害時の判断力と行動力もとても参考になります。災害時に室長がホワイトボードにメモした内容を写真に収め、後からこれをベースに勉強するようにしています。
人間味にあふれ、意志が強く、誰にでもフランクに接してくれる姿を見習いたいです。私も将来は現場長として、地元の津山を守っていけるような存在になりたいです。

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