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輝く匠

安全・安心を支える技術(第35回)

IRいしかわ鉄道株式会社 津幡駅 青木 秀明 駅長

昭和49年国鉄入社。民営化後はさまざまな業務に携わる。平成9年に金沢駅に配属され、係長、助役を経ながら駅運転業務で頭角を現していく。平成22年には金沢管理駅 津幡駅長。平成25年に駅運転の実設訓練センター長を務めた後、平成26年にIRいしかわ鉄道株式会社へと出向。北陸新幹線金沢開業と同時に2度目の津幡駅長として、日常の業務に加えて若手社員への技術継承に励んでいる。
 

平成27年3月14日の北陸新幹線 金沢〜長野駅間開業に伴い、北陸本線 金沢〜倶利伽羅駅までの5駅の運営はIRいしかわ鉄道に移管された。経営の主体は変わったが、金沢〜和倉温泉駅間には直通運転の列車が走っており、50人近い当社社員がIRいしかわ鉄道に出向して日々奮闘している。今回はその中で、津幡駅の駅長として活躍している青木を紹介する。

修羅場を潜[くぐ]り抜け、駅運転の技術・技能を磨く

青木は入社以来、長く駅運転業務に従事してきた。その手腕は確かで、出向直前まで金沢支社内で駅運転の訓練を行う施設の責任者を務めた。当然、数々の修羅場を潜り抜けてきている。中でも、平成17年1月に北陸地方を襲った雪害が忘れられないと青木は言う。「大雪により、大阪方面へ向かうサンダーバードが西金沢駅で前途運転不能となり、そのまま金沢駅まで引き返すことになりました。当時、金沢駅の係長であった私は、指導通信式を施行すべく西金沢駅まで駆け付けたのですが、猛吹雪で5メートル先が見えないような過酷な状況でした」。極限状態の中、不安もあったという青木。「しかし、列車に多くのお客様がご乗車されているのを見て、『一刻も早く無事に駅までお送りしなければ』と覚悟を決めました。平静を保つように努めながら、チェック項目を一つひとつ確実に確認していきました。最後に車掌へ出発指示合図を送る時、『無事に金沢まで帰ってくれよ』と祈ったことは今でも覚えています」。このような経験を積み重ねながら、駅運転の技術・技能を磨いてきた。

※単線区間で出発信号機が使用できない時に施行する運転方式。両端の駅長が電話により閉そく区間に列車がいないことを確かめたのち、「指導者」を列車に乗せて閉そくを確保する。

IRいしかわ鉄道にしっかりと技術を引き継ぐ

そんな青木は現在、5人の部下とともに津幡駅を管理している。うち2人は青木と同じ当社から出向のベテラン社員だが、残り3人はIRいしかわ鉄道で採用された若手社員だ。

駅での業務は多種多様である。日中は青木自身も改札口に立ってきっぷを確認したり、出札窓口に座ってきっぷや定期券を販売したり、さらには構内の清掃作業を行ったりもしている。「津幡駅では社員全員で業務を行っています。営業関係の業務は私自身、勉強中の部分もありますが、営業も駅運転も『すべての仕事はお客様につながっている』という根本は同じです。お客様に気持ち良くご利用していただくために、お客様の立場に立って応対することを心掛けていますし、部下にもそう教えています」と笑顔で語ってくれた。

もちろん、駅運転業務も行っている。夜間に保守工事が発生する際は駅開放扱いを行うほか、月に1回訓練を実施している。しかし、「営業と比べ、経験を積む機会が少ないのが現実です。経験則に基づく知識というものは、教え込むことが難しいので苦労しています」と青木は表情を曇らせる。青木の渋面には理由がある。IRいしかわ鉄道の若手社員は、限られた期間の中で鉄道のノウハウを学び、独り立ちしなければならない。そのためにも、青木を含めた当社からの出向者は、しっかりと技術継承することが求められているのだ。そこで青木は、少ないチャンスを有効に活用するためのある指導をしている。「経験の質を高めるために、ただ『見る』のではなく、アンテナを高くしてさまざまな観点で物事を『観る』ように意識付けています。『気付き』をもとに積んだ経験は必ず自らの糧となるからです」。

IRいしかわ鉄道とJR西日本の架け橋に

青木は最後に、「IRいしかわ鉄道とJR西日本は会社こそ違いますが、どちらもお客様をお運びするという使命を持っています。お客様に安全で安心、信頼していただくことを大前提に、いかに満足してご利用していただくか─ そのためにも、課題を発見し解決していくPDCAサイクルをいかに回していくか、という目指す姿は同じなのです。私は、そんな両者がともに成長していくための架け橋の役割を今後も担っていきたいと思います」と、静かに、しかし力強くその想いを語ってくれた。

  • 駅長自らも出札窓口に出て、お客様にきっぷを販売している。
  • お客様に気持ち良くご利用いただけるよう、心を込めて清掃をしている。

未来の匠

水口 寛菜

青木駅長は視野が広く、状況に応じて柔軟にサポートに回ってくださるとても頼れる方です。また私たち、若手社員に対して時間を割き営業や駅運転の指導をしてくださいます。
私は、青木駅長の「漠然と仕事をするのではなく目標を持って働く」との言葉を胸に、お客様との関わりを大切にしています。今は未熟ですが、日々駅を良くしようと尽力する青木駅長の背中を追い、精進していくことで、より一層お客様から愛される津幡駅にしていきたいと思います。

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