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輝く匠

安全・安心を支える技術(第43回)

岡山総合指令所 松盛 直文 総括指令長

岡山操車場に配属され、その後駅、車掌区を経て2003年より岡山支社輸送課 輸送指令配属となり、指令としてのキャリアをスタートさせる。輸送指令で1日の責任者である総括指令長を務め、岡山総合指令所が発足してからは各系統の指令を束ねる役割も担うようになった。
 

2016年6月1日に発足した岡山総合指令所。CTC導入や、輸送、旅客、運用、施設、信号通信などの各系統の指令が1つのフロアに集結したことにより、それまで以上に緊密な連携がとれるようになった。指令所でその日1日の責任者「総括指令長」の内の1人である松盛直文は2016年からその役を担い、日々、安全安定輸送の確保に尽力している。

※列車集中制御装置(Centralized Traffic Control)の略称で、線路上の列車の位置や信号機の動作状態、列車番号などを中央制御室に集中して表示するとともに、制御所から線区内各駅のポイントや信号機を遠隔制御する装置。

怒って雰囲気を悪くしてはならない

運行管理を行う中で日々さまざまな事象が発生し、その都度適切な判断が求められるのが指令。だからこそ、平常心が松盛のモットーだ。そう思うようになったきっかけは、輸送指令の総括指令長に成り立ての頃に起こった出来事。「部外の方からしゃ断桿が折れているとの連絡を受け、踏切の位置を確認するために踏切の名前を聞いたところ、『それはJRが調べることだろう』と言うので思わず頭にきてしまい、事柄を上司に報告しました。すると後日上司から『いかなる理由があろうとも、総括指令長が心を乱して冷静さを失うようなことがあってはならない。指令所全体の空気が悪くなり、悪影響を及ぼしてしまう』と指導を受けました。思い返してみれば、私が指令に来た時に模範としていた先輩は常に冷静沈着であった上に、誰とでも分け隔てなく接しておられ、指令所全体の雰囲気を良くしてくださっていました。その日のトップの総括指令長として、私も雰囲気作りを大切に、平常心で仕事をするよう心掛けています」。

蒸し風呂の車内 お客様を救出せよ

「何年経っても勉強です」という松盛は、自分、そして職場のレベルアップに貪欲だ。 岡山輸送指令時代に総括指令長を務めて1年が経とうとした頃、一般のトラックが荷台についているクレーンを架線に引っ掛け、断線しかける事故が発生した。ちょうど花火大会が開催される日の夕方に発生したこともあり、列車はどれも超満員。松盛は心を落ち着かせ、「お客様の安全が第一」と確たる判断基準を念頭に、なすべきことを遂行していく。安全のために付近を停電させたが、その影響で駅間停車が発生。冷房が効かないため、蒸し風呂状態の車内からいかに早くお客様を救出するかが求められた。「まだCTC化していないため、まず列車が停車している位置を確認するところから始めなければなりませんでした。確認が済み次第救済のバスを派遣し、順次お客様を救出しました。幸いお客様は全員無事でした。電力指令をはじめとした指令関係の皆さん、現地で対応してくれた皆さんに感謝しています。その後もさまざまな異常時を経験していますが、お客様の安全を最優先にした行動をとるということは、どんな時も私の原点になっています」。

岡山総合指令所には振り返りシートと呼ばれるものがあり、異常時のあとにはこのシートをもとに振り返りを行い、必要な改善を行う。この時に浮き彫りになったのはバス手配に時間を要したこと。この一件から、地域ごとにどのバス会社に連絡をすればよいのかを定めた連絡体制が構築された。その都度しっかりと振り返りを行い、お客様が安心してご利用いただける鉄道に向けて、改善を続けている。

常に人の命と隣り合わせ

山陽線がCTC化され、列車位置が一目瞭然になったことに加え、それまでいくつかの場所に分かれていた系統がワンフロアに集結し、より密な連携がとれるようになった。例えばこれまでの指令所の形態では、電力指令は建物が別でその都度電話でやり取りをしていたが、今ではすぐに顔を突き合わせて打ち合わせができる。しかし、環境と設備がどれだけ整っても、人が最後の判断を行うことは変わらない。そこで松盛が教えるのは、命の大切さだ。松盛自身、一歩間違えれば大事故につながる失敗を経験している。「小動物と接触した列車の運転士に、車外に出て線路を確認するよう伝えた時のことです。時刻どおりであれば対向列車は現場を通過しているはずだったため、対向列車はいないと思い込み、対向列車の位置を確認せずに車外に出て線路を確認するよう伝えました。ところがダイヤが乱れていたため対向列車はまだ現場を通過しておらず、運転士から『列車が接近している』という報告を受けて初めて大変なことをしたことに気付きました。若手にはこの話を必ず伝え、常に人の命と背中合わせで仕事をしていることを伝えています」。人の命を預かっていると自覚すれば、おのずと判断は決まると、松盛は言う。

「現場を経験して、希望して指令に来ている人が多いからか分かりませんが、今の若い人はチャレンジ精神が旺盛でとても良い傾向だと思います。私も教えがいがありますし、彼らと接していると置いていかれないようにという気持ちになります。平常心を忘れず、ともに高め合っていきたいです」。謙虚に、若手からも学ぶ姿勢を忘れない。そんな姿勢は、何気ない会話にもつながっているようで、指令所全体が和やかな雰囲気に感じられた。それは鉄道を利用されるお客様に、日々の安全安定輸送という形でつながっていく。

影響を受けた言葉「不動心」

元メジャーリーガー松井秀喜さんが書いた本の題名でもありますが、その中で平常心について書かれていました。松井秀喜さんは最後の夏の甲子園で5打席連続で敬遠されました。彼は自分のバットを静かにバッターボックスの横に置き表情一つ変えずに淡々と1塁ベースに向かいました。その時の彼は心の中では「チクショーと思いバットを投げつけたかった。しかしその行動をすることで何の得もない、イライラして平常心をなくしたら次の打席で自分の打撃ホームを崩してしまう」と綴っていました。この考えは指令業務に大変よく似ていると思います。どんな異常時に遭遇しようとも心を動かされることなく、日々業務を行っていきます。

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