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輝く匠

安全・安心を支える技術(第38回)

株式会社レールテック 軌道事業部 溶接技術センター 中島 己喜雄 センター長

昭和49年に国鉄へ入社。草津保線区で保線業務に使用する機械の修繕を主に担当し、社員研修センターの講師も務めた経験を持つ。その後支社勤務や大鉄工業株式会社への出向を経て、平成21年6月より現職。当社管内で唯一のレール溶接の職場として、日々高品質のレールを現場へ提供している。
 

線路は、通常25mもしくは50mのレールをつなぎ合わせており、継ぎ目にはレールの温度変化による伸縮などに対応するためのわずかな隙間がある。列車が走行する際に音を立てたり揺れたりするのはここを通過するためだが、乗り心地を向上させるため溶接して200m以上の長さにしたものをロングレールという。当社管内で唯一、レール溶接をしているのがレールテック溶接技術センターである。センター長である中島は、その卓越した技術で社内外から頼りにされている。

溶接屋としての使命

レールの頭頂面と溶接する際にできる溶接部の高低差には、±0.5mm以内という極めて厳しい基準が設けられており、出来栄えを厳正に計器で確認する。加えて中島は「レールに爪を立てて音を聞いたり、指先でなでてわずかな凹凸や滑らかさを感じて良し悪しを判断します。感覚ですね」と話す。加工用の機械の調子を診る時は、筒を耳に当てて機械の音を聞き判断するという。五感に基づいて判断するその姿は、まさに職人と呼ぶにふさわしい。ここまでの技術を養う原動力となったのは、中島が持つ「溶接屋としての使命」だ。レールの凹凸は車両に揺れとなって伝わるため、普段から中島は列車に乗る際は台車の上近くに立ち、レールの状態を確かめている。レール溶接を担う唯一の職場で働く者として、できる限り揺れないレールを作りたい。溶接屋としてのプライドが中島を今の境地に至らしめている。

そんな中島も、仕事の相棒とも言うべき測定機器を粗末に扱い、先輩から叱られたこともあった。「いろいろな失敗がありますが、そのおかげで今の私がいます」と笑いながら語ってくれた。

仕事を楽しむ

中島は昭和49年7月に国鉄に入社し、草津保線区で鉄道人生をスタートさせた。当初の仕事はレール溶接ではなく、保線機械の修繕だった。当時の草津保線区は琵琶湖一周分を受け持っており、20歳代のチームで行動することが基本。故障した大型保線機械の対応で駆け回り、気付いたら1日で琵琶湖を一周していたこともあった。「若い二人だけという状況で、自分たちの知識と判断で故障箇所を発見、修繕まで行わなければなりませんでした。それだけに、作業を無事に終えた時は達成感が大きく、楽しく仕事ができました。機会を与えてくださった上司、先輩、そしてともに働いた仲間に感謝しています」と当時を振り返る。“楽しく仕事をすること”これが中島の原点になっている。「難しい問題でも『何とかしてやろう』と考えることが、楽しみです」と、中島なりの定義を教えてくれた。

レール溶接という仕事 未来に残すべきDNA

レール溶接に従事するようになったのは平成5年4月。初めて経験する仕事だったが、人一倍の努力と先輩、同僚の協力で着々と力を付けていった。その後いくつかの職場を経験し再びレール溶接の職場に戻り、現在8年目を迎えている。工作用機械の下見のため、高度な技術と深い知識を買われ海外出張の声がかかることもあるというが、「いまだに私が行くということは、後任が少ないことの裏返しでもあります」と将来への不安も語る。従事者が少ない特殊性が高い仕事であるため、後継者の育成、溶接屋のDNAを残すことも、中島に課せられた大きな使命だ。

中島が後継者の育成で心掛けているのは、任せることだ。任せることで、能動性が生まれる。何事も指示するのではなく自分で考えさせ、若手が作業する時は一歩引いて見守り、失敗に気付かせて成長を促す。「自分の頭で最善の方法を考えて実行して初めて、仕事の楽しみも分かってきます。やらされてばかりでは成長しませんし、何より楽しくありません」とやはり仕事を楽しむことの大切さを訴える。

のびのびと仕事ができる環境に若手も応える。溶接には資格を取得しなければならないが、昨年は新入社員2名が合格した。1年目で取得したのは職場では初めてのことであり、中島も大変驚いたという。「ゆっくり教育したいのが本音ですが、舞い込んでくる仕事に合わせて急ピッチで勉強してもらっており、若手には苦労をかけていると思います。しかし、他の職場から『中島さんの教え子は目が生き生きしているね』と言われ、うれしくなりました。楽しみを感じて働いてくれれば幸せです」と、熱い後継者たちに頼もしさを覚える。中島はレールとともに、当社の今と未来もつないでいる。

  • 輸送車に積まれたレールの締結状態を確認する。
  • 現場でスムーズに仕事ができるよう、関係箇所と事前の調整を念入りに行う。

未来の匠

株式会社レールテック 掛水 雄介

中島センター長は、溶接に関してまさに「右に出るものはいない」というほど、高度な技術と豊富な知識を持っています。また、とてもフランクに接してくださるので、何事も聞きやすくいつも助けられています。現場で、「責任は俺が取る。やりたいようにやってみろ」と言ってくれたことがあります。任せていただいたことがうれしくもあり、「センター長に恥はかかせられない」と気合いも入りました。また、その言葉でとても安心することができました。その安心感は、センター長だからこそ与えられるものだと思います。私も将来はセンター長のように、周囲に安心感を与えられる、そして会社の顔となる存在となれるよう、努力していきます。

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