このページの本文へ移動

輝く匠

安全・安心を支える技術(第28回)

先を見据えながら検査修繕のコツを伝授する技術指導のプロフェッショナル(米子支社 車両課 松本 敦 DC技術指導員)

米子支社 車両課 松本 敦 DC技術指導員

匠プロフィール
昭和50年国鉄入社。当初は主に速度計などの機器修繕や車両の延命工事などに携わった。平成9年からは米子支社運輸課に在籍し、「サンライズ出雲」の新製車両投入時の添乗対応なども行った。その後も数々の業務を歴任し、平成26年8月より現職。懇切丁寧な技術指導に定評があり、平成26年12月にはミャンマー国鉄社員に技術支援のための研修も行った。
 

車両系統では、オンレール技術として必要となる幅広い知識・技術を有する次期現場リーダーの育成を目的として、技術指導員を設置し、現車を活用した集合研修を実施している。技術指導員は次期現場リーダー、いわゆる将来の匠を育てるべく、定期的に研修生たちに対して座学と実習による研修を行っている。松本は気動車(DC)を担当するその技術指導員だ。

大事なことは「身体で感じること」と「心構え」

現車を使った実習での一幕。「エンジン音を聞くときはコレを使うと良いですよ」そういって研修生たちに対してマイナスドライバーを差し出す松本。研修生たちがいぶかしんでいると「の丸まった部分に耳を当てて、ドライバーの先を機器箱に添えると…ほら、骨伝導の要領でよく聞こえてきませんか」と実演してみせた。研修生の一人がそれにならってやってみる。

「わっ、ほんとだ」と、驚嘆の声を上げると、松本はにっこり微笑んだ。「研修生には、『できるだけ多くの知識を学んで帰ってほしい』と思って接しています。ですから、車両が発する音や臭い、振動などを『身体で感じて』判断するための基準なども教えるように心掛けています」と語る松本。加えて、「知識も大事ですが、心構えも重要です。検査修繕後の車両にはお客様がご乗車されます。お客様におけがをさせないように、作業終了後には、お客様が触れる可能性のある箇所を全て自分の手で触って確認するように教えています」。

失敗を次に生かすことでステップアップ

松本は昭和50年に国鉄に入社し、車両の速度計などの機器修繕担当としてキャリアをスタートさせた。「若い頃は、分からないことがあれば自分で調べたり、先輩に聞いたりすることで技術屋としての研鑽を積みました。幸い、先輩方には手取り足取り親切に教えていただきましたが、その際は必ずメモを取るように心掛けていました。この頃に覚えた知識は、今でも私の宝です」。一方で松本は、失敗も数多く経験したという。「検査修繕した車両に不具合が生じたことはたくさんあります。でも、その失敗を踏まえて、次はどう対処すべきかを学ぶことができました。そうした失敗談についても、研修生に伝えるように努めています」。

国境を越えた技術継承

松本は平成26年12月、ミャンマー国鉄に譲渡した旧キハ181特急気動車のメンテナンス方法の技術支援のため、ヤンゴンにて研修を行った。「この車両は新製から40年以上経過しています。9月の事前調査で車両を見たときは、十分な整備がされていない状態でした。ミャンマーに渡りましたが、私たちが日本で検査修繕していた大事な車両です。ミャンマーでも末永く使用してもらいたい一心で、ミャンマー国鉄の方々に講義をさせていただきました」。松本の技術継承は、遠くミャンマーまで及んでいる。

今後の技術革新も意識した後進の育成

後進の育成に尽力している松本。彼の思いは一歩前を見据えている。「気動車は今後、ディーゼルエンジンの力で走行する形態からハイブリッド、自己充電型バッテリーの力で走行する形態に変化していくことが予想されます。私は、検査修繕を担当する社員がこれら少し先の将来を見据えることができるように教えていきたいと思います。そのためにも、まずはこれまで先人たちが築いてきた知識をしっかり伝えていきます」と、松本は笑顔で力強く語った。

  • 座学の風景。丁寧な語り口で研修生を惹きつける。
  • 車両課のオフィスで次の研修計画を練る。
  • ミャンマーでの研修の様子。

未来の匠

山本 大志

松本技術指導員には、オンレール技術(DC)研修を通じて、日々の業務では得られない車両検査修繕のより深い知識・技術をご指導いただいています。松本技術指導員の知識・技術や勘所を身に付け、検査の質を高めることで、故障の芽を摘み取り、車両部門方針でもある「故障半減55!!」達成を目指します。そして、将来は「匠」を超えられるように頑張ります。

※現車による訓練や実習を中心に応急処置や故障究明などを行う研修。

バックナンバー検索

カテゴリー

ローカルナビゲーションをとばしてフッターへ

鉄道事業
(安全の取り組み)