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輝く匠

安全・安心を支える技術(第6回)

車両への愛着と仕事へのプライドを醸成するために(網干総合車両所 明石支所放出派出所 八反田 義美)

網干総合車両所 明石支所放出派出所 八反田 義美

匠プロフィール
昭和46年に国鉄入社。10年余り機関車や電車の検査修繕に携わり、昭和58年からは、淀川電車区にて運転士として活躍した。
後に指導操縦者として運転士見習の指導にもあたった。平成17年に現在の職場に異動し、構内運転や検査修繕に携わるとともに、構内運転士の養成にも従事。平成23年からはシニア社員として活躍している。

平成12年ごろから始まった再開発計画により、分譲マンションが立ち並ぶ一方で、商店街を抜けるとノスタルジックな雰囲気が漂う放出駅前の町並み。おおさか東線の接続駅でもあるこの駅と高井田中央駅間にある車両基地では、計20名の社員で昼夜、車両のメンテナンスを行っている。今回紹介する「匠」は、ここ網干総合車両所明石支所放出派出所の八反田である。

国鉄入社と車両検修の業務

八反田は広島県三次市の高校を卒業後、親の強い薦めにより昭和46年に国鉄に入社した。向日町駅で1年間、構内作業に従事した後、吹田第一機関区に配属され、蒸気機関車やディーゼル機関車の清掃を担当した。煙管服という掃除用のツナギ服を着て、大きなカマの中に入り、掃除する。慣れない地で、慣れない作業を朝早くから行い、仕事が終わるころには真っ黒になる日々。今では良い思い出だ。その後、高槻電車区で車両の検修を担当し、制輪子やメインモータの部品の取り替え作業に携わった。機関車や電車に接するにつれ、機関士や運転士への憧れが強くなった。

運転士の業務に生かされる車両屋としての経験

11年の検修経験を経て、八反田は淀川電車区で運転士業務に就いた。初めて列車を運転した時の感動は今でも忘れられない。ノッチ一つ、ブレーキハンドル一つで列車を制御する。お客様を安全に運ぶ使命感。運転士としてのやりがいを感じた。

また、当時の車両は編成ごとにクセがあり、同じブレーキ操作でも止まり方はさまざま。扱いにくかったが、自然と車両への愛着も湧いた。

八反田の車両故障の対応はずば抜けていた。車両検修の経験が生き、車両の係員の到着を待つまでもなく、故障原因を突き止めることもあった。自信を持って運転することができたと言う。

指導者としての心構え

その後、車両の知識と運転士としての技術を買われ、運転士見習の指導を担当することになった。八反田は、「若手運転士は、車両に対する知識は持っているが、車両検修の経験がないから応用が利かない」ことを痛感した。

55歳を機に活躍の場を現在の職場へ移してからは、構内運転の指導を担当している。構内運転は、人の往来が多い上、一回の勤務での車両への乗降回数が多いため、労働災害を起こさないよう注意が必要だ。

八反田は若手を指導する際、大切にしていることがある。それは、「なるべく多くの失敗をさせること」だ。失敗から身につけた技術は体が忘れない。もちろん、八反田の言う「失敗」とは致命的なミスのことを指すわけではない。指導の過程で、ギリギリまで自分で考えて行動させることを徹底しているのである。

また、自分の息子と同じように接することも大切だ。「若手は、最初は順調に伸びるが、壁にぶつかることもある。少し慣れてくると、時には扱いにくく感じたり、期待したとおりの指導の効果が出ないこともある。そんな時も自分で考えさせる。だから、信じて任せることも必要だ」と八反田は言う。

後輩たちへの思い

車両検修と運転士の2つの業務に携わって感じたこと。それは、「車両」に向き合い、愛着を持つことが大切だということだ。愛着を持てば、自然と「車両を理解しよう」という気持ちになるし、仕事へのプライドも醸成される。八反田の地道な体当たりの指導によって、仕事への責任と誇りが後輩たちへと受け継がれていく。

  • 床下機器の点検のノウハウを指導する。
  • 若手社員とコミュニケーションを図りながら指導。
  • 業務終了時の点呼。

未来の匠

野間口 隆史

構内運転士として安全に、かつ他の業務のやり取りをスムーズにすることを第一に日々勉強を重ねています。人数の少ない職場ですが、それぞれが連携し、最高の仕事を行うことにより、より良い車両を提供することができると信じています。
放出派出所は構内運転士養成区所で多くの方々が養成、試験を受けて各現場で業務を行っています。私自身も構内運転士の免許取得の際、八反田に指導操縦者として指導いただき現在に至ります。私はこれからも八反田から学んだ技術・技能を生かし、勉強を重ねより良い車両を提供できるように努力していきます。

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