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- JR西日本広島支社(地域共生)
呉田菜摘さん - ジェイアールサービスネット広島に入社後、ekie内にある「しま商店」など土産物店に関する業務に従事。2023年6月にJR西日本広島支社に出向して地域共生に関する仕事に携わり、商品開発や販路開拓を行う。2024年2月から新しい広島駅ビル開業記念商品の企画開発に携わる。
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- ジェイアールサービスネット広島
宮岡敬子さん - ジェイアールサービスネット広島に入社後、「しま商店」の初代店長を務め、その後も雑貨のバイヤーなど土産物店に関する業務を中心に従事。2024年2月から新しい広島駅ビル開業記念商品の企画開発担当になる。
- ジェイアールサービスネット広島
目次
「地元のお客さまにも楽しんでいただける広島駅ビル」をいち早く実践

まずは呉田さんにお伺いします。JR西日本広島支社に出向する前のジェイアールサービスネット広島ではどのようなことをされていましたか。
呉田:主にお土産の店舗に関する仕事をしており、ekie内にある「しま商店」や広島駅の在来改札内にある「アントレマルシェ広島」で店長をしていたり、バイヤー業務では雑貨を担当していました。今はその業務をジェイアールサービスネット広島の宮岡さんが担当しています。
2023年2月に「しま商店」がリニューアルしていますが、これにも携わっていましたか。また、広島駅ビルが新しくなることは視野に入れていたのでしょうか。
呉田:以前の駅ビルASSEからekieに変わって年数が経っていたわけではないのですが、コロナ禍に入って売り上げが低迷し、それなら今のうちにリニューアルしておこうということになりました。店舗をどのように新しくしていきたいかなど、一から考えさせていただき、すでに広島駅ビルが新しくなることは決まっていたので、それも視野に入れ、私が思い描く理想をしっかりとお伝えし、全力で取り組みました。コンセプトは「地元のお客さまにもご利用いただけるお店」です。雑貨店寄りのテイストに変えて地元のお客さまにもお楽しみいただけるような商品群を増やし、また、2023年の春ごろにコロナが5類に移行してタイミングが良かったこともあり、スムーズにリスタートして売り上げを伸ばすことができました。
昨年新駅ビルが誕生したJR高松駅と商品化に優れたJR東京駅を視察して商品開発
呉田さんは2023年6月からJR西日本広島支社に出向されましたが、当初はどのような業務をされていましたか。
呉田:地域共生に関する業務を行う部署に所属し、内容は多岐にわたります。広島の場合は多くのプロスポーツチームがあり、そちらとの連携というのも地域共生の業務の一つですし、観光列車に関する業務などもあります。ただ、私はお土産を売ってきたという実績があるので、主に商品開発や販路開拓業務を行っています。
2024年2月に新しい広島駅ビルのプロジェクトチームから開業記念商品の企画開発について協力依頼があったそうですが、そのときのお気持ちは?
呉田:新しい広島駅ビルに関する仕事に携われる機会はなかなかないので、素直にうれしかったですね。
どのような開業記念商品を作りたいと思われましたか。
呉田:私が最初に考えたのはコースターです。というのも、今回の広島駅ビル工事などに伴い撤去されたクスノキの一部を使用してノベルティー用にコースターを作ったという話を聞き、一般のお客さまも手に取れるような形にしたいというのがあってコースターを企画開発しました。

ジェイアールサービスネット広島の宮岡さんにもお伺いします。どのように商品を決めていかれましたか。
宮岡:JRさんからは、老若男女問わず幅広いお客さまが使えるものをとご提案をいただいていたので、どのような柄が販売しやすく、皆さまにも喜ばれるかなどを協議し、選定していきました。15種類ぐらい提案し、最終的にこの5点になりました。
呉田:前に進み始めたのは、新しい広島駅ビルの壁面をモチーフにデザインして商品を作ったらどうかという話が出てからでしたね。それまでは新しい広島駅ビルの形(建物の外壁をモチーフとした形)をどこかに入れる方向で進んでいましたが、「それ、誰が買うかな…」という疑問もありなかなか進んでいませんでした。先にノベルティー用で作っていた「折り紙」が新しい広島駅ビルの壁面をモチーフにしたものだったので、それを使ったらいいのではないかという案が出て、そこからどんどん話が進み始めました。
商品を作るにあたってリサーチされたことはありますか。
呉田:香川県の高松と東京に行きました。ネットで似たような事例がないか探していたところ、高松駅が新しくなるタイミングで新商品を開発している記事を見つけ、それでお話を伺いました。東京駅はいろいろな物を商品化されているので、参考になると思いお伺いしました。でもあの東京駅ですら商品作りは難しいとおっしゃっていて…。それで、広島駅ビルの形のデザインをプッシュしたような商品を作るのは難しいのではないかという気付きがあり、(壁面をモチーフにした)デザイン変更に踏み切りました。
ただ、パッケージの裏に貼っているシールにキービジュアルの東京駅の形を入れるだけで一気に商品の格が上がるということも分かったので、当初考えていた新しい広島駅ビルのキービジュアルをシールに入れる方向にシフトしました。
この新しい広島駅ビルのデザインはどなたがされたのでしょう?
呉田:数回前のこのインタビューで、JRと広電がコラボしたラッピングトレインのデザインをされた関西工機整備(株)の大森正樹さんが登場されていましたが、その大森さんにデザインをしていただきました。
アイデアと工夫が詰まった、広島らしさと新しい広島駅ビルならではの商品開発

開業記念商品がこの5点に決まった理由は何でしょう?
宮岡:弊社で販売するので、まずは売りやすいものというのが基準になりました。その点、エコバッグは人気があるかなと思います。
呉田:この柄にするという話が上がった最初の段階で、エコバックを作ったらいいのではないかという話が出ましたよね。
宮岡:呉田さんが、この中に全部詰めてお出かけできるようなものがいいのでは?と提案してくれて。最初はお弁当が一つ入って中が広いタイプになるといいねと話していたんですが、試作品を見たら思いの外小さくて…、マチがなかった(笑)。
呉田:それでもう一度考え直し、横幅を大きくして大きい物も入れられるようにしました。
意外なところで、万年筆のインクが気になるのですが…。
呉田:広島の会社であるセーラー万年筆さんに作っていただきました。実は、別件で万年筆を販売をすることになっておりまして、そちらはもみじ饅頭をモチーフとした万年筆になります。
万年筆もあるんですね。でもなぜ万年筆?
呉田:私自身が万年筆がとても好きなんです。
宮岡:かなりたくさんの万年筆を持っていますよね(笑)。
呉田:はい(笑)。ですから結構こだわって作りました。ジェイアールサービスネット広島にも万年筆が好きな人がいるのでその方にも相談してみたりして…、 主に柄とか色とか、もみじ饅頭を再現するために力を注ぎました。その関係でもみじ饅頭の万年筆のインク(あんこ色)を作ることになったわけです。また、それだけではなく、瀬戸内の玄関口である広島駅ビルからインスピレーションを受け、豊かな海を連想させる青いインクも作成しました。

選べる色があんこ色かJRの色かって面白いですね(笑)。折り畳み傘はどのような感じでしょうか。
呉田:晴雨兼用の日傘で、ボタンを押すと自動開閉します(開閉を実演)。
宮岡:男性にも使っていただくのを想定して55cmサイズにしています。でも、男性は持たないですかね…?
(インタビューに同席した男性スタッフ):日傘というと昔は女性のイメージでしたが、今は男性も結構日傘をさしています。僕もさしますよ。
呉田・宮岡:そうなんですね!
呉田:当初ビニール傘の案もありましたが、広島駅で販売するという特性上、観光客の方が広島駅に着いて雨が降っていたとき、折り畳み傘だと持ち歩きやすく、観光後も持って帰っていただきやすいということで折り畳み傘になりました。
ハンドタオルの特徴を教えてください。
呉田:エコバックとともに最初に話題に出てきました。私自身、一番しっくりきた商品だと思います。
宮岡:質にこだわったんですよね。
呉田:表面にプリントするだけだとやはり見た目が違ってくるため、ジャガード織を採用しました。毛足が長めで上質さがあり、大人の方も持っていただきやすいと思います。
コースターも最初の段階から積極的に作ろうとされていましたね。
呉田:先ほども申し上げましたが、駅ビルの工事に伴い撤去したクスノキを使用するということで、新しい広島駅ビルができるというストーリーを最も乗せられたのではないかと思います。選ぶ楽しさを感じていただきたく2種類のデザインをご用意しました。せっかくキービジュアルを作ったのでそれを用いたデザインが欲しかったというのもあります。キービジュアルと折り鶴、紅葉の葉を入れたコースターは広島らしさが出ていてお土産にお薦めです。
商品の企画開発、実は高速ラリーの応酬だった?!

商品の準備期間が約1年ということで意外に短い印象です。コミュニケーションを取る上で大変だったことはありますか。
宮岡:結構ミーティングをしましたよね。(事務所が別の場所にあるので)窓口の呉田さんによく「どうですか、どうですか」と聞いたり、「ちょっと来て〜」と声を掛け合いながらコミュニケーションをとっていました。
呉田:事務所も近いのでお互いに行き来していました。結構な高速ラリーでしたね(笑)。
宮岡:これといって秘訣はないですが、とにかく押しかける(笑)。一個済めば一個問題が起きて、一個済めばまた一個問題が起きてという具合で、よくJRさんにお伺いしていました。
呉田:お互いに「どうします?」「どうします?」ってなっていましたよね(笑)。私がジェイアールサービスネット広島の新入社員だったときに配属された店舗に先輩社員として宮岡さんがいらっしゃったりして、元々同じ業務をやったことがある繋がりもあったので結構こまめに連絡をとっていました。JRの広島駅ビル担当の席にもよく押しかけ、たくさん議論しました。
商品開発をする上で大変だったことはありますか。
宮岡:全部大変でした(笑)。私は商品開発を担当したのが初めてでしたので。
呉田:私は地域共生の方で商品開発や販路開拓支援事業を行ってはいますが、事業者さんをサポートするのがメインで、今回のような商品開発は私も慣れていなくて…。何をどのようにしたらいいのか全て事業者さんに聞き、とても助けていただきました。
そんな中でも大変だったのがエコバッグです。事業者さんもサンプルを出してくださいますが、少し時間がかかるので、設計段階の状態で確認するには自分で試作するしかなく、結構、工作しました(笑)。エコバッグは試作品を見るとサイズが想像していたものよりも小さかったためサイズを変更しました。変更後の原寸大のデザインを不織布に印刷して切って貼り、なんとなく形を作ってみんなで見比べ、話し合い、そして今の形と大きさに決まりました。
実は傘もリテイクしましたね。一部分だけに柄を入れるパターンにしていましたが、少しダサいかな…と。
宮岡:一部分だけではなく、その対面にも柄を入れた方がマシかも?などと話しましたね。それでエコバッグのやり方を参考にして、傘も同様に柄を貼り合わせてみました。
呉田:傘もサンプルをいただいていましたが、柄がどのように入るのか実物がないと分かりにくくて…。
宮岡:柄の継ぎ目を合わせることができないかとか、継ぎ目が合わないから変に見えるのかとか議論しました。柄を貼り合わせて確認した結果、総柄に決まりました。
皆さんの知恵と工夫がギュッと詰まっているんですね。その開業記念商品は期間限定で販売されますか。
呉田:期間に限りはなく、継続して販売する予定ですが、コースタ―はクスノキに限りがあるので、こちらは最初の生産のみの限定商品になります。 販売箇所は「お土産街道」のekie店とミナモア店、広島新幹線改札内中央店、「アントレマルシェ広島」を予定しています。このほか、私が担当しているオンラインショップの「DISCOVER WEST mall」でも取り扱う予定です。
日々進化してきた新しい広島駅ビルがいよいよ開業
呉田さん、宮岡さんは広島駅ビルの店舗でも勤務経験があり、広島駅の移り変わりを見てこられたと思います。この変化をどうご覧になりますか。
呉田:出向するまでは広島駅ビルで働きながら見てきて、少し変化があると「今度はここが変わったのか」などの驚きがありました。また、制服を着て歩いているとお客さまから「また工事で変わったんだね」などの感想をいただくことも多かったですね。それが一段落し、新しい広島駅ビルがキレイになって開業を迎えられるのはとても楽しみです。
宮岡:広島出身で、それこそ(広島駅がある)松原町出身なんです。駅前に陸橋があったころから知っています。広島駅ビルASSEがキレイになってekieができたときも大騒動でしたが、今回はそれ以上ですよね。何年も前から広電が駅ビルに入るという話が出ていて、今回広電が駅ビルに入ることになり「本当だったんだ」と。だから、その様子を見るのが楽しみです。かつては広島駅にお風呂に入り来ていた時代がありました。屋上には遊園地もありました。楽しい部分が戻ってきて、屋上でまた遊べるんだという思いもありますね。
開業間近になった新しい広島駅ビルにどのようなことを期待していますか。
呉田:広島で遊ぶとなったら紙屋町・八丁堀に行かれる方が多いですよね。でも新しい広島駅ビルにはいろいろなものが集まるので、本当に楽しめる駅になるのではと期待しています。
宮岡:広島の人が言う「街」は「紙屋町・八丁堀」。これ、広島ならではですよね。でもこれからは広島駅が便利になるので、これからは「駅に行こう」となるかもしれないですね。
呉田:私、地元が西条の方なんですが、西条から紙屋町・八丁堀まで出るためには、JRに乗って広島駅に着いた後、市電やバスに乗り換える必要があり、帰りの時間も気にしていました。でもこれからは広島駅でもいろんな遊び方ができるようになるのでいいですね。
宮岡:確かに! 紙屋町・八丁堀の中心部と一緒になって広島の街全体が元気になればいいですね。