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広島駅を“語る” Vol.12 電車の利用とminamoa(ミナモア)などでのお買い物で、広島市域の経済が活性化される世界をつくりたい

  • JR西日本 中国統括本部 経営企画部(DX・マーケティング)
    課長 眞鍋宗一郎さん
    JR西日本に入社後、2018年12月から2021年9月までブラジルに駐在。JRの代表としてブラジルの都市鉄道会社への安全管理アドバイザリーを行う。帰国後、2021年10月から2022年9月までブラジル事業の担当を経て、2022年10月から中国統括本部に異動しアプリやポイントのPR施策や、新たな業務ツールの社内浸透策の企画などを行う。

目次

ブラジル駐在で学んだ、自分の意見を伝えることの大切さ

JR西日本では主にデジタル系の業務をされているそうですね。

眞鍋:社内の各部署が様々なDXを取り組んでいますが、私たち経営企画部は、グループウェアなど部署共通的に使うツールによる業務変革の導きや、当社のアプリやポイントなどの取り組みを、中国地方のお客様に伝える業務を担当しています。

社内での事業をスムーズに行うツール作りという感じですか。

眞鍋:そうですね。施策自体は大阪本社が企画し、全社的に広げるものですが、広島などの地方隅々まで正確に伝えることが課題です。人によっては、施策そのものからピンとこない場合もあります。ですので、大阪本社が企画した施策を噛み砕いて要約し、地方でもやりやすいように伝えていくことが私たちの仕事です。

少し前に遡りますが、以前、ブラジルに駐在されていたと聞き驚きました。いつ頃行かれていたのでしょう?

眞鍋:2018年12月から2021年9月まで、約3年ほどブラジルに駐在していました。当社がブラジルの都市鉄道事業に出資し経営に参画する中、JR西日本が培った安全技術を提供し相手会社の安全性を向上させるというミッションもありました。私は主に、当社技術者による実際の技術支援にあたっての現地の水先案内人≠ニして派遣されました。

ブラジルで思い出に残っていることはありますか。

眞鍋:まずは当時の上司から「ブラジルに行ってほしい」と言われたことですね(笑)。英語すらおぼつかない状態の私がポルトガル語のブラジルに行くなんて…。さすがに最初の4カ月は、ブラジルにある外国人向けのポルトガル語学校にホームステイ付きで通わせていただきました。それを経て、リオデジャネイロに着任しました。短期間のポルトガル語学校に通ったからといってすぐに流暢にしゃべれるわけではないのですが、現地の方からすると私は「日本から来た鉄道全般のプロ」なわけでして、線路、車両、電気、駅、運転士など鉄道のあらゆることを聞かれました。私自身はもともと運行関係の仕事をしていたのでそれについてはある程度答えられましたが、他のことを聞かれても…しかもポルトガル語で…という感じで。ただ、聞かれたことに対して「知らない」「分からない」と答えるともう二度と頼りにされない危機感だけはあり、専門外の領域でもきちんと回答して相手の信頼を得ることが大きな課題でしたので、相手の質問の意図や意味、目的が分かるまで片言のポルトガル語でも繰り返し聞き、日本にいる技術者に確認し、必ず返答するようにしていました。ブラジル人に成り代わって日本と調整するうちに得た鉄道の幅広い知識と、その際のコミュニケーション力は今でも私の財産になっています。

ブラジル駐在で得られたことは?

眞鍋:今でも拠り所にしていることですが、「分からないことを、分からない状態のままにしない」ということです。先ほども話した、「質問の意味を理解する」ということは、日本でもできているようでできていないと思うんです。分かったような顔をした経験はありませんか?自分が理解して納得するまでコミュニケーションをやめず、そこから自分の意思や意見を言えるようにする。これは今でも大事にしています。ブラジルではみんな意見を言い合います。議論に入らないと「あれ、あなた、いたの?」みたいな感じで自分の存在すら気付いてもらえません。

ブラジルに行く前と行った後で何か変わりましたか。

眞鍋:自分の意思や意見を考えて伝えるというのはちょっと変わりましたね。意思や意見を明確に伝えると言葉がきつく捉えられることもありますが、仕事においては重要な要素だと思います。ブラジルに行く前は忖度の塊(笑)みたいな感じでしたが、今はあえて忖度せずに接するときもあります。

ゼロからのスタートで新たな領域を切り開く

現在、JR西日本は「WESTER」アプリを展開されていますが、いつごろから関わっていますか。

眞鍋:「WESTER」アプリは2020年にスタートしました。私自身、2021年9月にブラジルから帰国し、10月から翌年9月までの1年間は大阪本社でブラジル事業を担当していまして、新しい事への挑戦意欲が芽生えていた頃、2022年10月に広島への赴任が決まったんです。今所属している中国統括本部ができたのも同じタイミングでした。

最初に部署異動と広島への転勤の話を聞かれたときはいかがでしたか。

眞鍋:「ブラジルに行け」と言われたときのインパクトと比べると、中国統括本部ができます、勤務地は広島ですと言われてもどうということはなく、広島はご近所(笑)という感覚でした。実は私、新神戸から通っていますが、ちょっとコンビニに行ってくる感覚で通勤しています(笑)。

新しい部署ということで、どのようにスタートされたのでしょうか。

眞鍋:新しく発足したグループで、広島を中心とした中国地方の特徴を踏まえたDXやマーケティングを行うことがミッションでした。部下は経理や営業、地域ビジネスなどから集まった5人で、発足初日、一人の部下から「私たちは何をしましょうか」と聞かれ、その質問に対して私は思わず「いい質問だね」と答えるぐらい手探り状態でした(笑)。最初にやったのは「やることを決める」ということ。本社や支社で今何が動いていて何をしているのかという事実確認を行い、新しい部署でできることを探っていきました。

「WESTERポイント」の中国5県版のパンフレットがありますが、これもその一つ?

眞鍋:アプリもポイントも含め、デジタル関連の施策は大阪本社で企画され、全社的に一気に広げる手法をとっていました。その中で自分たちにできることは何か、中国地方の現状を見たときに、大阪と比べて施策の認知に大きなギャップがあると感じました。そこで、広島など中国地方に馴染むように、私たちが拡声器の役割をすることが重要というのが見えてくるわけです。広告ひとつとっても、WEB広告が主流になる中、広島など中国地方では紙媒体の広告の価値が引き続き高い特徴がありました。そこで、より多くのお客様に当社の施策を知っていただけるよう、中国5県版の「WESTERポイント」のパンフレットを作りました。

ポイントのホームページはあっても全国版なので、地方独自の取り組みが一目で分かるのはありがたいですね。

眞鍋:20〜30代はWEBを見る方が多いのですが、40〜50代や年配になるとそうは言っても紙を好まれる傾向が見られます。また、駅の現場のスタッフが問合せを受ける際にも、WEBを操作するより紙で案内する方がやりやすいというメリットもあります。

地元企業と協力して共に汗をかきながら広島の明るい未来を築く

「WESTER」アプリでは、全体のポイントキャンペーンの他に広島など地元のポイントキャンペーンもされていますが、その企画などもされていますか。

眞鍋:全社的なキャンペーンは大阪本社で作られますが、広島でも独自のキャンペーンを行っています。地域の窓口機能を担うJR西日本広島支社も同じビル内に入っているため、広島支社とも連携を取りながら、広島であればカープやサンフレッチェ、ドラゴンフライズといったプロスポーツチームをキーワードにしたキャンペーンを共同で企画・展開しています。

昨年、福屋広島駅前店とWESTERポイントを連携されたそうですが、これもその一環ですか。

眞鍋:はい、福屋広島駅前店様がWESTERポイントの可能性を前向きに受け止めてくださり、ICOCAでの商品決済によるWESTERポイント付与サービスに加盟してくださいました。こうした他企業様とのタッグも追い風に、2025年3月24日に開業する広島駅ビルのminamoa(以下「ミナモア」と称する)も含めて周辺施設で買い回りをしていただけるようなキャンペーンを張っていきたいと思っています。

私も「WESTER」アプリを使っています。ときどき新幹線を利用するのですが、そのポイントもたまると本当にお得だと思います。ですが新幹線を利用しない方も多いですよね。そのような方に向けたキャンペーンはありますか。

眞鍋:ありがとうございます!!新幹線や通勤でJR西日本を利用される方は本当にお得です。ICOCAアプリですと当社クレジットカードのJ-WESTカードからチャージするだけでポイントが付きます。確かに、新幹線をご利用されない方もいらっしゃいます。そのような方でもお気軽にポイントの魅力を体験していただけるよう、3月に開業するミナモアをキッカケとして、ICOCAでの在来線電車のご利用と商業施設でのお買い物を「ポイ活」でつなぎ、終にはエリアで経済が活性化されるような世界をつくりたいと考えています。たまったポイントでおトクに新幹線にご乗車いただけますと最高です!
また、アプリの認知度を上げるためにも、ミナモア開業にかかわらず、広島市域の皆様に支持されるようなオリジナルのキャンペーンを継続的に企画していきたいと考えています。

WESTERポイントがたまる、使える施設は増えますか。

眞鍋:広島は、ekie やミナモア、ホテルグランヴィア広島など当社グループ企業の他、家電量販店やデパート、エディオンピースウィングスタジアムなど、社外企業様の加盟店が増えてきている事が特徴です。このうねりは、是非とも継続させなければなりません。

加盟店営業もされているそうですが、心がけていることは?

眞鍋:「先方様と共に汗をかくこと」ですね。特に地域は人口減少のあおりが大きく、地方経済も沈みがちですよね。私が住む神戸もそうですが、広島も人口流出が止まらず経済が落ち込んでいます。そういう状況であるならば、経済再浮上のために業界問わず関係する人全員が共に考え、汗をかいて動いていかないと、地域の未来はないと思っています。

少し違うかもしれませんが、商業施設ミナモアができ、広島電鉄が2階に乗り入れる新しい広島駅ビルは、広島市も関わっていますし、複数の企業や団体が協力している形になりますね。

眞鍋:新しい広島駅ビルと路面電車が結節するのも一つの機会ですし、ミナモアという大型商業施設の開業も一つの機会です。ただし、広島経済が活性化するためには私たちだけが利益を得ても意味がありません。駅の近くの「面」、周辺を含めた「エリア」で消費が活性化する状態にするには、当社だけが考えるのではなく、地域のことを最もよくご存じの地元企業の皆様と膝を突き合わせて議論し悩まないと、どんなに良いポイントシステム・施策であっても長続きしません。WESTERポイントを地域に根差したポイントとするためには、ポイント加盟契約を区切りとせず、むしろこれを始まりとして、「貴社と一緒にどんな仕掛けができますか」と問いかけさせていただきながら、地域に馴染む施策をワンチームで創り上げていきたいです。それが、まわりまわって当社グループの利益につながるものと確信しています。

WESTERアプリで、50年に一度の大プロジェクトを盛り上げる

WESTERアプリの中でお薦めの機能はありますか。

眞鍋:「マイ駅」ですね。これは本当に便利です。私も使っています。普段よく使う駅を登録しておくと、ホームの発車標の情報(次に出発する電車の時刻・番線の情報)が自動で出てきますし、その駅の1日の時刻表も簡単に閲覧できます。このアプリ自体、コロナ禍の2020年に誕生したこともあり、非対面で情報が得られるような仕組みになっています。

アプリ事業でピンチだったことなど思い出に残るエピソードはありますか。

眞鍋:ミナモア開業前に、ボーナスポイントを付与することでミナモアの商圏がどこまで広がるか実験を行っています。その一つとして、広島県・山口県一部からの日帰り新幹線利用とekieでの購買の両方をクリアしたら10%ポイントを還元するキャンペーンを実施しました。ところがこれが全く伸びませんでした。アンケートによると、5,000円のekie購入条件のハードルが高かったようで…。しかも冬でスポーツのオフシーズンとも重なり、広島に訪れる動機が薄い。そこで2回目の実験で、ekieでの購入金額のハードルを3,000円に下げ、カープなどの試合があるシーズンに合わせて夏に実施したところ、1回目よりも何倍もいい成果が得られました。ただそれでも大きな効果があったとまでは言えないので、今後3回目を検討する際は、もっと効果が得られるように試行錯誤を繰り返していきたいですね。

WESTERアプリやWESTERポイントキャンペーンの今後の展望を教えてください。

眞鍋:ミナモア開業は、当社の広島エリアでは50年に一度のプロジェクトと呼ばれています。ということは前回のプロジェクトを経験した人が周りにいないということですよね。開業後、人の流れや消費の傾向がどう変わるのか期待値もありますが、いかんせん初めて経験することなので、どこまで期待通り、目論見通りに事が進むのか分からないのが正直なところです。そのような中で企画する施策は、予測や仮説を盛り込むものです。個々の施策が当たるかどうか分かりませんが、目的を定め、データを検証する事で節目節目で施策を評価しながら、よりよいキャンペーンが展開できるように努めていきます。まずはやってみる、やりきる、です。

話は変わりまして、人材育成にも注力されているそうですね。

眞鍋:人材育成というと、部下には「どうしましょうか」と相手に判断を委ねるようなコミュニケーションを控えるように言っています。扱う業務が基本的に初めてのものばかりなので、私だって分かりませんし(笑)。鉄道運行はルールがきっちり決まっていて、そのルールを守り組織の統制を利かせることで、毎日の安全運行を確保してきた歴史があります。私の部下も、前職は鉄道運行に関する部署で働いていた方が多くいます。その中で、我々はむしろイチから仕組みを作るような新しい仕事に挑戦しています。前もって正解を見つける事はできません。何が正解っぽいのか、多様な人材の意見のぶつけ合いが必ず必要です。ですので、部下から何か聞かれてもまず「あなたはどう思うか」と問い返したあと、自分の意見を言うように心がけています。上司部下関係なく議論しなければ道も見えないし、チームもまとまらないと思っています。
なんかこの話でも、ブラジルでの経験が原点になっている気がします(笑)。

ミナモア開業後も長く支持される工夫を100フレッチェ(笑)ぐらい頑張って考えます!

今後、WESTERアプリやWESTERポイントをどのように展開されますか。また、広島駅だけではなく、紙屋町・八丁堀を合わせた買い回りはどのようにお考えですか。

眞鍋:恥ずかしながら、私がこれまで申し上げた「面」というのは、現在広島駅から徒歩1分圏内程度のものでして、広島市全体で見てもほんの一部なんです(笑)。ですので、やはり当社の決済ツールを使ってWESTERポイントがたまる加盟店を増やすことが必要と考えています。とは言え、広島の店舗は星の数ほどあり、部署のメンバー5人で全てを開拓するのはとてもとても。また、WESTERポイントは業界の中では新参者ですし、メジャーなポイントと同じ土俵で戦っても太刀打ちできません。このように決済ツールもポイントも競合他社がひしめく中ではあるのですが、最近、他の決済事業者様も「キャッシュレス決済から広島の経済を活性化させたい」という共通の志を持たれている事に気付きました。同じ志を持つ企業様と連携してノウハウや情報を分かち合い、業界ワンチームで広島圏域のキャッシュレス浸透の取組を進めていく。当社としてはICOCA等の決済ツール、WESTERポイントサービスを抱える立場からこの取組を支援していく。このような助け合いの力も借りて、少しずつでもWESTERアプリやWESTERポイントの認知と加盟の取り組みを拡げていきたいと考えています。

最後に新しい広島駅ビルに何を期待されますか。

眞鍋:広島駅は間違いなく広島経済の主要の拠点になると思います。人が集い、賑わいが生まれる場になると思います。ただ、集まれば良い・賑わえば良いものではないと思います。その結果、広く消費が巡る世界に持っていくことが重要だと思います。何度も集い・賑わい・買って戴ける広島駅エリアにならねばなりませんし、そのために工夫出来ることは沢山あると思います。ポイントだって、そのキーワードのひとつです。ミナモア開業後も、末永く広島駅エリアをご贔屓にしていただける工夫を頑張って考えていきます。100フレッチェ(サンフレッチェにかけて)ぐらい用意できるように!(笑)

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