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広島駅を“語る” Vol.10 広島初出店や個性的な店舗を誘致した「ミナモア」、もう一つのお出掛けスポット誕生に期待!

  • 中国SC開発株式会社 営業本部 営業部
    ミナモア統括グループ第1チーム 津村凌さん
    2017年に中国SC開発(株)に入社し、広島駅ビルASSEの閉館事業とekie KITCHENの開業に携わる。2020年6月からJR西日本SC開発(株)に出向し、ルクア大阪で雑貨・コスメフロアを担当。2022年6月に帰任し、広島新駅ビルminamoa(ミナモア)の店舗リーシング業務を担当している。

目次

ekie KITCHENの開業やルクア大阪での経験が生きる

広島新駅ビル「minamoa(ミナモア)」の前身である広島駅ビルASSEの閉館業務とekie KITCHENの開業に携わっていらっしゃったそうですね。まずは当時のことをお伺いできますか。

津村:ASSEは50年以上の歴史があり、2020年3月末に閉館しました。閉館イベントとして桜のカードにコメントを書いてもらい、壁一面を桜いっぱいにするという企画を行いましたが、「青春の場所だった」「小さいころから利用していた」など本当にたくさんのコメントが寄せられ、歴史ある建物だったというのを感じました。コロナ禍に入ってすぐだったため盛大にお見送りできなかった悔しさはありますが、たくさんの方に見守られて感慨深かったです。
ASSEの閉館作業と同時に、ekie KITCHENを新しく作り上げる作業を行っていました。こちらは、「これから頑張るぞ」とすごく夢が広がる仕事で、閉館と開業という逆の動きを同時に行うのは切り替えが大変だったという記憶があります。ただ、収束させることと新しい夢を語ることを経験できたのは良かったと思います。

ekie KITCHENは人気店の出店やビールスタンドなど面白い取り組みが印象的でした。広島新駅ビル開業に向けての一歩だったのでしょうか。

津村:元々はお土産物屋さんが多い「新幹線名店街」があった場所で、新幹線の改札も近かったことから、利用者の多くは観光客でした。そのため地元の方が日常で利用するエリアではなかったのですが、広島新駅ビルができることも見越し、観光客の方だけでなく地元の方にもご利用いただけるようにするという意味では、第一歩みたいなところはあったのかなと。広島新駅ビルの基盤を作るということを意識していました。
一般的なショッピングセンターの場合、区画割りがされてそこに出店していただくのが基本ですが、ekie KITCHENの場合、楽しくワイワイできるような場所があってもいいのではというアイデアも飛び出しました。そこでビールや総菜などをペアリングしながら持ち寄り、コンパクトな空間で楽しく飲食できるスペースを作ったのも新しい試みでした。

ASSE閉館直後の2020年6月からルクア大阪に出向されたそうですが、広島新駅ビル開業を見据えてのことだったのでしょうか。

津村:実際はどうか分かりませんが、今思うと広島新駅ビルの店舗リーシング業務を担うことを期待されていたのかもしれません。広島の場合、お土産物屋さんや飲食店とは比較的多く繋がりがあるのですが、アパレル系やコスメ、雑貨の繋がりが少なく、ルクア大阪には広島にはないファッションやコスメのお店がたくさん入っていたので、関係を築くことができました。その流れでミナモアにご出店いただいたお店もたくさんあります。
また、ルクア大阪は半年に1回のペースで部分リニューアルをしていて、新しいお店とのやり取りも経験し、運営の仕方なども学ぶことが多かったですね。ミナモアの店舗リーシングを行うにあたり、この経験が生かされていますし、ルクア大阪に行って良かったなと思っています。

座談会や日記&行動観察調査などで広島の人の心をつかむ

2022年6月に広島に戻ってこられ、ミナモアの店舗リーシングを担当されていますが、最も心掛けていることは何でしょうか。

津村:ekie KITCHENやルクア大阪と違い、当然ですがまだ建物がない状態でしたのでデータなどお伝えできるものがありませんでした。そういった中で店舗さまにお話をさせていただくため、データが無い分、自分の中で事業の理解度を深め、そこにいかに私の思い、熱量を乗せて伝えられるかということを意識していました。

ミナモアのコンセプトの中に「全館カフェ」「日常の中の冒険」といったことが掲げられています。最も意識されたのはどのようなことでしょうか。

津村:6つのコンセプトの中で最も大きな命題が「全館カフェ」です。私自身、さまざまなカフェのリーシングを担当しているため、オフィシャルではないもののカフェ担当みたいな形になっています。「全館カフェ」を実現させる上で、カフェのリーシングも非常に意識しています。

店舗リーシングにあたり、地元の企業や団体などに話を聞かれたり、何か取り組みをされましたか。

津村:私達の仕事はお買い物されるお客さまと直接関わることがほぼなく、お客さまの生の声を伺う機会がないため、皆さんが求めているお店と私達が考えるお店との間にギャップが生じている可能性があります。そこで各企業さんや学生さん、一般の方々と座談会などを行い、生の声を聞くというマーケティングを大事にし、参考にするようにしました。座談会などはASSE閉館直後から数十回実施しました。

座談会の他に何かされたことはありますか。

津村:1週間日記を付けていただくという「日記調査」を行いました。

日記調査?! それはどのようなことを調査されたのですか。

津村:その日の朝ご飯や今日着た服などを写真付きで記録してもらう調査で、20人ぐらいの方にご協力いただき、広島の方だけでなく、東京や大阪の方にもご参加いただいて広島の方との違いを見ました。例えばランチはどのぐらいの価格帯のものを食べられているのかとか。日常もですが、お休みの日の動きも調査してすごく感じたのは、東京や大阪の方はお休みの日に出掛けて高級な紅茶屋さんに行く、美術館に行くなど、少しキラキラした場所で過ごす自分が好きみたいな感覚の方が多かったと思います。
逆に広島の方はおうちカフェやペットと過ごす時間など、日常に幸せを見つけるのが得意なのかなという感じがありました。今回のコンセプトの一つ「日常の中の冒険」はそこからきています。また、「誘ってもらったら行く」「期間限定のお店があったら行く」という方も多い印象でしたので、ミナモアが日々さまざまなことを提供することによって皆さんの日常に彩りを添えられたらいいなと考えています。
「日記調査」の他にも、実際にお休みの日に1日中ついて行き、休日どう過ごされているかという調査も行いました。

え?! 1日密着する調査もされたんですか。

津村:基本的にはお一人でお休みを過ごされている行動ルートについて行かせてもらう形で、時折会話をしながらよく行く古着屋さんや雑貨のお店などに行き、どのような行動をされているのかを調査しました。広島にお住まいの方10人ぐらいにご協力いただきました。

日記調査と1日密着調査の両方をされた理由は?

津村:日記調査は、他の地域に住んでいる方と広島に住んでいる方との違いを知ることが目的で、1日密着する行動観察調査は、広島に住んでいる方がどのような行動・生活をされているのかを知り、例えばミナモア開業後、どういうシーンで利用していただけるのかシミュレーションするために行いました。

出店者と一緒になって魅力的な「ミナモア」を作り上げる

ミナモアは3割ぐらいが広島初出店ですが、広島にはないお店をリーシングするということを意識されたのでしょうか。

津村:そうですね。というのも、いろいろなお店が東京、大阪、名古屋、そして福岡や仙台に出店され、広島が飛ばされることが多いのが気になっていまして…。よく「旅行に行ったときに広島にはないお店に行って買って帰る」という声も聞きますし、広島の方が出店を望まれているブランドやお店がたくさんあると感じていたので、今回のこの大きな開発のタイミングでぜひ広島にも出店していただきたいという思いで、広島初出店のブランドを誘致することを意識しました。

誘致される上で大変だったことや、それを乗り越えた秘策はありますか。

津村:先ほども申し上げたように、建物がない段階で説明する難しさを感じました。まずはたくさんの情報を自分の中にインプットして理解し、多くの方とお話してアウトプットすることでアップデートされていったように思います。工事が進むとお出しできる情報も増え、少しずつ積み重ねた経験で乗り越えていけたという気はしますね。

発表資料を拝見すると、個性的なお店がそろっているなという印象です。どのような部分にこだわられたのでしょうか。

津村:県外のお店の他に、地元・広島のお店も数多くご出店いただきました。このような大きな商業施設に出店を考えていなかったという方や、かつての広島駅をイメージされている方、新たな開発に期待をしてくださってる方もいらっしゃり、反応はさまざまでした。そこを「全館カフェ」「日常の中の冒険」などのコンセプトをしっかりお伝えし、何度もお店にお伺いするうちに、「一緒に新しい広島駅ビルをつくる」「魅力的な駅ビルにしていく」という思いが一致し、お店の方と目線を合わせることができるようになりました。
どのお店もただ商品を売るだけでなくさまざまなストーリーがあり、地元の方にすごく愛されています。そのような背景をお持ちの個性あるお店をさらに多くのお客さまに知っていただきたいですし、それをサポートさせていただけたらうれしいですね。

こだわりがあるお店は出店も慎重だと思います。どのようにアプローチされたのですか。

津村:「出店してください、お願いします」と簡単にできるようなものではないと思っていましたので、そのお店のことを深くまで知って自分自身も共感し、そして目標達成に向けて熱量を持って一緒に語れるように努めました。お話を伺う中でそのお店のストーリーや目的をお聞きし、「ミナモアでこういう展開ができたら」などの提案したのですが、どちらかというと商談や交渉とういよりも、お互いのビジョンをディスカッションするということを意識していました。

出店者さんと一緒にミナモアを作り上げている感じがしますね。

津村:そのイメージが近いですね。お店の世界観が表現できる内装やレイアウト、お客さまの動線なども設計者さんを交えて議論し、一緒にお店を作っている感覚です。「出店が決まりました、はい終わり」ではなく、お店の個性が表現できるようにサポートし、ミナモア開業後のお店作りや営業の仕方、イベントまで考え、伴走しているイメージです。

先日、ミナモアで新業態を展開予定のスターバックスコーヒーのメディア向けイベントが行われましたね。このような仕掛けもお店作りをサポートする一貫ですか。また、他にも新展開をされるお店はありますか。

津村:スターバックスコーヒーも私が担当しました。tea and cafe業態は、スターバックスコーヒーとしては中四国初だったので皆さまにお試しいただきたくて試飲会を行いました。この他にも、出店に合わせて新商品を開発してくださっているお店などがあります。ぜひご期待ください。

皆さん、何が決め手となって出店を決められたのでしょう? また、出店したお店から言われてうれしかったことなどありますか。

津村:新しいスポットが誕生するという話題性に期待してくださっていると感じています。それに加えて、私の熱意が伝わっているとうれしいですね。中には「最初のプレゼンを聞き、津村さんだったから決めました」というお声をいただいたこともあり、人と人とのやりとりの中で出店に繋がったということはとてもうれしく、ありがたいことだと思います。

「ミナモア」誕生が、「広島に住みたい」と思われる方が増えるきっかけに

全体についてお伺いします。館内に雁木テラスができ、そして全館カフェのような空間にするということですが、店舗設計にも関わる中で意識された部分はありますか。

津村:まさに意識した部分があります。特に雁木テラスの隣の区画は、実際にオープンして見ていただいたら分かるのですが、うまく雁木テラスを活用した設計になっていますので注目していただきたいですね。また、雁木テラスからは広島電鉄の電車の発着を上から眺めることができ、すごく良いビューポイントです。自由に座って過ごせる場所ですし、全館カフェと謳っているので、館内のカフェのお店でテイクアウトしたドリンクをここで飲んでゆっくりしてもらうとか、そういった利用支援もできたら…と想定しているので、全体的なお店の配置も配慮しました。

飲食店や産学連携、クリエーターとの出会いの場が融合した店舗「Dots(ドッツ)」も気になります。テレビ局なども参画していて面白い取り組みですよね。

津村:きっかけは、私が「ミナガルテン」に伺い、プレゼンさせていただいたことでした。私達がやりたいことに共感してくださり、どういう形で何ができるのか、毎週のように打ち合わせを重ねて模索していきました。通常はお買い物とビジネスイノベーションが切り離されていることが多いのですが、せっかく人が集まる場所ができるので、同じ空間でクロスさせていこうということになったんです。ベースはレストランとカフェで、中に入ると広島で活躍するデザイナーさんたちが常駐していたりとか、いつでも誰かと出会える、新しいビジネスが生まれるというのができたらいいなと。広島や瀬戸内の良い物を発信できる場所でもあるので、まだ知名度は低いけどステキな商品などをポップアップで販売したりとか。テレビ局も入っているので、映像を活用した企画も考えています。将来を見据えた面白い場所になると期待しています。

最後に、ミナモアはどのような場所になってほしいですか。

津村:ミナモアができることで、もう一つお買い物ができるスポットが増えるというイメージですね。紙屋町・八丁堀エリアでお買い物される方を取り込むというのではなく、路面電車のルートも変わって移動時間が短縮されるので、1日のお買い物の中で、紙屋町・八丁堀エリアに出掛けてミナモアにも行ってと回遊できるようになるのがすごくいいかなと。出店されているお店が違い、買い物の内容によって利用するシーンも異なるので、うまく使い分けていただけたらいいですね。今のマーケットが大きくなり、「広島に住みたい」と思われる方が増えるようにするのが「ミナモア」の大きな役割だと思います。

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