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ニュースリリース

2017年12月27日
安全

「のぞみ34号」で異常を感じたにもかかわらず運転を継続させたことについて

 2017年12月11日(月曜日)、東海道新幹線名古屋駅にて運転を取りやめた「のぞみ34号」(弊社所有車両)の台車に亀裂などが発見された重大インシデントにつきましては、新幹線の安全性に対する多くの皆様からの信頼を裏切るものと認識しており、日ごろ新幹線をご利用いただいているお客様をはじめ、関係する多くの皆様に、あらためて深くお詫び申し上げます。
 今回は、「のぞみ34号」で異常を感じたにもかかわらず運転を継続させたことについて、以下により現時点での弊社の認識などをお知らせするとともに、運輸安全委員会などのご意見をふまえ、今後とも必要な対応を行ってまいります。

詳細

1 乗務員、車両保守担当社員、指令員に関する事柄
 詳しくは、こちらをご覧ください(別紙1〜3)。PDF形式:325キロバイト

2 関係者の認識
 (別紙1〜3)に基づく関係者の認識は以下のとおりです。なお、関係者とは、指令員および指令員に報告した社員を示します。

○運用指令員(指令員K)の認識
・広島駅到着前に車両保守担当社員を岡山駅から添乗させる手配をした。
・床下点検について、車両保守担当社員から「点検したいんだけど」という発言を受けて車両保守担当社員に運転に支障があるかどうか確認したところ、「支障があるところまではいかないと思う」との回答を受けた。このため、運用指令員は床下点検の必要性を認識しなかった。「安全をとって新大阪で床下をやろうか」という発言については運用指令長からの問い合わせが重なり、聞けていない。
・新大阪駅到着前のやり取りにより、「走行には支障がないが、車両の専門家が見ても分からない音がしている」という認識となった。
・車両保守担当社員は車両の専門家なので、運転に支障があるのであれば支障があること、点検の必要があるのであれば実施する旨を明確に伝えてくると認識していた。

○運用指令長(指令員L)の認識
・運用指令員と車両保守担当社員がやり取りしている際、運転に支障があれば駅間でも停車させようと考えており、運用指令員に状況を確認したところ、運転には支障がないとの報告があったので、危険な事象や床下点検が必要であるとの認識はなかった。
・以上の認識であったため、JR東海指令には、13号車で異音がすること、運用指令員が車両保守担当社員を手配してモーター開放による確認を行い、走行には支障ないことを伝えた。

○車掌長(車掌A)の認識
・においについては強くなく(何かが燃えたにおいではない)、その後消えたこと、音については列車を停止させてまで確認するようなものではないことから、危険な状況ではないと認識していた。
・モヤについては、状況を注視しているところに車両保守担当社員が乗車してきたことから、車両保守担当社員が確認してくれると認識していた。
・音とにおいが関連していると思わず、運転に支障があるという認識はなかった。
・このような状況で、車両保守担当社員が確認に来てくれたことで、車両の専門家が判断すると思っていた。

○車両保守担当社員(H、I)の認識
・においやモヤは、わずかに感じる程度で認識したものの、それよりも13号車の台車周辺から発生する異音は通常と異なるものであり、可能な場所で早めに床下点検をする必要があると考えた。運用指令員に対して床下点検実施の要請ができていると認識していた。

3 課題と対策
 今回の事象に対して、弊社として認識している極めて重大な課題は以下の3点です。

 (1) 車両保守担当社員と指令員の間で車両の状況についての認識のズレがあり、運行停止に関する判断基準も曖昧であった。
 (2) 異音などが発生しているにもかかわらず、運転に支障がないと判断し、JR東海に指令間協議を申し出ずに運行を引き継いだ。
 (3) 車両保守担当社員と指令員は運行停止に関する判断を相互に依存する状況であった。

 上記のような状況を会社として把握できていなかったことについても重大な課題と認識しています。
 課題に関する現時点の検証内容については、こちらをご覧ください(別紙4)。(PDF形式:178キロバイト)

 これら課題への現時点の対策は以下の通りです。

 <課題(1)に対する対策>
 ○情報伝達の言葉の工夫
 ・言語技術教育などの実施
 ○指令体制の強化
 ・車両保守担当業務経験者の配置
 ・指令所指導体制の増強
 ○コミュニケーションツールの充実
 ・会議用アプリの活用(乗務員、指令員間)
 ・音声モニターの増備(指令所内)
 ・指令間情報共有のシステムに書画機能を追加(指令所内)
 ○連携の強化
 ・指令員と車両保守担当社員などのクロスオーバーMTの実施
 ・指令員と車両保守担当社員との合同シミュレーション訓練の実施
 ○判断基準の明確化
 ・におい、モヤ、音、振動などが複合する事象への対処ルールの策定と指導
 ・車内で発生する音等を収集し教育・訓練で活用
 ○ハード対策
 ・車上や地上に異常を判断できる設備の設置の検討

 <課題(2)に対する対策>
 ・運転中に車両故障などが発生した場合は指令間協議で引き継ぐことを再徹底
 ・会社間境界を越えたエリアでの車両点検や運転検査のルールについての教育

 <課題(3)に対する対策>
 ・「異常時には現場の判断が最優先する」という価値観をあらためて社内で共有

 上記に加え、異常がないことを確認できない場合は、躊躇なく列車を停止させることを徹底するほか、小さな変化も異常の予兆と敏感にとらえられるよう、新幹線輸送に携わる社員に対し、教育・訓練などを通じて繰り返し伝えていきます。

 【用語】
  (1)運用指令員:車両故障時の乗務員への指示や車両保守担当社員の手配のほか、車両や乗務員の運用を管理している指令員のこと。
  (2)モーター開放:特定のモーターを使用しないようにする処置のこと。
  (3)車掌長:通常の車掌業務(車内巡回、車内改札、車内放送等)に加えて、他の車掌・客室乗務員・パーサーのとりまとめを担当する車掌のこと。そのほか、車内巡回時に車両設備に異常がないことを確認し、故障時には運転士とともに応急処置対応も行う。
  (4)指令間協議:直通列車等の運行管理を適切に行うため、運転中の車両故障等が発生した場合に関係会社の指令と行う協議のこと。

4 今後に向けて
 車両の極めて重要な部位である台車に亀裂や油漏れを発生させたこと、運行中に異常を感じたにもかかわらず運転を継続させたことに、大きな課題があったものと重く受け止めています。今後は以下の取り組みを通じ、新幹線の安全性に対する信頼性を回復していく決意です。
 新幹線は、ATC装置や、車両の特定部位の異常を運転台に表示するシステムなど、高度なバックアップ機能を備え高い安全レベルを維持しています。しかしながら、今回の事象はそのようなシステムでカバーしきれない、人の関与の残る部分で発生した事象でした。弊社ではこれまでリスク管理に取り組んできましたが、今回の事象を惹き起こしたことで、これまでのリスク管理が不十分であったとあらためて強く認識しています。
 今後は、リスクは常に存在していること、潜在的なリスクが表出すると、特に高速鉄道では重大な事態につながることをより一層意識して、高い安全レベルを実現してまいります。
 また、安全を確保するにあたり、人の判断に頼っている部分をできるだけ減らすため、台車の異常を検知するセンサーの整備など、最新の技術を取り込んだハード対策の早期導入に向けて検討を進め、これを実現することにより新幹線の安全性をより高めてまいります。
 さらに、安全運行を支える社員が適切な行動をとれるように、今回の事象の検証内容に対するヒューマンファクターの視点での社外からの評価もいただきながら、ルールや仕組みの見直しに取り組みます。また、安全の確保に向けた新幹線組織の体制強化にも取り組んでまいります。
 これらの取り組みにより新幹線の安全マネジメント全体のレベルアップを迅速に進めてまいります。

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