2020年9月 社長会見
1.営業・輸送概況
2.局地的な大雨に対するさらなる安全性向上
3.新常態をサポートするMaaSアプリ「WESTER」
1点目は、16日に発表した通期業績予想と配当予想についてです。
現時点で入手可能な情報に基づいた想定で、対前年で大幅な減収減益、連結で2,400億円の純損失の見通しです。
配当予想についても、長期安定的株主還元を重視するという配当方針を踏まえ、対前期比大幅な減配ですが、年間で1株あたり100円とさせていただきました。
経営の根幹である安全を維持した上で、キャッシュアウトの最大限の抑制に努め、新常態でのお客様のニーズに合致した価値創造に取り組み、この難局を乗り切っていきたいと考えています。
2点目は、17日に発表した深夜帯ダイヤ見直しについてです。夜間の作業時間を拡大し、お客様への影響を最大限抑えた形で、12線区、最大30分の見直しとさせていただきました。
ご利用の皆さまのご理解を賜りながら、将来にわたり鉄道を安全に運行し続けるべく、引き続き努力を重ねていきます。
1.営業・輸送概況
【運輸取扱収入(速報値)】
収入ですが、対前年比が8月は41.8%、9月は4連休の22日までで49.2%です。近距離券と中長距離券でそれぞれ8月と比べて10ポイント程度上昇しています。
【新幹線・在来線特急・近畿圏のご利用状況(速報値)】
ご利用については、山陽新幹線は8月で25%、9月は22日までで39%、近畿圏では8月で59%、9月22日までで67%です。
なお、4連休のご利用については、山陽新幹線55%、北陸新幹線62%、在来線特急56%、近畿圏77%でした。
4連休のご利用が増加したこともあり、9月のご利用は8月に比べて、新幹線、在来線特急、近畿圏いずれも回復基調になっています。
関西近郊や四国、九州を含めた西日本エリアのお出かけに大変おトクなきっぷを発売していますので、ぜひご利用ください。
2.局地的な大雨に対するさらなる安全性向上
【降雨災害に対するこれまでの取り組み】
大雨によって、線路下の土砂流出や沿線からの土砂流入が発生し、安全確保に支障をきたす恐れがあるため、安全性を高めるべくハード・ソフト両面から対策を進めています。
ハード対策として、盛土や沿線の斜面の補強などを行う斜面防災工事を順次実施しており、京阪神エリアでは、2015年度からこれまでに約70億円以上を投じて安全性を高めています。
ソフト対策として、駅などに設置した鉄道雨量計を用いて、降雨量が規制値に達した場合に運転規制を実施し、安全性を確保しています。
一方、近年、自然災害の激甚化や局地的な大雨が増加しており、さらなる安全性の向上を図ることが重要であると考えています。
【レーダー雨量を活用した新たな取り組み】
そこで、本日ご紹介するのは、鉄道雨量計に加えて、レーダー雨量を活用する新たな取り組みです。
これまでは、平均12キロメートル間隔で設置している当社の鉄道雨量計による点の観測であり、鉄道雨量計以外の箇所での局地的大雨が把握できませんでした。
気象庁のレーダー雨量を活用することにより、連続的な面での観測が実施でき、沿線での局地的大雨を早期に把握することが可能となります。
【導入システムの概要】
2種類のシステムを導入し、在来線全線区を対象にレーダー雨量の活用を図っていきます。
下のビジュアル地図、赤色の近畿圏主要線区については、さまざまな気象事象に起因する情報を一元的に管理、共有する、気象災害対応システムのサブシステムとして、昨日より活用を開始しています。
それ以外の青色の線区については、独立したシステムとして、新たに「レーダー雨量監視システム」の開発を進めており、今年度以降、順次展開していきます。
投資額は、合計で約3億円です。
【レーダー雨量の活用が有効と考えられる事例】
2016年7月に発生した芸備線 西三次・志和地(しわち)駅間での列車脱線事故です。
線路外から線路内に岩の混じった土砂が流入し、列車がそこに乗り上げたことにより脱線したと推定しています。
当日は、鉄道雨量計で、夜間に徐行規制値に達する降雨を観測し、朝には規制解除となっていました。
しかしながら、事故後の運輸安全委員会の調査により、土砂が流入した現地付近では、停止規制値を上回る局地的な大雨が観測されていたことが明らかとなっています。
下のビジュアルにある図は、事故約4時間前の解析雨量です。
今後は、レーダー雨量の活用により、こういった降雨をタイムリーに把握し、運転規制を行うことで、さらなる安全性向上に寄与できると考えています。
3.新常態をサポートするMaaSアプリ「WESTER」
【当社のMaaSの取り組み】
デジタル技術を活用して、さまざまな移動や生活サービスをシームレスに提供する「MaaS」の構築は、重要な経営課題と認識しており、行政や企業等と一体となり、地域毎のエリア特性に合わせて早期に実現したいと考えています。
当社はMaaSを通じて、公共交通の利便性向上のみならず、生活サービス、さらにはまちづくりへの貢献までを目指しています。
MaaSの3つの類型である、地方型、観光型、都市型の取り組みに加え、自動運転BRTなどMaaSに欠かせない次世代モビリティの開発も外部パートナーと連携し着実に進めています。
交通に関する一元化した情報提供や、観光・生活サービスとの連携を通じ、西日本エリアのお客様の移動や生活をスマホひとつでサポートする新たなMaaSアプリ「WESTER」を本日リリースしました。
また、MaaSの取り組みを強力に推進しているJR東日本とMaaSの推進に向け相互に連携して取り組むこととしました。
双方の連携により、両社エリアのお客様により付加価値の高いサービスを提供し、日本全体のMaaS連携推進に貢献していければと思います。
【「WESTER」の概要と主な特徴】
日々の移動と生活に役立つ便利な当社サービスを、アプリを通じて繋ぎ、さらに、混雑回避・非対面といったお客様のニーズにお応えすることで、新常態をサポートします。
主な特徴です。MaaSの基本的機能である日本全国の経路検索に加えて、大きく3つあります。
1つ目は、ご自身でよくご利用される駅などを登録していただく「マイ駅」という機能です。
当社のほぼ全ての駅が登録でき、マイ駅に関わる情報がいつでも確認できます。駅周辺のスポット検索やホテル予約といった生活サービスもご利用いただけることが特徴です。
2つ目は、当社グループの飲食店やカフェなどの駅ナカ施設でご利用いただけるクーポンが取得でき、さまざまなシーンでお使いいただける機能です。
3つ目は、9月28日リリース予定のせとうちのお出かけに便利な観光型MaaS「setowa」にもスムーズにアクセスできることです。
【「WESTER」による新常態のサポート機能】
1つは、混雑回避の参考となる駅混雑度傾向表示です。600駅以上を対象に、平日・土休日別の混雑度傾向が表示されます。
あらかじめ混雑する時間帯を確認し、参考にしていただければと思います。
もう1つは、非対面できっぷを購入できるインターネット予約サービスとの連携です。
行きたいと思ったおでかけスポットの情報提供の画面から直接経路検索ができ、検索結果からインターネット予約サービスであるe5489やEXサービスをスムーズにご利用いただくことが可能です。
以上、WESTERの概要や主な機能をご紹介しました。ユーザーの皆さまのご意見も賜りながら、改良を重ねて、多くのお客様にご利用いただけるアプリを目指したいと思います。