7月定例社長会見
6月30日、東海道新幹線ののぞみ225号で大変痛ましい列車火災がございました。まずはお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、お怪我をされた方、健康を害された方の一日も早いご快癒を願っております。山陽新幹線においても列車ダイヤが乱れ、ご利用のお客様に大変ご不便・ご迷惑をおかけいたしました。
山陽新幹線は東海道新幹線と相互直通運転を行っておりますので、私どもも当事者としてこういった問題に対峙し、十分な検討をしていかなければならないという認識を持っております。国土交通省からの指示・要請を踏まえ、私どもとしまして、警察や関係箇所と連携し、巡回の強化、車内放送や車内テロップによる注意喚起、場合によりお客様にご協力を要請するといったことを行い始めております。
当面のハード面の取り組みとして、6日に発表させていただきましたが、山陽新幹線につきましては、現在N700AおよびN700系のデッキ部に防犯カメラを設置しております。一層のセキュリティ向上を図るため、客室内およびデッキ通路部にも防犯カメラを増設いたします。
ソフト面の取り組みとしては、乗務員に対して十分な指導をあらためてしっかり行っていきたいと考えております。これまでも列車事故や地震などとあわせ、列車火災をテーマとした教育訓練や、実物の車両を使用した避難誘導訓練などを実施してきております。今年度はこれらに加え、「Think-and-Act Training」という乗務員を対象とした運転士と車掌が共同で行う体験型訓練について、列車火災をテーマとし、緊急事態に直面した場合でも状況に応じた柔軟かつ最適な考動ができるよう取り組む予定です。
今後もサミットやオリンピックなど、テロに対するリスクが高まることも想定されるため、関係機関とも連携を密にして、安心してご利用いただけるよう努めてまいりたいと思っております。
1 最近の営業・輸送概況
6月の運輸取扱収入は、前年比108.2%と前年を上回りました。実勢値としましては、106.6%と想定しております。4月から実際のトレンドを振り返ってみますと、4月が105.7%、5月が106.3%、そして6月が106.6%ということで、徐々に増えてきております。
券種別では、近距離券103.1%、中長距離券111.1%、定期券103.5%でした。定期は、消費税率改定の先買い影響の反動増を除きますと、4月が100.2%、5月が100.1%、6月が100.0%というのが実際のトレンドではないかと見ており、年度累計で131.7%となっておりますが、実勢値としてはほぼ前年並みのご利用であったと考えております。
7月は6日現在で、前年比109.2%で推移しています。北陸新幹線の開業効果、山陽新幹線のご利用が好調であること、8月分の前売りが増えていることがあると思っております。
対象期間 | 収入計 | 近距離券 | 中長距離券 | 定期券 |
6月 | 108.2% | 103.1% | 111.1% | 103.5% |
7月 (7月6日まで) |
109.2% | 106.8% | 110.7% | 107.5% |
27年度累計 | 114.3% | 104.9% | 112.2% | 131.7% |
※注釈 実績は直営の速報値です。駅などでの取扱高(消費税を含む)を示します。
6月のご利用状況は、前年比で山陽新幹線106%、在来線特急104%、アーバンネットワーク104%、北陸新幹線322%でした。いずれも平日・休日ともに大変ご利用が好調で、前年実績を上回りました。山陽新幹線の106%という数字につきましては、4月も5月も106%という数字でした。北陸新幹線につきましては、4月が321%、5月がゴールデンウィークの影響もあり346%、6月も322%ということで、引き続き北陸新幹線も好調ということでございます。在来線特急、アーバンネットワークもほぼ4月から同様の数字が続いており、好調だと思っております。
対象期間 | 山陽新幹線 | 在来線特急 | アーバンネットワーク |
6月 | 106% | 104% | 104% |
7月 (7月6日まで) |
105% | 102% | 107% |
北陸新幹線 | ご利用者数(万人) | 前年比 |
6月 | 75.0 | 322% |
7月 (7月6日まで) |
13.7 | 332% |
※注釈 実績は速報値です。
※注釈 北陸新幹線は「上越妙高〜糸魚川駅間」のご利用実績です。
※注釈 北陸新幹線の前年比は在来線特急「はくたか・北越」(直江津〜糸魚川駅間)のご利用実績との比較です。
【北陸新幹線のご利用状況】
北陸新幹線(上越妙高〜糸魚川駅間)につきましては、6月のご利用が75万人であり、開業から6月末までの合計で約282万人の方にご利用いただいております。昨年の特急「はくたか・北越」との比較では約3倍(319%)となっています。
開業から6月30日までの一日あたりの平均で見ますと、4月が約23,000人(前年比321%)、5月が約29,000人(前年比346%)、6月については約25,000人(前年比322%)でした。6月の土曜日・休日のご利用は32,000人(前年比344%)、平日のご利用は23,000人(前年比319%)でした。当社としましては、引き続き、平日のご利用を底上げしていきたいと思っており、ビジネスなどにお得で便利な当社のインターネット予約「e5489」のPR強化やネット・カード会員の入会促進、シニア世代やインバウンドなどのお客様の旅行促進などに取り組んでまいります。
開業から6月30日までの特急「サンダーバード」のご利用は前年比106%であり、関西・北陸間も前年をかなり上回るペースで推移しております。
旅行会社での4月、5月計の販売実績は、関西・北陸間のJR利用旅行商品について、関西発が前年比126%、北陸発が前年比95%でした。北陸発については、首都圏方面の実績が前年比292%と大きく拡大しております。中長期的に見て、きちんと北陸と関西のつながりが続くように取り組んでいかなければならないと思っております。ボリュームが大きい個人型旅行の促進が一つの鍵かと思っており、「マイ・フェイバリット関西」などでのPRを強化し、USJやあべのハルカス、グランフロント大阪、私どもの大阪ステーションシティなどの関西の魅力発信に努めてまいります。さらに、関西から信越方面への旅行商品は前年比246%と大きく増えており、新たな流動が生まれている手応えを感じています。引き続き、より多くの方にご旅行いただけるよう取り組んでまいります。
なお、開業から3カ月を経過したことから、今月は北陸新幹線各駅の乗車人員をお知らせしております。この数字は、新幹線の自動改札機を通過されたお客様の人数を特別に調査した速報値です。一日あたり、金沢駅8,700人、新高岡駅1,600人、富山駅4,800人、黒部宇奈月温泉駅800人、糸魚川駅400人となっております。自動改札機を通らない団体利用のお客様などは含んでおりませんが、2倍すると自動改札を通過されたお客様のおよその乗降の数となります。また、金沢駅には、関西から金沢で新幹線にお乗り換えのお客様も含まれているため、単純にこの数字だけで比較できるものではありませんが、引き続きご利用人員が着実に伸びるような取り組みをしなければならないと考えております。
2 豪雨災害対策などについて
現在、西日本エリアは梅雨のシーズンであり、今後は台風のシーズンに入ります。昨今の異常気象、自然災害の激甚化を踏まえ、雨に対する当社の取り組みについてご紹介するとともに、事前運休などの課題について、私どもの考え方をご紹介させていただきます。
まず、気象庁のデータをもとに降雨量について長期的なトレンドを見てみますと、年間の総降水量については長期的には大きな変化がないものの、時間あたりの降水量が増加傾向にあり、雨の降り方が局所化、激甚化していることが分かってきております。当社においても、昨年度も可部線や福知山線で豪雨災害を受け長期間運休するなど、ご利用のお客様にご不便をおかけいたしました。
雨による災害に備えるために、現在のところ、私どもはまず、列車を抑止する、危険な区間に列車を進入させないという観点で、線路付近に一定の間隔で当社独自の雨量計を配置し、基準に達したときには区間ごとの徐行や列車の運転を見合わせる措置を取っております。また、被害を出さないという観点で、定期的な構造物の検査結果に従って、線路周辺の斜面の補強、排水設備の整備を行っているほか、落石防護柵を設置するなど、安全対策を進めてきております。
雨量計を使って、区間ごとに徐行や運転見合せなどの規制値を細かく定めています。それらを前提として、今年度から列車運行本数が多くお客様への影響が大きい京阪神地区において、一層の安全性向上と安定輸送を確保するために、斜面防災対策を集中的に行っていくことといたしました。この施策は「JR西日本グループ中期経営計画2017進捗状況と今後の重点取り組み(アップデート)」において、安全対策の投資を100億円追加しておりますが、そのうち約45億円を今回の京阪神エリアの斜面防災対策などに投資する予定です。
具体的には、JR京都線、JR神戸線の主に普通電車が走行する区間や大阪環状線などについて、斜面の補強などの斜面防災対策を行うことによって安全性を向上させ、あわせて構造物の安全性が高まることにより雨量規制にかかる規制値を緩和し、ご不便をおかけする時間帯を短くできることを目指しております。
平成27年度からの3年間で約45億円の設備投資を予定しています。工事が完成すると、安全性が向上し、結果として運転規制時間が現行と比較して約45%程度削減できると考えています。
なお、豪雨対策のためだけに、というわけではありませんが、沿線の斜面の管理を確実に行うため、私どもは10年ほど前から「斜面防災カルテ」というものを作成しております。
平成17年に津山線で落石により回送列車が脱線する事象が発生しましたが、こうしたことを背景に、変化する斜面を継続的に管理していくツールとしてカルテを整備していくこととし、急な崖や地すべりの可能性がある箇所のうち、優先順位の高い斜面4,600箇所すべてについて、斜面防災カルテの作成を完了しました。現在はこのカルテを使用し、対策工事での活用に加えて、時間が経つにつれての変化を把握し、検査の精度向上を図るために活用しているところです。そして、対策が必要とした斜面については、さきほど申し上げたような落石防護柵の設置などを行っています。
続きまして、いわゆるタイムライン的な考え方である、大型台風などが接近した際の事前運休の取り組みについて、考え方をご紹介します。
昨年10月、台風19号が近畿地方に接近した際、台風の進路や勢力を勘案し、京阪神地区の在来線を全面運休することを24時間前に発表しました。その際の課題である列車の運行計画のあり方とお客様への周知のあり方の二つについてご説明いたします。
まず、列車の運行計画についてです。これまでも、台風接近時には進路や勢力を見ながら、列車の本数を減らしたり線区単位での運転見合わせを実施することを基本としておりますが、駅間で停車するなど多くのお客様にご迷惑をおかけすることにもなりますので、安全を最優先としつつ、できるだけ運転見合わせの線区や時間を最少化できるように努力してまいります。一方で、昨今の極めて強い台風については、安全を最優先する観点、駅間での長時間停車の防止、台風通過後のスムーズな運転再開の観点で、昨年と同様に、京阪神地区において、条件が合う場合には事前に周知したうえでの全面運休はありうると考えており、その準備を進めたいと考えております。
全面運休の場合は、お客様への十分な周知のために、実施日の前日夕方までにはお知らせをさせていただきたいと考えております。
また、京阪神の在来線エリアでは多くの車両や乗務員が列車運行に関わっていること、ネットワークの広がりが大きいことから、運転再開に向けた地上側の点検にも時間を要しています。昨年は想定以上に台風の勢力が弱まったにもかかわらず、運転再開をタイムリーに実施できなかったという反省がありました。全面運休した場合には、今後、できるだけ再開の判断時期を工夫し、社内の必要な準備を前広に行うなど、運転再開に向けてより柔軟な対応ができるよう工夫してまいりたいと考えております。
最後はお客様への周知のあり方の問題です。昨年度、最も大きかった課題は、全面運休の際、ネットワークが大きいため、お客様がご利用になるそれぞれの駅における最終列車の時刻がわかりませんでした。各駅における着発時刻の周知、全面運休が必要な理由も丁寧にご案内できるよう心がけていきます。可能な限り、各駅単位での周知の徹底やホームページ、プッシュ通知アプリの改良などでのきめ細かい周知を図ってまいります。また、直接外国人のお客様からご指摘をいただいたわけではございませんが、外国人のお客様へのご案内についても課題がございましたので、駅頭やホームページでの案内・掲示を英語・中国語・韓国語で対応できるようにするなどすでに見直しを行っております。
いよいよ、台風シーズンに本格的に入ってまいりますが、日々の点検、検査をきっちりと行うことに加え、斜面防災工事などの対策に取り組みつつ、場合によっては事前運休という措置もご迷惑のかからないような工夫をしつつ実施させていただく場合もあると考えております。
3 梅小路蒸気機関車館閉館イベントのお知らせ
梅小路蒸気機関車館は、1972年(昭和47年)10月に、当時の日本国有鉄道が鉄道100年記念事業として開設し、1987年(昭和62年)4月に当社がその事業を継承した蒸気機関車専門の博物館です。来年に京都鉄道博物館として弁天町の旧交通科学博物館と合体したものに生まれ変わりますが、開館してから約43年間、皆様方に親しまれてまいりましたが、一旦、8月30日をもって幕を降ろさせていただくこととなりました。
閉館に際し、8月30日(日曜日)の午前11時から11時30分まで、扇形車庫12番線入口前にて、閉館セレモニーを開催することといたしました。ご来賓として、下京区長様、大内自治会長様、七条自治会長様にご参列いただきます。
あわせて、特別イベントといたしまして、8月29日と30日の2日間に限り、SLスチーム号を午前10時15分から午後2時までの間、15分ごとに合計16便運行いたします。
7月18日からは、「さよなら梅小路 〜思い出の蒸気機関車館から京都鉄道博物館へ〜」と題し、開館から43年の歴史を振り返る閉館特別展を実施します。「区名札」という蒸気機関車の所属を表す鉄製の札をはじめ、これまで常設展示していない貴重な収蔵資料の展示も計画しております。
その他にも閉館に向けたイベントを計画しておりますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。
さらに、閉館イベントに伴い、ご来館いただいたお客様限定で、閉館記念「特別硬券」を配布いたします。
来年春の開業に向けて着々と準備が進んでおります京都鉄道博物館の一エリアとして、再び皆様の前に登場いたしますので、ご期待ください。