9月定例社長会見
この夏の出来事としまして、8月14日の早朝から大阪府北部や京都府南部を中心とした集中豪雨がございまして、多くの列車の運休や遅れが発生し、大変なご迷惑をおかけいたしました。お詫び申し上げます。
この豪雨によりまして、東海道線(JR京都線)と奈良線の各所で土砂流出やのり面崩壊などが発生しました。特に、高槻駅に設置している雨量計では14日5時頃の1時間雨量が90ミリを記録いたしました。また、前日からの累積雨量も200ミリを超えました。
特にこの夏は、突然の豪雨や雷による被害が多数発生し、多くの列車に運休や遅れが発生いたしました。異常気象とはいえ、このような豪雨や雷に対し、当社としてどのような対策をとることができるか検討してまいりたいと考えております。
1 最近の営業・輸送状況
(1) 運輸取扱収入の状況
8月の収入計は対前年比98.4%でした。特に中長距離券の実績が低かったのですが、コメントいたしますと、8月14日の豪雨災害や、今年は9月の3連休が1回少ないことによる前売りでのお買い求めの減少などがございまして、こういった要素を除くとほぼ前年並みであったと思われます。近距離券につきましては、8月14日の豪雨災害の影響による減収などはあったものの、ほぼ前年並みの実績でした。定期券につきましては、8月31日が金曜日であったことから、購入時期が9月3日以降にずれ込んだことなどの影響で97.0%と前年実績を下回りました。
9月は13日までの実績で、対前年比103.9%となっております。前半は、昨年は台風12号(9月2日から4日)の影響により減収であった反動の増などにより、近距離券、中長距離券ともに、前年実績を上回っております。中旬以降は昨年より3連休が1回少ないことによる影響が出るかもしれないと考えております。
対象期間 | 収入計 | 近距離券 | 中長距離券 | 定期券 |
---|---|---|---|---|
8月 | 98.4% | 99.8% | 98.1% | 97.0% |
9月(13日まで) | 103.9% | 108.7% | 102.3% | 104.5% |
※注釈 駅などでの取扱高を示します。
※注釈 9月は直営の速報値です。
(2) 新幹線・在来線特急・アーバンネットワークのご利用状況
8月のご利用状況は、新幹線が対前年比102%、在来線特急が101%、アーバンネットワークが99%でした。新幹線はお盆期間のご利用が好調に推移し、前年実績を上回りました。在来線特急は、8月14日の豪雨災害があったものの、お盆期間全体のご利用が好調であったことなどにより前年実績を上回りました。アーバンネットワークは、豪雨などの影響を考えるとほぼ前年並みと言えます。
9月は13日までの実績で、在来線特急が111%となっていますが、これは昨年の台風12号の影響により、和歌山から北陸にかけましてかなりの特急列車が運休したことによる反動の増が理由です。
対象期間 | 新幹線 | 在来線特急 | アーバンネットワーク |
---|---|---|---|
8月 | 102% | 101% | 99% |
9月(13日まで) | 99% | 111% | 106% |
※注釈 9月の数値は速報値です。
2 「津波避難誘導心得」の制定について
昨年の東日本大震災では多数の尊い命が失われましたが、その一方でJR東日本の社員などの臨機応変な対応もあり多くの命が救われました。そのような教訓を生かして、当社でも新たに「津波避難誘導心得」を制定しました。
教訓としまして、まず、津波情報の把握や避難の判断がありますが、強い揺れや長い揺れがあった場合に、常に津波の発生を想定しなければなりません。情報が得られればいいのですが、情報を待っているだけでは時間の経過で逃げ遅れる恐れがありますので、社員自身で避難についての判断をしなければならない、すなわち避難についての判断を社員に委ねるというのが一つ目の教訓です。
次に、避難場所につきまして、指定避難場所であっても津波襲来の可能性がありますので、時間のある限り、より高所へ避難することが二つ目の教訓です。昨年の東日本大震災でもお客様の避難誘導後、一旦列車に戻ったJR東日本社員が、結果的には助かりましたが、こ線橋に取り残され津波が来たという事例もあることから、津波警報解除までは避難を継続することを徹底したいと思います。
三番目としまして、地域の方々のご協力が欠かせないということです。特に地元について理解し地理に詳しい方のご意見は重要な情報ですので、避難の際の参考にしたいと考えています。また、津波到達までの時間との戦いであることから、お客様の早期の降車に向け、お客様にご協力をお願いしたいと考えています。
こうした教訓をふまえて、社員に期待する考動として、避難までの時間が少ない、情報が入らない状況で、情報を待っていれば逃げ遅れる恐れがありますので、社員自身で避難を判断してよいこととします。自主的な判断ができるよう、社員に教育・訓練をしっかりと行います。そして、社員が自主的に判断し避難した場合の結果につきましては、会社が責任を負うことを明確にいたします。次に、お客様の避難誘導につきましては、お客様と一緒に社員も速やかに避難することとします。
以上を踏まえ、今年8月に「津波避難誘導心得」を制定いたしました。
(津波避難誘導心得)
1 大地震が発生した場合には、津波を想起して自ら情報収集に努め、他との連絡がとれない場合、時間がない場合は、自ら避難を判断する。
2 避難を判断した場合は、お客様へ避難を呼びかけ、速やかに避難誘導する。
3 降車や避難、情報収集にあたっては、お客様や地域の方々からの協力を求める。
4 お客様とともに社員も速やかに避難し、避難後もより高所へ逃げ、津波警報が解除されるまで現地・現車へ戻らない。
すでに和歌山支社では、8月末に現場に通達し、周知をはじめておりますが、全社的には他の支社も含めまして11月までに周知・教育をしていきたいと考えております。
その他に、当社は紀勢線エリアにおいて、津波対策として「津波避難標の整備」や「GPS運転士支援装置に浸水区域内在線警報機能の追加」などのハード対策を行ってきたところですが、「東海・東南海・南海地震」など大規模震災を想定し、津波への対策をさらに進めてまいりたいと考えております。
また、和歌山支社におきましては、平成20年度より津波避難訓練を継続的に実施しております。特に田辺地区や串本地区の多くの社員が参加して訓練を実施しております。
3 西日本旅客鉄道株式会社、スペイン国鉄(Renfe)、スペイン鉄道インフラ管理機構(Adif)による3社間連携協定の締結について
当社とスペイン国鉄との連携協定についてですが、スペイン国鉄は2005年に上下分離をしておりまして、運行管理を担う会社とインフラを担うインフラ管理機構がございますが、これらの会社と3社の連携協定を締結いたします。
スペイン自体は、世界で第3位、ヨーロッパで第1位の高速鉄道網を誇る国です。現在、2,056キロメートルの高速鉄道網を有しており、第2位の日本が2,664キロメートル、第1位は中国で4,576キロメートルなのですが、スペイン国鉄には、この高速鉄道網を10,000キロメートルくらいに伸ばしたいという計画があり、このペースでいくと日本を抜いて世界第2位になるであろうと言われています。また、フリーゲージトレインにつきましては、すでに40年前から運行しており、技術を有しています。趣旨としましては、ビジネスよりも交際交流として、双方の高速鉄道の技術を相互交流の中で高めていくことによりまして、安全性やサービスなどの向上を考えていきたいと思います。
スペイン国鉄は、電車タイプ、機関車タイプ、非電化区間に対応したディーゼルによる機関車タイプと3種類の高速鉄道を有しており、非常に多様な形式の高速鉄道を有する国です。顧客満足度の向上や技術力の向上、あるいはそれらを支える人材の育成など幅広い範囲においてお互い連携していきたいとの思いで話がまとまり、協定の締結を9月24日にスペインで行うこととなりました。
また、協定締結調印式を記念して、ロゴマークを作成しました。当社を代表する車両であるN700系‐7000番代とタルゴ社とボンバルディア社が共同開発した112系の列車を描いています。
スペインの漢字略字は「西」と書きます。同じ「西」としてご縁があるのではないかと思います。また、今回の連携により、高速鉄道あるいはフリーゲージトレインについて、一層進展があるものと期待しています。