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広島駅を“語る” Vol.02 コミュニケーションを大切に、一丸となって取り組む現場

  • 株式会社大林組 広島支店 山本 茂範さん
    広島駅南口ビルJV工事事務所 所長

目次

1日900人近くが関わる大規模な工事を、安全確保を第一にマネジメント

まずは広島駅ビル開発プロジェクトにどう関わられているのか教えてください。

山本:大林組として主に、JR西日本グループである広成建設様とのJV(共同企業体)で、広島駅ビルの建て替え工事と駐車場の整備、駅設備のリニューアルなどを手がけています。そのなかで私は「広島駅南口ビルJV工事事務所」の所長として、安全や品質、工程や原価などの管理を統括しています。

1日にどれぐらいの方が工事に携わられているんですか。

山本:ここ最近ですと850人。夜間を入れたら900人ぐらいです。2024年2月末現在で270万時間程度なので、1日1人8時間で換算すると、延べ34万人近くが携わっている計算になります。当JVからも設計で約20人、施工で80人ぐらいが日々工事に携わっています。

そんなにも多くの方々が工事に関わっているんですね!

山本:駅ビルの工事と連携して、広島電鉄様の延伸や南口広場、ペデストリアンデッキ(高架型歩道)などの工事もあります。そちらは主として大林組・広成建設・広電建設のJVが手がけられていますが、当JVとしても施工範囲以外でも可能な限り協力させてもらっている状況です。

やはり相当な規模ですね…。

山本:工期や規模、多様性や難易度を考えると、現在、中国地方で施工されている工事としては最大級のプロジェクトだと思います。広島の玄関口であるJR広島駅、路面電車、バス、タクシーが集結する交通の拠点となる建物であることに加え、ホテルやショッピングモール、シネマコンプレックスなどが併設される複合施設になります。それだけに周りの皆さんからの期待や注目度も高いため、安全で安心して使える建物をつくらなければいけません。

スローガンは、「チーム全員の力を結集し、未来に誇れる広島駅をつくる」

地域への影響も大きなプロジェクトですしね。

山本:所長に着任したのが2022年4月だったんですが、駅ビルの建替工事などに関しては引き継ぎ後、現場の運営方針を設定しました。スローガンは、「チーム全員の力を結集し、未来に誇れる広島駅をつくる」です。私自身、いろいろな想いがあってこの現場へ来たので、みんなに伝えておきたいなと思っています。

着任されたのは駅ビルの工事がスタートしてから約2年後ですよね。「チーム全員の力を結集させる」という部分には、どんな想いが込められているのでしょう。

山本:コロナ禍でもありましたし、2年前はまだ形もそう見えていなかったので、全員が少しずつ不安を抱えているように感じたんです。まだまだ先が長く未決定事項も多くあり、課題が山積の状態でした。この難工事を無事に完成させるためには、プロジェクトに携わるすべての人が一丸となって取り組む必要があります。その為、建物の重要性をみんなで共有し、厳しい状況でもコミュニケーションを図ることで、明るく元気で活気のある現場にしてほしいと考えたんです。

確かに、竣工まで残り3年だと考えると、不安も覚えそうです…。

山本:何かあっても一人で悩まず、プロジェクトに携わる全員で解決していくぐらいの気持ちに変えてもらえたらなと思います。また現場の一人ひとりが自分の役割をちゃんと認識して、当事者意識と責任感をもって最善を尽くすことが重要です。安全管理、品質管理、工程管理、原価管理の面でそれぞれ方針を立てて進めています。

規模が大きい分、そういう指針も大事になってくるわけですね。

山本:JRの営業線に近接するエリアで、延べ12万u、高さ100mにおよぶ大規模な工事ですので、駅の機能に支障を与えることなく進めなければなりません。作業員の安全確保はもちろん、駅の設備を損傷したり輸送に影響を与えたりしないよう、駅を利用される方や周辺の方の安全確保を最優先するようにと掲げました。整備された南北自由通路を使って、駅を通過される方も結構いらっしゃいますしね。

人の流れを途絶えさせず駅の機能を保ったまま工事を進めるとなると何かと制限が増えそうですね。安全確保もより難しくなりそうです。

山本:工程管理の面でも非常に難易度の高い工事です。路面電車が乗り入れる2階部分の工事でも、お客様の通路を閉鎖するわけにはいきません。なるべく幅員を広く取りつつ、工事の進捗に合わせて何度も通路の切り替えを行う必要があったので、施工の4カ月ほど前から協議を重ね、計画を進めてきました。

通路の幅を広めに取るとその分工事のエリアが狭くなってしまいますもんね。できるだけいつも通りご利用いただくのが第一となると、慎重かつ迅速な作業がカギになるわけですね。

建物自体をつくるのは、やっぱり「人」。機械がつくっているわけじゃない

工事を手がけるにあたり、御社ならではの強みは、どのあたりに感じられますか。

山本:総合的な技術力はもちろんですが、これまでの実績で蓄積してきたデータを現場に生かせるのは強みだと思います。もちろんJVとしてですが、弊社でいえば大阪駅や京都駅の駅ビルも手がけてきましたし、今回のプロジェクトにも大阪駅ビルに携わった社員が参画しています。

「人を大切にする」についてどのようにお考えでしょうか。

山本:建物自体をつくるのは人であり機械がつくっているわけじゃありません。我々もそうですし、手を動かしている職人も人ですので、”関係するすべての人々を大切にする”という思いで仕事をしています。

とても素敵ですね。他社様と連携する事も大事なんですね。

山本:広成建設様はJR沿線の仕事を頻繁に施工されていて心強いです。既存の駅設備の改造や解体など、とくに実務に長けた方々が来てくださっているので、すごく助かっています。

駐車場の工事についてはいかがですか。

山本:新幹線と在来線の間の土地で建設中ですが沿線に位置しており、列車を止めるわけにはいかないのでとても難しいです。線路に重機が倒れたり物が落ちたり何かが飛散したりしたら大変ですから、綿密に協議を重ねて進めています。

一人ひとりが「できない理由を考えるより、できる方法を考える」現場に

プロジェクトを進められるうえで心がけていらっしゃることはなんでしょう。

山本:何事においても「できない理由を考えるより、できる方法を考える」ということです。所員たちにも「そのままでは無理でも、少し条件を変えればできるんじゃないか」という提案をしてもらうよう促しています。そういった「できそうな方法」を一人ひとりの頭の中で考えていてくれれば、現場全体も良くなると思うんです。自分が変わらないと人も変わらないというのは先輩からの受け売りでもあります。一人ひとりが変われば現場が変わり、すべてが変わりますから。

実感された経験があるんですね。「こうすればできる」という方向に頭を切り替えるべきだと。

山本:「できない」というのは簡単です。現状不可能なことでも可能になるよう「もっと考えてみよう」とよく言っています。人それぞれ考え方があるので、「これじゃないとダメだ」と決めつけるのではなく、「もっといい考えがあるかもしれない」と、できるだけ現場の声を聴こうと心がけています。

たくさんの方々と汗水流し、皆さんに喜んでいただく

広島との関わりは長いんですね。

山本:昭和57(1982)年に入社し、少しの間大阪本店で勤務しましたがその後はずっと広島支店です。生まれは熊本で、広島は中学時代の修学旅行で来たぐらいだったんですが、一生懸命仕事をしているうちにどんどん好きになりました。広島で結婚もして自宅も構え、もう縁が切れなくなりました。

地域に関わるようなプロジェクトで、思い出深いものはありますか。

山本:入社後11年目に携わった、広島平和記念資料館の工事がとくに印象深いですね。著名な建築家の丹下健三氏が設計された建物で、昨年のサミットでも各国首脳が見学されていました。ちょうど技術研修に行った直後の現場で、ある程度進行を任されるポジションだったんですが、かなり難しく、先輩にいろいろ訊ねながら進めたことが印象に残っています。平和記念公園にある象徴的な建物ですし、出来上がったときは感動しましたね。

それは素敵ですね。広島駅との関わりは…。

山本:所長に着任する前も広島支店の建築工事部長だったので、駅ビルのプロジェクトに先駆けた、橋上駅舎の工事にも携わっていました。今回、長く関わっている広島で、期待されている現場で仕事がを出来ることが非常にうれしいです。

お仕事のやりがいや魅力って、どういうところに感じられますか。

山本:絵を描いたり音楽をつくったり文章を書いたり、なんらかのモノをつくるのって、喜びと言いますか楽しみと言いますか、感じるところがあるじゃないですか。それの大きいバージョンが建築だと思っています。

ホントにそうですよね!

山本:一人では絶対にできないですね。いろんな人と関わり合いながらつくっていけるというのが魅力です。社内だけでなく協力会社のたくさんの方々と、汗水流して一緒につくり、最終的に皆さんに喜んでいただく。そんな建物を提供することが、我々の使命であると同時に、腕の見せどころなんじゃないかなって思います。大変なことも多いですが、お渡ししたときの達成感も一層増します。

ご利用される方の人数も桁違いですしね。このプロジェクトに対する周囲の方々の反応はいかがですか。

山本:見学や視察にも多くの皆さんに来ていただいているのですが、「楽しみです!!」とか「期待しています!!」など言っていただいています。そのようなお言葉を聴くと、責任の重大さを改めて感じて身が引き締まると同時に、この仕事に携われている誇りも感じます。

工事自体はもう7割以上進んでいるんですよね。完成したらお客様にどんなことを感じていただきたいですか。

山本:駅ビルも駐車場も来年2025年の1月末にお引き渡しし、そこから春のオープンに向けた準備をされると聞いています。利便性が良くなるだけでなく、お店も充実し、映画館も復活します。またホテルの眺望もいいので、満喫していただければと思います。皆さんに喜んでいただける建物をしっかり創っていきますので、楽しみにお待ちください!