2009年度 JR西日本の省エネルギー、CO2削減の取り組み
わが国の京都議定書の達成計画では、運輸部門として鉄道単体のエネルギー効率向上だけでなく、民生部門もCO2を削減することとしています。JR西日本では、地球環境保護の観点から列車運行エネルギーのみならず、列車運行以外の省エネルギーにも取り組んでいます。
JR西日本の省エネルギー、CO2削減の取り組み
列車運行エネルギーの低減
JR西日本では消費エネルギーの約8割を列車運行エネルギーが占めており、これを低減させることが重要でCO2削減にもつながります。新しく導入する車両については、VVVFインバータ制御や回生ブレーキなど高効率型機器を導入した省エネルギー車両としたり、地上設備では、送電設備を見直し送電ロスを低減すると同時に、上下タイき電方式の展開やハイブリッド給電システムといった省エネルギー設備も積極的に導入しているほか、新たな技術開発も行っています。さらにこうしたハード対策だけでなく列車運行を見直し、回送列車の運転本数を削減したり、お客様のご利用にあわせて編成両数を増減したりするなどの取り組みも行っています。

考動エコ:「明石電車区での若手グループの省エネ運転」
地球環境保護の活動が進むなかで、運転士として取り組めることがないかと考え、7名のグループで「ECO運転」の研究を始めました。電車は加速時に多くの電力を消費するため、できるだけ加速時間を短くする運転方法を検討することとしました。まず、消費電力量がモニターに表示される321系車両を活用し、現在の運転方法でどれだけ電力を使っているか調べました。その結果をもとにメンバーで議論し、ECOな運転方法をわかりやすく表した「ECO惰行表」をつくって職場の仲間にも協力を呼びかけ、意見を聞きながら改善を重ねて表を完成しました。
この「ECO惰行表」により、職場内で「ECO運転」の取り組みの輪を広げていきます。

運転方法について皆で議論することで、エコの観点からベストな運転方法がまとまっただけでなく、各自が持つ運転技術の共有や、一人ひとりがより良い運転方法を自ら工夫するきっかけにもなっています。今後は日常生活の中でも「エコ意識」を高め、周りにも広げていきたいと思います。
(写真は、JR西日本 平成20年度運輸関係業務研究本社発表会 最優秀賞受賞の様子)
列車運行エネルギーと省エネルギー車両の導入推移
さまざまな列車運行エネルギーの低減努力によって、平成20年度の車両キロあたりの消費エネルギー(1両を1キロメートル走行させるのに必要なエネルギー)は22.0メガジュールと、当社基準年の平成7年度に比較して11.6%削減しています。
さらに、省エネルギー車両の導入など、列車運行エネルギーの低減に向けた取り組みを進めています。
JR西日本が目標管理として用いている平成7(1995)年度の係数にて算出しています。
省エネ法に基づく新係数では、20.9メガジュールとなり、平成7(1995)年度との単純比較では、16.1%の削減となります。


駅、施設、オフィスなどでの省エネルギー化・CO2削減の取り組み
駅施設などで使用されるエネルギーは列車運行エネルギーに比べれば少ないものの、自動改札機やエレベーターなどで約55億メガジュール消費されています。これらのエネルギーは列車の安全・安定輸送のため、あるいはお客様の利便性向上のために必要不可欠でありますが、施設の充実や駅施設のバリアフリー化にともないエネルギー消費量は増加傾向にあります。エネルギーの低減に向け、使用中の機器について、老朽取り替えなどにあわせて現在の設備規模にあった高効率型の機器に順次替えていくとともに、新たに導入する機器についても省エネルギー化の配慮を行っています。

エスカレーターの省エネルギー運転
インバータ制御を採用したエスカレーターを導入し、人感センサーによりお客様がいない待機時間帯に微速運転を行うことで、無駄な運転を少なくし、消費エネルギーの削減を図っています。

大阪駅のエスカレーター
照明・信号機の高効率化
信号機や照明の高効率化も重要な課題と位置づけています。信号機を電球式からLED(発光ダイオード)式にすることで、乗務員の視認性が向上し、消費電力の観点からも省エネルギー化が図られます。平成20年度末までに全体の信号機の約40%をLED化し、今後も拡大を進めていきます。
事務所やホームなどの照明についても、白熱電球の蛍光灯化や省電力型蛍光灯への交換など高効率な機器への取り替えを進めています。

LED式信号機
考動エコ:「福山駅での電灯のこまめな点消灯」
こまめに電灯を点消灯すれば省エネルギーにもつながるのではないかと考え、平成21年7月から、お客様のご利用状況に応じてホームやコンコースの点消灯時間を決める取り組みを始めました。
具体的には、確実に点消灯を行えるよう電灯スイッチ横にステッカーを貼り、点消灯担当を決めるとともに、マスコットキャラクター付きのステッカーを掲出し、周りの社員、さらにはお客様にも地球環境保護を呼びかけています。
節電を呼びかけるステッカー

照明スイッチと点灯早見表

日頃の会話のなかで自然に参加を呼びかけることで、徐々に周りの理解と協力を得ていきました。また、夜行性で光に敏感なフクロウを節電のマスコットキャラクターに選ぶなど、皆が楽しみながら取り組めるよう工夫もしています。今後はお客様や地域に目を向けた活動にも積極的に取り組んでいきたいです。
考動エコ:「広島電気区での踏切のLED照明化」

踏切やホームの照明を何とか省エネルギー化できないかと考えました。光源には、従来、水銀灯や蛍光灯が主に用いられていますが、近年はLEDなど新しい光源も実用化されつつあります。そこで踏切照明そのものをLED照明化できないか検討したところ、従来の約5分の1の消費電力で必要な明るさを得られることがわかり、LED照明を試行的に採用しました。また、LED照明は寿命も水銀灯の約3倍であり、線路近傍での電球交換作業が減ることから、労働災害防止にも寄与できるものと考えています。

最近、踏切内を照らす従来の照明に加え、人の心を落ち着かせる効果があるとされている青色のLED照明を補助的に設備している箇所があると聞き、それをヒントに、LED照明を主照明として採用できないものかと検討し始めました。LED照明の採用にあたっては上司の理解もあり、新しいものにチャレンジすることができました。今後もさまざまなアイディアを仕事に活かし、より良い設備の維持に努めていきます。