あの風景を探して

石見海浜公園

時が流れても、変わらないものとは?過ぎ去った日々、大切な人への思いを描いた映画。『砂時計』〜島根県大田市・江津市・浜田市〜

ロケーションマップ


世界最大の1年計砂時計「砂暦」がある仁摩サンドミュージアム。ピラミッド型のガラス張りの外観が印象的。原作の漫画、映画でも物語の始まりとして登場する。


縁結びの神として知られる大国主大神を祀る出雲大社。映画では主人公のデートスポットとして登場。

島根の雄大な自然を背景に過去と今を紡いでいくラブストーリー。

 映画『砂時計』は、主人公水瀬杏[みなせあん]の14歳から26歳までの成長と、彼女を取り巻く幼なじみ4人の初恋の行方を描いた物語。原作は、シリーズで700万部を突破した大人気コミックス。2007年のテレビドラマ化の後、2008年に佐藤信介監督の脚本により映画化された。物語の舞台となっているのは、日本海に面し東西に長く延びる海岸線を持つ島根県。力強く、またどこか懐かしい石見[いわみ]地方の風景が全編を通して登場する。スクリーンに映し出される自然美は、心を病んだ母の死を乗り越えて生きるというテーマの奥深さとともに、映画独自の世界へと観る人を誘っている。

 主人公杏が中学時代を過ごす町として登場するのは、のどかな里山の風景が広がる大田市大代町。ここでは、突然の母親の死に孤独感を募らせる杏を同級生の大悟が励ますシーンなどが撮影された。自然のロケーションをいかした石見海浜公園は、杏と大悟がお互いの思いを伝える重要なシーンの撮影場所となっている。また、物語のモチーフであり、世界最大の砂時計がある仁摩[にま]サンドミュージアムや、縁結びの神として名高い出雲大社など、このエリアならではの観光スポットも物語の展開に欠かせないロケ地となっている。山と海の豊かな自然と、歴史、文化の宝庫ともいえる島根の魅力が、映像の中にあふれている。

のどかな里山の風情が郷愁を誘う大代町飯谷地区。山々や棚田の緑に、石州瓦の赤褐色の屋根が映える。

時代に合わせて車両を設定。歳月の流れを新旧の気動車で表すことに。

 映画の撮影にあたって、JR西日本では山陰本線や江津[ごうつ](島根県)と三次[みよし](広島県)とを結ぶ三江[さんこう]線の駅、車内などをロケ場所として提供し、2007年11月、4日間にわたる撮影に協力した。中でも、氷雨降る寒い日に行われた三江線川平[かわひら]駅でのロケは、1日で現在と過去のシーンを同時に撮影することとなり、季節も夏と冬の両方が設定されていた。目まぐるしくセットを変えるスタッフや、半袖姿で演じる俳優の方々の寒さを感じさせない演技など、プロ意識の高さに感嘆する撮影となった。また、ロケには浜田鉄道部社員も付き添い、撮影の安全確保に徹した。

 もちろん、列車も10数年前と現代の時代設定に合わせたふたつの車両が必要となり、キハ28とキハ58という旧国鉄塗色の気動車と、平成に入ってから造られたキハ120系気動車が登場し、時の流れを演出した。キハ28・58は、岡山支社に残っていた車両をロケ地まで回送で運び、車中の撮影にも使用。山陰本線出雲市駅から浜田駅間を臨時列車として往復させ、車窓から差し込む光りの中で、主人公と母親が砂時計をみつめる印象的なシーンなどが撮られた。こうして、映像に収められた駅や列車は、別れや再会の場面を情緒豊かに演出し、過去と現在のリレーションという物語の中で、象徴的な存在となっている。

懐かしいキハ28、キハ58の車両を走行させることによって、映画における「過去」が効果的に演出された。

三江線川平駅は「辻岡駅」という名前で登場。主人公の旅立ちの場面や別れ、再会のシーンなどが撮影された。

Story & Date

監督:
佐藤信介
原作:
芦原妃名子『砂時計』(小学館 ベツコミフラワーコミックス刊)
出演:
松下奈緒、夏帆、井坂俊哉、池松壮亮 ほか
公開:
2008年4月
配給:
東宝

両親の離婚により、東京から母の実家・島根県に引っ越してきた水瀬杏。そこで同い年の大悟や藤、椎香と出会い、少しずつ自分の居場所を見つけていく。そんな中、母が杏を残して自殺してしまう。悲しみに暮れる杏を励ます大悟。やがて杏は父親のいる東京へと戻る。ふたりの間の12年の歳月を追った切ない初恋物語。

映画『砂時計』 DVD好評発売中!
ツイン・エディション 7,140円(税込)
スタンダード・エディション 3,990円(税込)
発売元:小学館 
販売元:TCエンタテインメント(株)
©2008 芦原妃名子/映画「砂時計」
製作委員会

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