阿部  正範(52) あべ まさのり 広島支社 営業課 観光開発推進室 室長

地域と向かい合いながら、新しい旅をつくる

鉄道に生きる

本年7月から9月まで開催予定の広島デスティネーションキャンペーンに向けた先行企画『トワイライトエクスプレスで行くランチクルーズ』。瀬戸内海の美しい景色と豪華列車を体験できるとお客様から好評だ。

お客様のニーズを把握し、新たな観光を創造する

 「今、旅行を考えていらっしゃるお客様のご要望が、以前とは少し変わってきたと感じています。たとえば観光名所を訪れるだけではなくて、そこで知的好奇心を満たしたい、そこをもっと深く知りたいなど、そういった声をよく聞きます」。そう語るのは、広島支社観光開発推進室で責任者を務める阿部正範。

 主な業務は、JR6社と地元自治体、観光事業者などが共同で実施する「デスティネーションキャンペーン」、地域や旅行会社と連携し、首都圏などに中国地方の魅力を発信する「DISCOVER WEST キャンペーン」など、観光キャンペーンに関わる企画の策定とその実施だ。

 阿部は、管轄エリアである広島県、山口県の観光推進につながる観光地の発掘、そして鉄道から目的地までを結ぶ船やタクシーなどの交通機関の充実に取り組んでいる。

「新たな観光を創り出す手法は大きく二つに分けられます。一つはすでにある名所、名物の旅を再構成する。もう一つはこれまでになかったものを一から作り上げていく。この二つです」。従来の旅を再構成する場合も、新規で発掘する場合も、阿部には常に心がけていることがある。

『ランチクルーズ』の到着駅である宮島口駅で、地元観光連盟の方々とお客様をお迎えする。さまざまなイベントを通じてご当地の魅力をPR。

人を知り、ご当地の良さを知り、さらに磨き上げる

「魅力ある観光地を開拓する際には、お客様の受け入れ先が快く『やりましょう!』となるまで、粘り強く対話を続けます。お客様にご当地まで来ていただきたいという熱意はもちろん、受け入れ先も事業としてやっておられる限り、参加していただくメリットや、スケジュール確保などの負担をしていただくこともすべて説明します」。

 観光のお客様が増えること、地域が活性化することに異を唱える人はいない。しかし、受け入れ先をはじめ、行政や観光事業者にもそれぞれに事情がある。阿部は、それぞれの立場で考え、新たな観光を一緒に創り上げていく。

「まず相手の意向をくむ。無理はさせない。そして不安を取り除く。関係者に快く参加してもらわないと、事業として長く続きません」。この仕事はファックスとメールで済む仕事ではなく、関係者と顔を合わせながら一緒に創り上げていくもの。キャンペーンが終わってからも必ず「どうでしたか?」と関係者に反応を聞く。

「受け入れが始まるまでも大事ですが、終わってからの対話もまた大事なのです。関係者の方々とお会いするたび、だんだんと声の調子や言葉が変わってくるのが分かります。仕事がしやすくなりますし、次もまた味方になってくださる」。

観光開発推進室は、さまざまな旅の提案を行っている。

 こうした地道な対話を重ねながら、これまで観光開発に取り組んできた阿部。訪れたお客様はもちろん、同時に地元の方や旅行会社、関係する行政にも喜んでいただく。そんな関係を築くことがこの仕事の喜びだと阿部は言う。

一緒に汗をかくほど、良いものができる

 阿部が観光推進に携わるようになったのは、広島支社営業課に着任してから。入社以来、車掌、指令所、駅と鉄道業務に従事してきた阿部にとって、観光推進は初めての仕事だった。

「当初は社外へ出て、部外の人と協力しながら仕事を進めることに 戸惑いがありました。だから経験の浅い若手の気持ちも分かります。若手には、積極的に現場へ赴き、現地の人や関係者と対話をすることを勧めています。話を聞き、一緒に汗をかくこと。すべてはそこから始まるのです」。

 本年7月からは3カ月にわたって、瀬戸内海の島々や伝統芸能、県内各所にある食やスイーツを体験してもらい、広島の魅力を伝える「広島デスティネーションキャンペーン」が開催される。アクセスの設定や宣伝、PR業務など多忙を極めるが、地元の方と関係が深くなる喜びを、若手社員とも共有したいと阿部。

企画の変更点を若手社員と共有。「女性の視点を大切にしたい」と阿部。

「私たちが地元の方や関係者と一緒に汗をかいた分だけ、魅力的な観光をご提供できる。これからも若手と一緒に頑張っていきます」。

 旅の感動を求めるお客様のために、阿部の挑戦に終わりはない。

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