Blue Signal
September 2009 vol.126 
特集
原風景を行く
出会いの旅
うたびとの歳時記
鉄道に生きる
美味礼讃
原風景を行く 赤穂線
播州と備前を結び、瀬戸内の陽光を浴びて走る 赤穂線の旅は、山あり川あり、そして瀬戸の海が見える。 降り注ぐ陽光を伴って訪ねる沿線の駅々には、 赤穂浪士や備前焼など、個性的な歴史と文化を 今も色濃く残す町がある。 
車窓に広がる穏やかな瀬戸の海と美しい島々
 赤穂線は、兵庫県相生市の相生駅から岡山市の東岡山駅までを、瀬戸内海に沿って走る。全19駅、57.4kmの沿線には見どころが少なくない。 

 相生駅から、約10分で播州赤穂駅だ。忠臣蔵で有名な赤穂浪士の故郷。駅前には大石内蔵助の像が建ち、駅前から5分も歩けば赤穂城跡だ。大石内蔵助が住んだ家老屋敷や四十七士の立像が並んだ大石神社は観光の名所であり、赤穂浪士にまつわる史跡は町のあちこちに残っている。

 赤穂線は瀬戸内海沿いに走るが、海沿いの風景に出会える数少ないスポットは日生駅である。駅前がすぐに港で、日生諸島へと渡るフェリー乗り場があり、波静かな湾内には名産のカキの筏が点在している。小豆島も見える「みなとのみえる丘公園」に登れば、無数の島々と複雑な入り江が織りなす多島美に、思わず感嘆の声が口をついて出る。
 
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千種川を渡る列車(西相生〜坂越間)。赤穂線の車窓からは瀬戸内のさまざまな風景が楽しめる。
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赤穂駅から歩いて5分ほどの距離にある赤穂城跡。
 
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赤穂は忠臣蔵ゆかりの地。大石内蔵助の屋敷跡にある大石神社。
 
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日生の「みなとのみえる丘公園」から、瀬戸内に浮かぶ島々を望む。
 
 日生駅を出ると列車はすぐにトンネルに入り、海岸線から離れて走る。やがて、レンガの煙突のある町並みが目に入ってくる。備前焼の故郷、伊部駅だ。備前焼は別名、伊部焼ともいい、千年以上の歴史をもつ。駅からすぐ近くの通りには、陶工たちの窯や、備前焼の店が細い道を挟んでずらりと軒を並べている。店頭に並ぶ茶器や花器などの作品を眺めるだけで楽しい。

 長船駅は中世の刀の故郷である。「備前長船」「福岡一文字」といえば伝統の名刀だ。長船には名刀を展示した「備前長船刀剣博物館」があり、実際に刀の鍛錬も継承している。

 緑の田園地帯を走りぬけた列車が吉井川の鉄橋を渡れば、西大寺駅だ。吉井川の川畔に堂塔伽藍がそびえる西大寺(観音院)は、1200余年の歴史を有する古刹で、例年2月に行われる会陽、裸祭りは全国的にも有名だ。西大寺駅を出てほどなくすると東岡山駅で、列車はそのまま岡山駅まで乗り入れている。

 赤穂線沿線の車窓は山あり川ありと変化に富み、それぞれ歴史を秘めた町並みが魅力である。 
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伊部の町を歩けば備前焼の店が軒を連ねる。
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長船にある「備前長船刀剣博物館」。
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福岡一文字派の太刀「吉房」。
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西大寺観音院本堂と三重塔。宝木(しんぎ)を奪い合う会陽は、 陽春を迎える吉兆行事として知られる。
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