Blue Signal
July 2009 vol.125 
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鉄道に生きる
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鉄道に生きる【野村 晴夫[のむら はるお](54) 岡山支社 岡山機械区 区長】
自動改札機、昇降機、熱源機器など
主要な機械設備を日々支え続ける
技術者を訪ねた。
機械設備を管理・保守し、安全で確かな稼働を支える
約2,700台の機械設備を保守
 岡山機械区では、岡山支社管内に設置されている自動改札機や自動券売機をはじめ、エレべータやエスカレータ、空調機器、さらには防犯カメラや車両を洗浄する洗浄機まで多岐にわたる機械設備の新設やメンテナンスを行っている。

 現在、岡山機械区が担う設備機械は約2,700台にのぼり、それらの設備が正しく動作しているかを日々確認し、もし不具合があれば対応の指揮を執るのが野村の主な業務だ。

 岡山機械区にある設備の動作状況やメンテナンス履歴は、『TOMAS(トーマス)』と呼ばれるコンピュータシステムで一元管理されている。毎日更新されるそれらのデータを分析、検証することによって、不具合が発生するのを未然に防ぐという重要な仕事である。コンピュータによる管理やデータの分析であれば、誰が行ってもそこに優劣の差はないと思われそうだが、実はそうではないと野村は言う。

 「技術者として自ら機械を分解したり、油まみれになって修理をやってきた経験、現場で設備に触れてきた経験を積むほど、データや数値を深く読むことができます。また、外からは見えない設備内部の不具合も分かるようになります」。

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設備管理システム「TOMAS」で、前日に行われた検修履歴を細かく確認する。
 
技術者の視点と、利用者の視点にこだわる
 野村が入社したのは昭和50年、以来34年間、一貫して機械設備に携わってきた。機械設備は自動改札機などお客様が利用する機器だけでなく、車両への給油設備、ボイラーまで多種多様。そのため、ボイラー技士や整備士など専門の資格も取得し、技術の向上に努めてきた。経験のなかで、野村が学び、業務の上で一番大事にしていることは「これなら大丈夫という確信を持って業務を終える」ことだという。

 「例えば自分の家ではみんな家財を大事にしていると思います。そんな自分の家の持ち物を検査する、清掃する気持ちで設備に接してきました。新設工事があれば、新築の竣工物件を自分が施主で受け取るなら、本当にこの状態で受け取れるかどうか?ニーズが満たされ、出来映えもいいと責任が持てる、そういう仕事にこだわっていきたいと思っています」。野村が尊重する確信とは、技術者としての視点と、利用者の視点によって裏付けされている。
基本こそが大切。そして、チャレンジすること
 現在岡山機械区では、新幹線のチケットレスサービス「EX-ICサービス」に伴う機械の新設を進めている。技術の進化に伴い、次々と新しい技術が導入されるなかにあって、野村は「やはり基本が大事」だという。例えば工具の正しい使い方をはじめ、各種機器の使用方法を的確に理解すること、そして検査すべきポイントを知ること、さらに整備基準値を知った上で調整することなど。また現場においても、若手技術者との会話のなかで「そこはどのように検査したのか?その時の計測値はどうだったか」と検査の基本が身に付くよう日々の会話にも心を配っている。

 「若いということは固定観念にとらわれないという財産を持っています。若手技術者たちには今やっている仕事に対し、『何故この作業をしているのか』という疑問を持って、こんな風に改善できるのでは?とかいろいろな意見を出してチャレンジしてほしいですね。やる前に結果を想定するのではなく、やってみないと分からないこともたくさんあります」。

 これまで34年にわたって“確信と挑戦”を胸に歩んできた技術者は、次の世代の技術者たちにもその精神を伝えていく。

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訓練センターに設置された自動改札機の実機を使い、若手技術者を指導する。
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訓練センターでの券売機のトラブル復帰の指導。現場を想定して的確に指導する。
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ドアの安全装置を確認。同時にカゴとフロアの段差、ベルトやワイヤー類のチェックを行う。
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エスカレータの手すり、スカートガード、ステップの隙間などをチェック。
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