Blue Signal
May 2009 vol.124 
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鉄道に生きる【三宅  忠[みやけ ただし](51) 新大阪総合指令所 システム 主査】
安全・安定輸送を支える
その要となる指令所のシステムを
構築し続けてきたパイオニアを訪ねた。
日々の運行を司るシステムを築き、守り、進化させる
最新の運行管理システムの開発に従事
 新大阪総合指令所では、運行管理システムなどのコンピュータシステムにより、列車運行に関するあらゆる情報を管理・制御している。三宅は、列車の安全・安定輸送を支えるため、これら運行管理システムの開発とその機能向上に力を注ぐエンジニアである。

 1982年、三宅は国鉄に入り、電気部門で信号通信の保守などの業務を担当。5年後、東海道・山陽新幹線の運行管理システム「コムトラック(COMTRAC)」の更新工事に携わることになる。当時、東海道・山陽新幹線では新尾道駅や東広島駅など5つの新駅開業にともない、「コムトラック」の更新工事を行う必要があった。さらに、この工事にあわせて新たな機能追加および信頼度向上も同時に実施された。三宅は世界最速の新幹線の安全を支えるため、自身の知識と最新の技術を駆使し、システムの高度化を成し遂げた。
見えないからこそ、確実性に万全を期す
 1994年以降は、コムトラックのシステム開発で培った知識、技能を活かし、北陸線のCTC化、JR京都・神戸線をはじめ、各在来線の運行管理システムの導入プロジェクトに数多く参画し、システムを構築する際の指令員からの高度なニーズを実現する時にも、三宅の知識と経験が遺憾なく発揮されている。

 「私たちが手掛けるシステムという代物は、列車や線路と違い、基本的に外から見えないものです。見えないからこそ、正しく動作するかどうか、その確実性を実際に確認することが重要です」。
 システムの動作チェックは、列車の往来が少ない夜間に行われることが多く、文字通り昼夜を分かたない仕事である。

 「列車が時間通り、スムーズに運行しているのを見るのが何よりうれしい」と三宅は言う。まさに「当たり前」を陰の努力で支え続けてきたプロフェッショナルの言葉だ。
細部にとらわれない広い視野が必要
 現在、新大阪総合指令所では、大阪環状線や大和路線、JR宝塚線、JR東西線、学研都市線などへの運行管理システムの導入が真近に迫っているほか、さまざまな線区でシステムの拡大や取り替えが進められている。システムの工事を担当している三宅の役割は、技術継承という観点からも重要である。

 「20数年前、上司から『システムの細部ばかりを見てはいけない。広い視野で全体を見ろ』と言われました。今もその言葉は常に頭にあります。列車というものは実に多くの係員が正しく連携してはじめて安全に動くものなのです。システム開発も当然その連携の輪の中にいます。だからこそ、局所的な視点ではなく、広い視野を持って自らの仕事にかからないといけないのです」。

 “木を見て森を見ず”ーー ともすれば技術者が陥りやすい間違いを自ら戒め、またその姿を見せることで三宅は後進の育成を図っている。「コンピュータ化といっても最後は人が扱うものなので、できる限り人の誤扱いを防ぐことが肝心です。もっと人に優しいマンマシン・インターフェース(man-machine interface)の開発、それが私にとって永遠の課題です」。「いつも物事を一緒に考えてくれる」と評される寡黙ながらも後輩からの信頼が厚いリーダーには、すでに次のシステム構築への道が見えているようだ。

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システムグループ。アーバンネットワークの運行管理システムを日々支えている。
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高度なシステム開発と改修作業では、三宅の知識と経験がいかんなく発揮される。
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新大阪総合指令所。京阪神を中心としたエリアを輸送や施設、電気など各系統の専門指令員が24時間体制で守っている。
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運行管理のシステムをチェック。問題があった際には、ログ(記録)を解析して、その原因を究明する。
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指令システムの心臓部である機器室で、データ変更等の手順を若手に指導する。
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