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居石は、JR西日本のグループ会社として軌道整備を担う(株)レールテックに出向し、軌道保守の匠として活躍する。
「新幹線の軌道整備は、新幹線の軌道を点検するドクターイエローという検査車を約10日に一度走らせ、その検査データを基にレールの狂いを整正します」と居石。
レールのタテ方向、ヨコ方向のゆがみ具合などを検測しながら走行する検査車からのデータを基に、マルチプルタイタンパー(マルタイ)と呼ばれる高性能保守用車などを使い、ミリ単位で軌道整備を行う。かつて、新幹線の乗り心地を左右する軌道整備を高い精度で仕上げるには多大な労力を要していたが、機械化により効率よく高精度な軌道整備作業が実現できる。居石は、機械化によるメリットをさらに高めるためのさまざまな創意工夫を行ってきた。中でも、飛躍的な成果を生み出したものが「スラブライナー」という独自の保守用車の開発だ。
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レールの下にバラスト(砂利や砕石)を敷き詰めた軌道を整備するために開発されたマルタイは、鉄筋コンクリートで構成されたスラブ軌道には対応していなかった。
「スラブ軌道はバラスト軌道と比べ軌道の狂いが発生しにくいというのが、点検や保守面での利点です。ところが、マルタイを使えないため、整備が必要な場合には結局多くの人手を要してしまっていました。そこで、なんとかスラブ軌道でマルタイを使えないだろうかと考えたのです」それまでの常識を覆す居石の考えは、すぐには理解されなかった。しかしやがて、「やってみろ」と開発にGOサインが出された。スラブ軌道の構造を現場で一つひとつ確かめることから始め、必要な部品は手作りするなど、同僚や機械製作の協力会社などの力を得て、2004年スラブ軌道用に改良されスラブライナーと名付けられた新しい保守用車の運用が開始された。シンプルな構造で、わずかの訓練で誰にでも操作できることも大きなメリットだったという。
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「線路保守は、現場のようすを正確に知ることが大切です。図面を見て想定していたことが、実際に現場に行くと違っていたりするなど、一筋縄ではいきません。机上で考えるのではなく、現場に出て自分の体で軌道の状態をつかみ取り、問題点を発見し解決する。安全を守るためには、こういった姿勢が大切であり、後継者たちにも伝えていきたいと思っています。課題が難しければ難しいほど達成できた喜びは大きいですよ」と居石。常に大きな目標を自身に課し、チャレンジし続けている。
「最終的な目標は、やはりお客様の安全と乗り心地です。そのために軌道整備の精度をさらに上げるとともに、作業効率を高めていく必要があります。これからも、いろいろな技術を応用し、質的にも量的にも軌道保守のレベルを高めたいと考えています。より高い精度で軌道整備を行い、保守する。そこに終点はありません」軌道整備の匠には、「これで満足」という言葉はない。
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スラブライナーの運転台。開発だけでなく機械の点検や修繕も自らの手で行う。 |
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若手にスラブライナーの取り扱いを指導。後継者育成も居石の大切な業務。 |
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マルタイを改良して完成したスラブライナー。 |
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