
「さえらのてっぽう」は和歌山県南部の紀南地方に伝わるさんまの寿司で、「ハレ」の日のごちそうとして昔から作られた郷土料理だ。「さえら」は、和歌山弁で「さんま」を意味する。また、硬く握った酢飯の上に乗るさんま寿司の姿が鉄砲の筒のように見えたことからその名で呼ばれるようになったという。
さんまは10月下旬から3月にかけて産卵のため、三陸沖から寒流に乗って南下する。熊野灘で水揚げされたさんまは潮にもまれたことで身がしまり、脂分が少なく、寿司に適していた。かつては保存食として作られ、現在は秋祭りや正月などの各行事に家庭でふるまわれる。
さんまの開き方は潮岬を境に西は「腹開き」、東は「背開き」と、さばき方に違いはあるものの、しょうゆは使わずそのままいただく。新宮市出身の作家 佐藤春夫も好んで食べた郷土料理だ。
【作り方】
- 1. さんまの頭を落とさずに開き、内臓を取り出す。その後、水で洗い、塩をふり5〜6時間ねかせる。
- 2. ねかせたさんまを酢で洗い、腹骨と小骨を取り除く。開いた方を上にしてバットに並べ、合わせ酢(ゆずのしぼり汁や酢、砂糖、塩)をかけた後に裏返し、1時間ほど漬ける。
- 3. さきほどの合わせ酢をごはんに混ぜ、すし飯を作り、棒状ににぎる。
- 4. 1時間漬けたさんまの汁気をペーパータオルで拭き、ふきんの上に広げる。その上に酢めしを乗せ、全体をふきんで包む。そのままにぎり、空気を抜くように形を整えながら食べやすい大きさに切り分ければ完成。
- (撮影協力:徐福寿司)