
1966年生まれ、京都市出身。俳優。株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ所属。1988年NHK『翼をください』にて本格デビュー。テレビ朝日系『超獣戦隊ライブマン』を機に、TBS『スクールウォーズ2』、フジテレビ系『ヴァンサンカン・結婚』、日本テレビ『同窓会』など数々の作品に出演。大正製薬「リポビタンD」のテレビCM「ファイト一発!」でも知名度を上げた。近年ではNHK連続テレビ小説『おちょやん』での好演も話題に。特技・趣味はハンドボール、バイクいじり、料理。鉄道好きでも知られ、鉄道関連番組への出演も数多い。
生家が京都・伏見稲荷大社の背後にそびえる稲荷山の中腹にあり、京都駅から南側一帯を見下ろすように一望できる。視界を遮る大きな建物もまだ少なかった子どもの頃は、扇形に広がる梅小路機関区が肉眼ではっきりと見えたものだ。毎日のように梅小路の車庫を眺め、山麓から聞こえてくるピーという汽笛の音を聞いて育った。
中学生になると、まだ国鉄だった頃の奈良線の線路沿いを歩いて通学していた。列車が来たら手を振ったりして。ディーゼル車のコンプレッサーのコッコッコッコッという音はこの頃から耳に慣れ親しんだもので、今でも聞けば楽しくなる。僕の音鉄としての原点だ。
鉄道ファンにもいろいろあるが、僕は機械好きの列車好き。乗るのももちろん好きだが、車両基地を見に行ったり、どんな技術が使われているか、どんなしくみになっているかなどを知ることに、よりいっそう興味をかき立てられる。いまだに列車に乗ると先頭車両に陣取り、運転席の計器をのぞき込んだり、軌道を見て保守作業の状態を自分なりに点検したり、走行音に耳をそばだてたりと、まことにせわしないことこのうえない。
大阪での仕事のために東京から新幹線に乗るときは、決まって左の窓際のA席を取る。米原には鉄道総合技術研究所風洞技術センターがあり、新幹線500系の試作車両だった「WIN350」が静態保存されている。米原駅を通過するとすぐに左手に、WIN350はじめ試作車両が3台、先端をこちらに向けて並んでいるさまを、一瞬見ることができるのだ。万に一つでも見逃すことのないように、あらかじめ調べておいた米原駅通過時刻から逆算してタイマーをかけるという念の入れ用で臨むのが常だ。
新幹線の中では500系のデザインが最高だと思っている。先頭車両先端の鋭く流れるような形状もいいが、すべての扉がプラグドアになっていて、車両本体とのあいだに全く段差がない造りであるところがたまらない。デザイナーはドイツのアレクサンダー・ノイマイスターという人。時速350kmという高速性能をとことん追求して生まれた美しいかたちといえ、その原型がWIN350なのだ。
米原でWIN350の雄姿を無事に拝んだあとは、京都駅を列車が出発すれば右側の席の車窓へと視線を移すのがここ5年ほどの新しい習慣になっている。次のお目当ては、ほどなく右側に見えてくる京都鉄道博物館だ。3階のスカイテラスは新幹線やJR京都線を走る列車を間近に見ることができるオープンエアーの展望デッキ。本来ならば向こうからこちらを眺める場所なのだが…。
京都鉄道博物館がオープンしたのは2016年4月29日。その前日に行われた開業記念のセレモニーに、僕は思いがけずゲストとして招待されるという栄に浴した。
幼い頃から親しんできた梅小路蒸気機関車館が新しい鉄道博物館に引き継がれるということをニュースで知ったときは、本当に心からうれしかった。しかしまさか、鉄道ファンの著名人があまたいる中で、記念すべきセレモニーに自分がゲストとして招かれるなどとは夢にも思っていなかったのだ。あの日の感激を、どんな言葉で表したらいいのか。テープカットの瞬間は感無量で、今、思い出しても心が高鳴るほどだ。
というわけで、以来、京都を列車で通過するときは、車窓から京都鉄道博物館を眺めている。するとあの日の幸せな経験と感動が鮮やかによみがえり、しばし感慨にふけるのだ。