鉄道に生きる

久保 名花 JR西日本カスタマーリレーションズ 神戸事業部 案内部 オペレーター

お客様の思いに寄り添い、一期一会の応対に心を尽くす

お問い合わせ内容に応じてキーワード検索で必要な情報を取り出し、電話の向こうのお客様にご満足いただける情報を迅速に提供する。

 列車の時刻や運賃をはじめ、運行情報、特急の空席状況など、JR西日本の管内全域からのお問い合わせに対応する「JR西日本お客様センター」。オペレーター業務を担う久保は、JR西日本とお客様を繋ぐ最前線で電話の向こうの声に応える。

学びと実践を糧にスキルを磨く

『駅営業の手びき』や『時刻表』はオペレーターの必携資料。回答の正確さやご案内の品質を支える。

 お客様センターの運営は、グループ会社の(株)JR西日本カスタマーリレーションズが担っている。久保は、2016年5月に入社。販売員など接客業の経験があり、お客様とのコミュニケーションに魅力を感じていたのがきっかけという。ただし、非対面の窓口業務は初めての経験。「直接顔を見ながらの接客は、ご年齢や表情などの情報がたくさんあり、ご用件も想像がつきます。ここでは、声だけが頼り。当初は、どのような応対をすればご満足いただけるのか、話のテンポや説明の仕方などを模索する毎日でした」。

 入社時には鉄道会社としての制度やコールセンターにおける応対の基礎を学び、さらに「お電話ありがとうございます」の第一声から始まるオペレーター業務の流れを職場内教育で習得する。通話中、横に付く先輩からアドバイスを受けることができた研修期間を経て、独り立ちへ。初めは緊張の連続で、ミスがないようにと焦るあまり早口になったり、業務知識の不足を痛感したそうだ。久保は、社内の通信教育などを活用して足りない知識の補完に努め、1件1件の受電を学びの材料に実践を積んだ。まだ経験は3年にも満たないが、2018年の上期は8,000件以上のお問い合わせに対応し、誤案内・応対不良の発生ゼロという実績を誇るオペレーターに成長した。

お客様の視点で満足を追求する

「自分も原点に返ることができる」という職場内研修。モニタリングしながら新人の実践をフォローする。

 久保の1日の受電件数は入社当時の約50件から、現在は80〜100件にのぼる。心がけているのは、「会話がスタートした時点で、ご年齢やお問い合わせの背景、お急ぎでいらっしゃるかなど、想像力を駆使して見えないお客様の情報をつかむこと」という。電話口で何を求めておられるのかを瞬時に判断し、声のトーンを切り替え、ご案内の内容を随時付加するなど、一人ひとりの心に寄り添う接客を信条とする。

 大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号と、JR西日本管内が大規模な自然災害に見舞われた昨夏。久保は、輸送障害によって受電件数が倍増する中で、お客様に寄り添うことの意味を深く胸に刻むことになる。西日本豪雨では、広島や岡山を中心に、被災地沿線のお客様から運転再開の見通しや代行バスと動いている区間の電車との連携といった切実なお問い合わせが相次いだ。久保は、日々更新される情報をもとに、最新の情報をできるだけ多くお伝えできるように努めたという。「ただ、当時の状況ではお客様のお困りごとを解決するまでには至らず、通り一遍の受け答えに終始する場面もありました」と、振り返る。

 同じ頃、ご高齢の男性から「特急やくもに乗車して出雲大社まで行きたい」というお問い合わせを受けた。あいにく、特急やくもが走行する伯備線は土砂流入により運休していたが、電話口からは“人生最後の旅行”という言葉を聞かされた。そこで、久保は代行バスを使った迂回経路など、最大限のアクセス方法を考えて応対。「やくもには乗れないが、出雲大社まで行けそうだ。本当にありがとう」と、感謝の言葉をいただいた。「お話をよく聞き、お客様にとって満足のいくサポートをする。その大切さを再確認できました」。

「ありがとう」の言葉をチームの誇りに

お身体の不自由なお客様のサポートダイヤルの受付も担当。介助の申し込みがあればSVヘ報告し、駅との連携を図る。

 お客様からの「ありがとう」という一言。その言葉ほど、自身を励ましてくれるものはないと久保は話す。そして、その言葉を引き出すことができるのは、全員が一つになってお客様に向き合っているからとチームの力を誇りにする。ご案内に使用する資料やツールを常に見やすく更新してくれる部門、また応対時に手を上げればすぐにフォローに駆けつけてくれるASV※1やSV※2の先輩たち。「案内業務をしている時は私とお客様1対1であっても、背後には私をサポートしてくれる心強い存在がある。おかげで、安心して電話を取ることができるのです」。

 現在、久保は「駅業務実務認定試験」の初級資格を目指して勉強中という。「知識と資料は受電する上での最大の武器」と考え、学びをさらなるお客様満足へと繋げるためだ。「さまざまな場面に柔軟に対応できるプロのオペレーターに」。そんな決意を胸に、久保は今日も電話の向こうのお客様に笑顔で話しかける。

※1.ASV(アシスタントスーパーバイザー)は、主にオペレーターのフォローを担当。 ※2.SV(スーパーバイザー)は、オペレーターとアシスタントスーパーバイザーをフォローし、ご案内窓口の運営管理全体を担う。
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