鉄道に生きる

和田 高明 ((株)JR西日本カスタマーリレーションズ 神戸事業部 スーパーバイザー)

チーム一体の連携プレイでサポートと安心を提供する

「人に関心を持つこと」が、オペレーターにとって大切な資質という和田。
身ぶり手ぶりが通用しない接客の極意を伝えながら、後進の育成に努めている。

お客様と最初に接する部門の誇り

フロアの中央にあるデスク前に立ち、オペレーターの様子などにくまなく目配りする。

 365日、JR西日本をご利用になるお客様からのお問い合わせ、ご要望を受け付ける「JR西日本お客様センター」。神戸のセンターでは、電話は1日およそ3,000件、メールは100件程度が届く。まさにお客様との直接的な接点を受け持つ非対面の窓口だ。現在、センターの運営は、グループ会社の株式会社JR西日本カスタマーリレーションズが担っている。そして、列車の時刻や運賃をはじめ、運行情報や特急の空席案内、また、お忘れ物に関する対応を行っている。

 ヘッドセットを付け、電話の向こうのお客様の声に応えているのは、50名ほどのオペレーター。そのオペレーターたち一人ひとりの様子に細やかな視線を送っているのが、当直長を務める和田である。「当直長は、その日1日のセンターの運営がスムーズに行われるよう、フロア全体を管理する責任者。オペレーターが円滑に業務できるように心を配るのも重要な役割です」という和田は、少しでも困ったそぶりのオペレーターがいれば、即座に駆けつけ、フォローに回る。

 ベテランから新人まで、オペレーターの経験値はさまざまだ。しかし、新人だからといって期待外れの応対をしてしまっては、JR西日本に対する信頼を損ねてしまう。和田は、各オペレーターの通話時間も判断材料にしながら、フォロー体制をつくるのだという。「お客様センターは、チーム力で成り立っているのです」。

次の人へ、情報のバトンを繋ぐ

関連する部署との連携をはかることも、当直長の重要な役割。お客様からお寄せいただく声に、JR西日本グループ全体で応える。

 この“チーム編成”は、センターのメンバーだけに留まらず、エリアごとの指令所や各駅の係員、また走行している列車内の乗務員にまで広がる場合がある。「たとえば、列車内で気分を悪くされたお客様の情報が寄せられた時、私たちは指令所を介して乗務員とやり取りをします。この時、的確にお客様のもとへ乗務員が向かえるように、どの列車の何両目なのかを特定できる情報を聞き出すことが、私たちの重要な役割になります」。

 次に対応する部署へ、その部署が必要としている情報のバトンを渡す。そのためのお客様への聞き取りにこそ、オペレーターの力量が表れるという。「あいまいな情報では、次のランナーが走れません。連携する他の部署が力を発揮するには、必要な情報を確実に手渡すことが何より大切」と、和田は語る。求められるのは、たとえ鉄道の知識がないお客様からでも、手がかりとなる情報を引き出すことができるコミュニケーション力と、それを支える幅広い知識だ。センターでは全員が、駅係員も受ける鉄道の営業に関する試験にチャレンジし、知識の習得にも取り組んでいる。

チームワークで成果を挙げる

担当スタッフに、お忘れ物を検索するシステムの研修を行う和田。お客様の申し出に素早く対応できるよう、常に業務改善を目指している。

「お客様のお困りごとに期待通りの対応ができた時、オペレーターは大きく育つ」というのが、自身もオペレーター業務の経験を持ち、顧客サービスの最前線でキャリアを積んできた和田の信念だ。

 その信念を裏付ける事例がある。東日本大震災発生から数日後、センターに1本の電話が入った。それは、「被災地から京阪神の親戚宅に避難する途中で、通帳や印鑑、証書などが入ったかばんを列車に置き忘れた」というものだった。お客様にとっては不慣れな土地。初めは、列車の行き先もつかめない状態だったが、和田は車両の色、降車時の売店やエスカレーターの位置などを聞き出すよう指示を出し、オペレーターが粘り強く聞き出した情報から列車を推測。指令所・駅と連携をはかり、無事お客様のもとにかばんを戻すことができた。お客様からは、感謝と労いの言葉をいただいたという。「苦労は多かったですが、オペレーターとして、またチームとしての達成感も格別でした」。

 日々の業務の中では、「あの時、こうお話しすれば良かった」と反省することも多い。和田は、そんな反省点をずっと手帳に書き留めている。経験を次に生かし、より高いお客様満足に繋げるためだ。

顔の見えない接客のエキスパートは、これからもお客様の期待に応えるべく心を砕いている。

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