あの風景を探して

“映像化は困難とされた清張の名作を壮大なスケールでドラマ化した話題作。
 テレビ朝日開局50周年記念スペシャルドラマ『点と線』〜大阪市・山口市〜

 博多湾に臨む香椎海岸で発生した心中事件。男は汚職の摘発が進むある省庁の課長補佐、女は料亭の女中であった。東京駅の15番線ホームから発車する、博多行き寝台特急「あさかぜ」に乗り込む2人を見たという証言に作為を感じた博多東署のベテラン刑事は、汚職事件を追う警視庁の刑事とともに、事件時は北海道にいたという目撃者のアリバイを崩していく。13番線ホームにいた目撃者が、問題の15番線ホームを見通せるのはわずか4分間。「空白の4分間」という鉄道ファンをうならせる発想は、旅好きの清張ならではの謎解きといえる。

汚職事件にからむ殺人事件を描き、社会派推理小説を誕生させたベストセラー。

 松本清張は、社会的なテーマを前面に押し出したミステリーを次々に発表し、日本にいわゆる“社会派推理小説”ブームを巻き起こした先駆者である。清張は、小説における犯罪の動機を個人から社会へと広げ、現実の社会問題に対応した物語として幅広い読者に提示した。中でも、官庁汚職を動機にした殺人事件を描いた『点と線』は、ミステリー・シーンを塗り替えた記念すべき名作として評価されている。『点と線』は、1957年から58年にかけて、旅行雑誌『旅』に連載された長編小説。『旅』の読者層を意識してか、九州・東京・北海道という小説の舞台を時刻表を駆使したトリックで結び、旅への憧れの象徴だった寝台特急を登場させるなど、旅情をかきたてる作品に仕上げている。

ロケーションマップ

宮原総合運転所の仮設ホームでは、京都の車両基地から移動させた113系車両などを用い、大勢のエキストラが参加して、当時の東京駅の様子が再現された。

旅情と雑踏が交錯する東京駅を再現。往年の列車とともにドラマの時代背景を演出する。

 本作品では、昭和30年代の東京駅のホームが重要な舞台となる。そのため、従来のような実際の駅や車両を用いての撮影協力とは異なり、JR西日本の車両基地に撮影用の仮設ホームを設置するという、まさに前例のない撮影協力となった。京都総合運転所をはじめ、いくつかの候補地を制作側も交えて検討した結果、厳しい条件を満たし、また監督のイメージにも合う場所として、宮原総合運転所(大阪市)が東京駅再現の場所に選ばれた。構内には、まず作業スタッフの安全を確保するため、ホーム仮設工事が行われる区画を囲うための柵を設置した後、ホームの仮設工事が進められた。

 2カ月がかりで完成したオープンセットを使い、撮影が行われたのは2007年8月1日からの3日間。時代設定に合わせ、EF58や24系客車、113系などの列車を使用し、寝台特急「あさかぜ」や横須賀線車両が再現された。「空白の4分間」の撮影では、ホームを仮設した区画のみならず、車両基地内の営業に使用する線路も支障のない範囲で使用した。もちろん安全対策を徹底するとともに、限られた時間内で最高の映像を収められるよう、JR西日本のあらゆる部門により安全を確保し撮影に臨んだという。さらに、交通科学博物館や山口線でのロケも実施。名作初のドラマ化において、大役を果たすことができた。

大阪市にある交通科学博物館では、刑事二人が急行列車「雲仙」に乗車して上京するというシーンを、展示車両C62形蒸気機関車を使って撮影された。

当時、東京から博多間を17時間30分で結んだ寝台特急「あさかぜ」。撮影にあたっては、ヘッドマークの図面を美術スタッフに渡し、往年の雄姿を忠実に再現した。

茅葺きの民家が点在し、のどかな農村風景が広がる「八塔寺ふるさと村」。映画などのロケ地となることも多く、今回のドラマでは、被害者女性の実家がある秋田県湯沢という設定で撮影された。(岡山県備前市)

Story & Date

原作:
松本清張『点と線』(光文社カッパノベルズ)
制作:
株式会社テレビ朝日
制作協力:
株式会社シネハウス
出演:
ビートたけし、高橋克典、柳葉敏郎、夏川結衣、内山理名 ほか
放送:
2007年11月24日、25日テレビ朝日・ANN系列局
DVD『点と線』発売元:
テレビ朝日
販売元:
ジュネオンエンタテインメント

九州福岡、香椎海岸で、寄り添うように横たわる男女の遺体が発見された。当初、事件は心中として処理されるが、目撃証言などに疑問を持ったベテラン刑事らが、容疑者の一見完璧に近いアリバイを崩していく。本作品では、ベテラン刑事役をビートたけしが熱演。東京駅のホームを宮原総合運転所内に再現しての撮影で、話題を集めた。

  
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