原風景を往く[氷見線<富山県>]高岡駅から氷見駅

富山湾の海上に浮かぶ北アルプスの連山を見に行く

氷見線はわずか16.5kmの路線だが、
他では見られない極上の風景がある。
富山湾に浮かぶ北アルプスの嶺々だ。
その壮大華麗な眺めに思わず息をのむ。
そして、もう一つの旅の楽しみは、
富山湾で獲れたキトキトの味覚である。

高岡市街にある金屋町は江戸初期より続く高岡銅器の生産地。今も風情ある町並みが残る。

雨晴駅近くの「義経岩」。奥州に落ちのびる源義経ら一行が雨が晴れるのを待ったと伝わる岩。雨晴の地名の由来となった。

高岡銅器の「お鈴(りん)」と呼ばれる仏具は、美しい音階を奏でる楽器としても用いられる。高岡駅の発車メロディーもお鈴の音色。写真提供:山口久乗

海沿いの絶景を眺めながら「キトキト王国」へ

 能登半島の東の付け根にある北陸本線の高岡駅。駅前では万葉の大歌人、大伴家持像が出迎えてくれる。高岡は万葉の里として知られるとともに、高岡銅器など金属加工の技が有名で、その発祥の地である金屋町や山町筋の古い町の風情は観光客に人気がある。

  氷見線はこの高岡と富山湾に臨む氷見とを結ぶ。駅は8駅、乗車時間は約30分という短い路線だ。高岡駅を出た列車は、富山湾に注ぐ小矢部川に沿ってのんびりと走る。やがて車窓の左側に見えてくるなだらかな山は、万葉集ゆかりの二上山[ふたがみさん]。

 ほどなくして河口の伏木駅に着く。駅を挟んで二上山側には、蓮如[れんにょ]上人ゆかりの勝興寺があり、京都より移築された唐門をくぐると、境内には仰ぎ見るほど大きな本堂が構える。また、境内は越中国府跡とされ、奈良時代に国守[くにのかみ]としてここで過ごした大伴家持を偲ぶことができる。伏木駅を離れるとすぐに富山湾が広々と広がる。そして運が良ければ、立山や劔岳が連なる北アルプスが文字どおり屏風を立てたように目の前にそびえ立っている絶景に出会う。よく見える季節は春先と晩秋で、雪をまとった北アルプスの眺めは圧倒的で言葉を失うほど美しい。夏でも、空気の澄んだ日なら猛々しい姿を見ることができる。

高岡駅近くにある瑞龍寺は、加賀藩3代藩主前田利常が2代藩主利長の菩提寺として建立した。山門、仏殿、法堂は国宝に指定されている。写真提供:高岡市産業振興部商業観光課

浄土真宗中興の祖・蓮如上人が開いた「土山御坊」に始まる伏木の名刹、勝興寺。広大な境内には、本堂をはじめ重要文化財に指定された12棟の建造物が建ち並ぶ。

 富山湾に出ると海岸線に沿って列車は北上する。遠くに能登半島が突き出ている。雨晴駅は、渚百選にも選ばれた海岸の波打ち際にあり、近くに義経が雨宿りしたと伝わる義経岩がある。“キトキト王国”の氷見はもうすぐそこだ。キトキトは地元で「新鮮な」という意味。氷見といえば寒ブリを代表する富山湾の海産物のブランドとして全国的に有名で、10月には恒例の「氷見キトキトまつり」が氷見漁港で開催される。最近は、海鮮のほかに、氷見うどんや氷見カレー、氷見牛がご当地グルメとして会場で人気を集めているという。

フィッシャーマンズワーフの名物、「スケさん」こと浜井祐雄さん。氷見が好き、魚が大好きなスケさんは、氷見の魚を多くの人に知ってもらいたいためにマイクロバスで全国をキャンペーンに廻ったこともある。

 町を歩くと、「忍者ハットリくん」や「怪物くん」などのキャラクター人形が目を楽しませてくれる。氷見は、漫画家の藤子不二雄Aさんの生まれ故郷で、原画を展示する「潮風ギャラリー」は、氷見の人気スポットの一つだ。氷見線は、景色良し、味覚良し、大人も子ども楽しめる旅だ。

氷見は漫画家・藤子不二雄A氏の生まれ故郷。商店街にある潮風ギャラリーでは原画の展示のほか、人気キャラクターが出迎えてくれる。

ページトップへ戻る
ローカルナビゲーションをとばしてフッターへ