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錦川の鉄橋を渡ると、列車は山麓にさしかかり上りこう配となる。この先は、旧山陽道屈指の難所といわれる欽明路[きんめいじ]峠だ。この峠は「周防なる磐国山を越えむ日は 手向けよくせよ 荒しその道」と、万葉集にも詠まれている。欽明路とは、欽明天皇が御幸の折に一服された縁起を寺号にしたと伝えられる欽明寺に由来するという。 |
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西岩国駅を出発するとすぐに錦川を渡る。
川を越え、川西駅を過ぎると岩徳線は山中に入っていく。(西岩国駅〜川西駅間) |
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その昔、欽明天皇が休息をとったことが寺号の由来といわれる欽明寺。境内には欽明天皇が腰をかけたと伝わる岩が残っている。 |
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列車は3kmにも及ぶ欽明路トンネルを進む。トンネルを出ると、山間とはいえ明るいのどかな田園地帯が広がる。北側には中国山地の小高い山々が壁のように迫り、列車は旧山陽道と絡みあうように進む。周防高森駅は岩徳線のほぼ中間に位置し、旧山陽道の宿場町として栄えた場所であり、米どころ、畜産地としても知られる。町はずれにある高森天満宮は周防三天神の一つだ。高水駅の北6kmほどに位置する周南市八代地区は、特別天然記念物のナベヅルの越冬地である。初冬にはシベリアから海を越え、暖かいこの地で越冬するために渡ってくる。 |
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欽明路トンネルを抜けて欽明路駅へ向かう列車。(柱野駅欽明路駅間) |
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周防高森駅近くにある高森天満宮。防府、柳井と並び周防三天神のひとつとされる。 |
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高水駅の北の山中、周南市の八代地区は本州では唯一のナベヅルの越冬地であり、秋から冬にかけてナベヅルが飛来する。
写真提供:周南市観光政策課 |
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花岡もまた旧山陽道の宿場の名残をとどめる風情のある町だ。藤原鎌足が建立したと伝わる花岡八幡宮には、国の重要文化財である多宝塔がある。内部には大日如来が安置され、仏像を残す数少ない多宝塔として知られる。 |
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周防花岡駅のすぐ北にある花岡八幡宮。境内にある多宝塔は国の重要文化財。花岡は八幡宮の門前町、そして旧山陽道の宿場町として賑わったという。 |
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櫛ケ浜が近づくと、目の前に巨大なコンビナート群が迫ってくる。日本の高度成長を支えたエネルギッシュな風景は工業都市、徳山のシンボルでもある。岩徳線の終点は山陽本線と連絡する櫛ケ浜駅だが、すべての列車は徳山駅まで乗り入れ、コンビナートを車窓に映しながら旅を終える。
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コンビナートが建ち並ぶ徳山港。夜には色とりどりの光が灯り、幻想的な風景をつくる。 |
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