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町のほぼ中央、カバンストリートの背後に神武山というお椀を伏せたような小山がある。山上に豊岡城跡、麓に陣屋址や武家屋敷など、わずかだが藩政時代の名残をとどめている。そして町を歩くと目につくのはコウノトリのポスターや看板だ。

コウノトリは豊岡のシンボルで、市章にも図案化されている。町の対岸、円山川の向こうの里山にある兵庫県立コウノトリの郷公園では、コウノトリの保護と飼育、そして野生への復帰に取り組んでいる。日本から絶滅寸前だったコウノトリを捕獲し、人工飼育をはじめて25年目の1989(平成元)年に待望のヒナが誕生。以来17年の年月を経て、コウノトリが再び大空に羽ばたいた。現在は100羽ほどのコウノトリが生息している。フェンス越しに見るコウノトリは眩いほどに白く、大空に飛翔する姿は優雅で雄々しくさえある。

35年ほど前の豊岡では、人家近くの里山にコウノトリが巣をつくり、空を舞い、水辺や湿地で餌をついばむのは普通に見られた光景だった。コウノトリと人々は自然に共生していたという。円山川の氾濫でできた低湿地帯と里山は恰好の棲み処だったのだ。生息環境という円山川の自然の恵みと、飼育に携わった多くの人びとの情熱がコウノトリの飛翔を甦らせたのである。
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空を舞うコウノトリは豊岡のシンボル。豊岡市民も一体となり、生息地域周辺の環境を整えている。(写真提供:豊岡市) |
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兵庫県立コウノトリの郷公園は、コウノトリの保護と繁殖、野生復帰に取り組む拠点施設。広大な敷地内にある公開ケージでは、コウノトリを間近で観察できる。 |
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神武山のふもと一帯には現在も風情ある町並みが残る。その一角に建つ旧豊岡県庁門(写真左)は、もともと久美浜県庁舎の正門だったが、1871(明治4)年、豊岡県に合併された際に移築されたもの。 |
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円山川をさかのぼると出石川と出会う。そこで足を伸ばしておきたいのが城下町と名物のそばで知られる出石の町だ。『古事記』や『日本書紀』にも記される古い町は、仙石氏7代が治めた出石藩の城下町。名物の出石そばは仙石氏が信州から国替えの折りに伝えたもので、通りには数多くのそば屋が軒を連ねている。時を告げる辰鼓櫓をシンボルとして町全体が歴史的景観で、「小京都」とも呼ばれるように情趣ある町並みだ。豊岡の町、出石の町ともども但馬路の欠かせない見どころだ。 |
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豊岡駅から足を伸ばして、城下町の風情が色濃く残る出石町を訪ねるのもいい。江戸時代に出石藩五万八千石の城下町として栄えた町並みがほぼそのままの姿で現存し、但馬の小京都とも呼ばれる。 |
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