Blue Signal
September 2007 vol.114 
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鉄道に生きる
探訪 鉄道遺産
鉄道に生きる【山田 悟[やまだ さとる](43)株式会社ジェイアール西日本ビルト 金沢支店(出向) 検査主任】
列車や線路、プラットホームはもちろん、駅舎や関連建物など、
各種鉄道施設が一体となって機能してはじめて、鉄道の運行は実現する。
多くのお客様が利用される駅周辺施設や、
線路に近接する建物などの安全を厳しく見守るプロを訪ねた。
建物の安全と機能を守る繊細かつ厳しいまなざし
建築の知識を活かし社会に貢献
建築・設備・土木工事や、工事の企画・測量・設計および監督などを請け負っているJR西日本のグループ会社、(株)ジェイアール西日本ビルトに建物検査の匠がいる。

山田悟は、JR西日本敦賀建築区、金沢建築区で20年以上にわたり建物検査に携わるエキスパートで、昨年4月から(株)ジェイアール西日本ビルトへ出向し、さらにその腕を磨いている。

「昭和57年の国鉄入社当時は、駅構内の運転業務などを担当していましたが、入社3年後、建築関係の職場への配属を希望しました。昭和61年に敦賀建築区に配属され、その後はずっと建築畑一筋で建物の検査業務に携わっています」と山田。建築系の高校で学んだ知識を公共交通機関で活かし、社会に貢献したいという夢が現実のものとなってから今年で21年。JR金沢建築区時代には工事の監督や計画、設計などの業務にも携わったが、最も長く専門としているのは建物検査で、今では「建物検査のエキスパート」として誰からも頼られる存在だ。
1,100棟あまりの建物を検査
山田は3人1組のチームで、JR西日本から委託された建物、たとえば駅や電車基地、高架下事務所、跨線橋などの検査を行っている。担当している建築物は約1,100棟あり、国で定められた省令やJR西日本の規程に基づき、一つずつ詳しく検査する。主な検査には「建物全般検査」と「点検巡回」の2種類があるそうだ。

建物全般検査とは、現地へ赴き、建築物の目視検査や打音検査を行い、検査記録として写真に撮り、検査記録を図面に落とし整理する作業。点検巡回とは、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始の輸送繁忙期に備えて駅や線路近接建物等の不具合状況を確認する作業である。

「担当エリアは京都府北部から福井、石川、富山の各県と、新潟県・長野県の一部までと広範囲にわたります。これら1府5県にまたがる1,100棟すべてをいかに手抜かりなくきちっと検査していくかというところに苦労します」と山田。
不具合の予兆を発見し回避する
建物は竣工した瞬間から劣化が始まる。安全で快適な建物を維持していくためにも、お客様にご不便をかけてしまうような雨漏りや、床面の浮きなど、どんな小さな不具合の予兆も見逃さないように努めるのが山田の役目。やりがいを感じるのは「予兆を発見し、迅速に対応できたときが一番の喜びですね」と笑顔で語る。不具合が表に出る前に対処する、まさに縁の下の力持ちだ。

「予兆に気付くには経験がものをいいますから、たくさんの事象を見て原因を調べることが大切です」という言葉どおり、JR西日本とジェイアール西日本ビルトでは、社員のスキルアップのため、「検査道場」と名づけた研修を2カ月に1度、共同開催し、建物の劣化事象の水平展開と原因追求を行っている。

さらに、「経験を積むことはもちろんですが、検査対象の建物で働く人たちとのコミュニケーションを密にして、常に情報交換することも大切です。現地の生の声を聞くことで、不具合発見につながることも多々あります」と山田。お客様に安心・安全・快適な建物であること。そのために、今日も山田は建物の隅々まで目を光らせている。
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「Dr.ビルト」号と名付けられた専門の機材を搭載した検査車。3人1組のチームで現場を回る。
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「Dr.ビルト」号の車内にはビルト本社のサーバと接続されたパソコンも搭載。前年の検査データと照合しながら現場での検査を行う。
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駅コンコースのタイルや壁面を検査ハンマーで叩きながら、音でタイルや壁の浮きをチェックする。
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検査の確認のため、現場の記録も大切な仕事。建物の全ての面をくまなく撮影する。
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検査図面と現場で撮影した写真を元に、検査報告書を作成。
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