Blue Signal
May 2007 vol.112 
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鉄道に生きる【小松 章胤[こまつ あきつぐ](45)大阪工事事務所 軌道担当課 主席】
駅や軌道の高架化や改良などに伴って行われる線路の切換や新設。
これらの作業は列車運行に支障をきたさないよう深夜に行われる。
この線路切換のプロジェクトを指揮するエキスパートを訪ねた。
建設軌道の技術を未来へ継承する
軌道に関わる技術者を育成する
現在、大阪駅では駅の改良、新北ビル開発が進められている。これに伴い、線路の切換工事なども行われるが、工事にかけられる時間は最終電車から始発までの営業時間外のわずかな時間。運行ダイヤに影響し、お客様に迷惑をかけることのないように実施される。

「大阪近辺なら、線路切換工事にかけられる時間は4時間ほどです」そう語る小松章胤は、建設軌道という鉄道固有の土木工事に携わる技術者だ。

小松の所属する軌道担当課は、軌道工事の技術者を集約し、線路切換や軌道新設に係わる技術力レベルの向上と継承を行うことを目的に2000(平成12)年に設立された。

「建設軌道の仕事は今後ますます増えると考えられますが、軌道を専門とする技術者は少ない状況です。これをきちんと継承していくのも私たちの大切な仕事ですから」と、若い技術者の育成にも力を注いでいる。
重要な線路切換会議と現地シミュレーション
大阪駅プロジェクトをはじめ、天王寺駅の改良、奈良駅の高架化など、小松の手掛ける工事は多岐にわたる。「建設軌道の工事は、2007(平成19年)度には100回ほど予定されています。これを無事遂行させるための計画を立て、問題点を抽出し、関係部署との調整や指導を行うのが私たちの役目です」と小松。

計画された配線形を基に、線路切換の順序や施工方法を検討し、現場の管理担当者や工事関係者との調整を進めていく。続いてすべての関係者を集めて線路切換会議を開催し、各担当の認識を一致させるとともに、問題点や課題を抽出して計画の深度化を図る。その結果を現地シミュレーションにより確認し、お互いの施工手順や連携をチェックしたうえでようやく着工に至る。

「実際の工事にかかる前に問題点を解決し、安全にまた、お客様に迷惑がかからないようにチームとして連携し工事を行う。そのための調整役でもありますね」 線路切換会議や現地シミュレーションは、工事を実施するうえで最も重要な行程の1つであるといえるだろう。
技術や経験を共有し未来につなぐ
「関係部署の連携、コミュニケーションがきちんととれて無事工事を終えられたときは、ホッとするし、やりがいも感じます」と語る小松。その達成感はプロジェクトの大きさには関わらないという。

「こういう仕事をしている以上、苦労や困難は避けて通れないですが、1歩ずつ着実に進むことが大切ですし、そのことを若い技術者には伝えていきたいですね」
数々のプロジェクトの施工計画書を保存することやヒヤリハット事例や工夫点は、線路切換マニュアル(軌道編)にまとめられ、個々の技術や経験が共有化できるようになっている。建設軌道の技術を継承するための一例だ。

「高架駅などが開業したとき、お客様が“この駅、よくなったね”などと言っておられるのを耳にすると喜びとやりがいを感じます。鉄道土木技術に関しては私たちにお任せくださいと、そう胸を張って言えるよう頑張っていきたいですね」と小松。建設軌道のエキスパートとしての誇りが、ここにあった。
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切換計画に伴う課題を整理する。
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線路切換計画の見直し検討。CADから出力された図目をもとに配線検討を行う。
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パソコンを使っての切換順序図作成とチェック。
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