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列車が信号に従ってホームに入り、踏切では警報機が鳴って遮断機が降りる。この当たり前のことを、100%間違いなく実行するためには、関連する設備がきちんと連動して機能する綿密なシステムが必要となる。機器の配線や動作条件を事細かに記されたシステムの設計図を「結線図」と呼ぶ。
中野孝は、結線図作成のプロとして、米子支社の電気関係工事に携わる。「結線図を読み取ったり検査することはできても、一から図面を引くことができる人は少ない」と言われるほど、熟練の技が必要となる仕事を担当している。
「たとえば踏切に警報機や遮断機を新設する際には、機器の動作条件や列車のスピードによってどのタイミングで警報機を鳴らすかなど、さまざまな細かい条件を組み込んだ図面を引きます」と中野。システム全体を捉える必要があるため、図面作成は大半が手書きの作業だ。また、完成図面、何百通りのシステムチェック表作成にコンピュータも使用している。 |
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駅構内の改良や踏切の新設などで結線図が必要となるのはもちろん、ダイヤ改正によるルート変更や、列車のスピードアップによっても新たな結線図が必要となる。信号や警報機は、列車のスピードによっても動作条件が異なるためだ。 |
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「全列車の速度やブレーキ距離の確認、警報開始点の設置、分岐器制限、障害物検知装置など、図面作成にあたっての必要条件は多岐にわたります。それぞれの設備を把握したうえでないと結線は引けませんし、いろいろな場合を想定して完全な図面に仕上げていきます」と中野。無遮断・無警報による事故や踏切設備の故障など、過去の事例も指示指導事項として結線図に反映させる。
国鉄時代から設備の保守・管理業務に携わってきた中野は、「設備をより深く知るために、違った角度から見てみたい」と工事設計・工事施行の関連会社への出向を望み、5年間にわたって施行管理、品質管理、安全管理を習得した。
「配線1本の重要性を改めて痛感しました。このときの経験は現在の仕事に大きく影響を与えています」と語るように、関係回路の末端まで調査確認し施行図面と承認結線図の照合やチェックなど、現場での最終確認を怠らない。
「1人だと過ちや見過ごしもありえますから、マンパワーを費やして調査・チェックを行い100点満点にします。満点でなければ意味がない仕事なのです」。 |
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現在、米子支社では若手社員教育として、設備管理を習得させる「電気練成道場」と、設備基準を習得させる「系統別ワーキング」の取り組みを独自のプログラムで実施している。
「事故防止の最大の対策は、徹底した基礎教育と経験です。日々業務の忙しい中、毎月1回、丸1日かけて教育を実施し、5年間の短期育成で1人前にすることを目標にしています。安全を無視した検査・作業はしない、させない、ありえないのです」と、配線1本の大切さを知る職人の言葉として中野は若手社員に伝えていく。
「西日本管内でも小さな米子支社の電気屋ですが、技術、技能そして気概のすべてにおいて世界一のチームをめざして全員でがんばっているところです」。その自信のうしろには、並々ならぬ努力と、社員教育の実績がうかがえる。 |
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結線図の作成は、職人の技によって行われる。 |
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関連設備の基準を調べながら結線図に記す中野。 |
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結線図のデータをコンピュータに入力し管理する。 |
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踏切が正しく機能するのも、すべて結線図によってつくられたシステムがあってこそ。 |
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