「車両に負担をかけず、乗り心地が良く、しかも節電になる運転方法があるぞ」。師匠と仰ぐ指導操縦者のひと言が、私の心に火を点けました。「運転士の工夫と力量次第で、より快適でエコにできる」。そう気付いて以来、「安全で、時間を守る」新幹線のミッションを全うするだけでは満足しない操縦を心がけ、社内のエコ運転グループにも自ら参加し、私なりに「乗り心地とエコ(節電)の、ちょうど良いバランス」に挑戦しています。13段ある加速ハンドルの切り替えを減らすと、スムーズな加速で乗り心地が良くなり、加速の惰性を最大限活用してスピードを維持すれば、エコになります。走行区間ごとの工夫や、運転士一人ひとりの操縦方法のこだわりも違いますが、みんなの経験知を集約して運転技術を向上させ、それを共有することにより、目に見える成果へと結びつけています。若い運転士が多く、後輩にもどんどんアドバイスしていきたいので、次なる目標のステージは「師匠のような指導操縦者になる」ことです。技術だけでなく運転士の誇りもしっかりと継承していくために、今、自分に何ができるのか。それはJR西日本と私にとって、終わりのないテーマだと思っています。

福岡県内の中学校から依頼され、仕事内容を紹介する講師を務めた時、「挨拶」と「時間を守る」ことの大切さを感じ取っていただけたことです。駅務は「挨拶」、運転士は「時間を守る」が大事ですが、どちらも、日常生活でも、また社会に貢献する仕事をするためにも必要なことです。ぜひ学生生活で身につけて欲しいと伝えたところ、感想文集に数多く「時間を守り、挨拶もします」と書いていただいていました。想いが届いたことがうれしかったです。これからも子どもたちの心に、小さな、だけどとても大切な種を蒔いていけたらと思います。

