北陸新幹線の開業に向けて準備が進む中で、私はその一員として活躍したいと思いをふくらませていました。そして、開業の約8カ月前の2014年8月に金沢新幹線列車区に転勤となり、開業に向けてさまざまな準備を行いました。
まず取り組んだのが、運転士がトラブル発生時に使うマニュアルの作成でした。既存のマニュアルはあったものの、北陸新幹線にふさわしいマニュアルを自分たちの手で作りました。一からマニュアルを作ることの難しさを感じつつも、運転士および係長と協力しながら、限られた時間のなかで完成させることができました。
また、これまで経験したことのない総合監査・検査にも関わることができました。総合監査・検査とは、北陸新幹線の信号や設備等に問題がないか、JR西日本が鉄道運輸機構に対して実施する試験です。朝・昼・晩・夜中などあらゆる時間帯に試験列車に乗務し、普段の乗務においてはすることのない特殊な運転を行います。ミスをすると試験がやり直しになるため緊張と隣り合わせの乗務でしたが、会社・系統を超えて試験運転に携わる全員が心を一つにして試験に臨んだことは、忘れられない経験となりました。
新設された金沢新幹線列車区では、これから自分たちが歴史を作っていくことになるため、さまざまな新しい取り組みにチャレンジしています。失敗を恐れることなく、チャレンジできる機会に満ちた職場なので、これからもチャレンジ精神を忘れず、理想の職場づくりをめざしてがんばっていきます。
最後に、北陸新幹線の開業当日は、まさにお祭り騒ぎのようなにぎわいでした。たくさんのお客様や地域の方々の笑顔を運転室から見ることで、この一大事業に携われたことを誇りに思うとともに、ものすごいことをやり遂げたのだという達成感を味わうことができました。これからも新幹線の安全の一翼を担うものとして、日々運転操縦業務に励んでいきたいと思っています。

自分の子どもが病院でお世話になった際、小さな患者さんが数多く入院していることを知りました。そこで、運転士としてその子どもたちに何かできないかと考えて、慰問に取り組むこととしました。職場ではたくさんの人に賛同していただき、お互いに仕事の合間を縫ってプレゼントや小道具を準備しました。慰問の当日は運転風景を撮影したビデオを放映したほか、子ども用の制服を持参して記念撮影を行いました。入院している子どもたちが目を輝かせて楽しんでくれたことで、苦労して準備をした甲斐があったとやりがいを感じることができました。それとともに、運転士の仕事は子どもたちに夢と希望を与える職業であることを、改めて感じたのです。

