在来線運転士および新幹線運転士を約10年経験した後、指導操縦者となりました。見習い運転士が新幹線運転士として一人前となり、安全に乗務できるかどうかは、指導操縦者の力量にかかっています。運転操縦の技能や知識に関しては自信があったものの、指導者として運転士見習にしっかりと伝えることができるかどうか少し不安もありました。しかし、それまで先輩方から受けた教えを思い返して、指導に取り組みました。
あるとき、見習い運転士から「寺崎さんの分身と言われるようにがんばります」と言われたことがありました。それに対して私は「自分の分身を作ろうとは思っていない、一人の運転士を育てようと思っている」と答えました。新幹線運転士は、指示されたことを行うだけでは務まりません。基本はもちろん大切ですが、いざという時に臨機応変に対応できる能力が欠かせません。そのため、自分で考えて行動できる運転士を育てることが重要です。指導では一から十までを教えるのではなく、自分で考えて判断する習慣を身につけられるように心がけました。
後輩を指導したことで、私自身、得たことがたくさんありました。人に教える者として、たとえ後輩がミスをしたとしても、自分の教え方が十分であったか、自分ゴトとして考えるようになりました。また、後輩の運転を見ることで、運転士として新たな気づきを得たのです。

これまで京都や金沢、広島など各地で勤務を行ってきました。どこの職場であれ、チャレンジすることに対して自分が不安に思っていた時に、背中を押してくれた上司や先輩の存在が、私の成長を支えてきたと思います。また、仕事に勉強に熱心に取り組む先輩方の姿を見ることで、「自分も、もっとがんばろう」と気持ちを抱くことができたのです。JR西日本には、若手のやる気を高める環境が職種を問わず整っているように思います。この社風を私自身、大切にして後輩の指導にあたりたいと考えています。

