鉄道に生きる

宮川 敏秀 富山駅 副駅長

お客様の視点で考え行動する社員を育てる

若手社員からの相談に応じる宮川副駅長。

 駅員の指導に長く携わり社員の実務能力向上に貢献した宮川は、現在、北陸新幹線 富山駅の副駅長として駅全体のマネジメントに奮闘している。

手作業の運賃計算、経路入力で培われた基礎

 国鉄入社直後は貨車の入換業務、清掃、小荷物の荷さばきなどを担当。当時は出札※1に資格が必要で、入社したばかりの宮川はきっぷを売ることができなかった。「さまざまな業務に携わってみたい」と、出札の資格を取り新たな一歩を踏み出す。宮川が働いていた駅にはマルス端末※2がなく、運賃計算を手作業で行っていたため、自然ときっぷなど営業の基礎が身に付いた。

 入社9年目に金沢駅に異動となった。多くのお客様がお越しになる上、取り扱う商品も多く、不安と戸惑いの連続だったという。「見習いは数日間だけで、すぐに独り立ちです。独り立ち初日はゴールデンウィークだったこともあり、お客様の列が途切れず、焦りと緊張の日々でした」と当時を振り返る。

教育担当としての歩み「やる気を起こさせることが仕事」

社員のレベルアップのため、勉強会にも積極的に参加する。

 2006(平成18)年に社員を直接指導する立場である駅営業指導監(富山・糸魚川地区担当)となった。「社員の成長を直接感じることができて楽しかったです。例えば、受け身の姿勢が目立った社員が積極的に質問をするようになったなど、日々新しい発見がありました」。個々人に合った教育を行うため、社員の能力を記載したカルテを作成し、他の地区の指導監と指導内容を相談しながらきめ細かい指導を行った。その思いに社員も応え、宮川が指導監を務めていた2006年から2010(平成22)年の間に駅員のスキルアップを図る目的で設けた社内資格「駅営業実務認定試験※3」の最高ランクSAランクに29名が合格した(同期間における全社の合格者は81名)。

 「いくらでも教えることはできますが、成長は個人の努力によるところが大きいと思います。だからこそ、仕事に興味を持たせ、やる気を起こさせることが、教育担当者の仕事だと思います。できることが増えたらほめる、互いに切磋琢磨させるなどして社員のモチベーション向上に努めていました。社員は本当によく頑張ってくれたと思います」。

北陸新幹線金沢開業 社員の不安をなくす

日課である駅構内の巡回。お困りと思われるお客様に積極的に声を掛ける。

 宮川が「鉄道人生で一番思い出深い」と語ったのが、2015年の北陸新幹線金沢開業だ。開業前は、新しい設備の使用方法や商品知識についての社員教育などを担当した。「新しい設備や商品は私たちも初めて触れるもので、分からないことも多く不安だらけでした。しかしそれを実際に駅で使用する社員はそれ以上のはずで、少しでもその不安を払拭しようと自分なりに知識を深掘りして分かりやすく説明するなど、開業ぎりぎりまでできる限りのことをしました」と、社員に寄り添って開業に備えた。

 その後、営業総括という立場になり駅全般の仕事を担当し、浮かび上がる課題に日々対応した。例えば、窓口の入り口からあふれるほどの列ができ、お客様をお待たせすることが多くなった。そこで関係者と相談し、きっぷの受取専用の機械を増設した。他にも、スムーズな観光案内を行うために関係他社と打ち合わせて必要な資料を共有するなど、お客様にとって少しでも利用していただきやすいように、そして社員にとって働きやすい環境づくりに努めた。

大切にしているのはチームワーク

副駅長としてさまざまな業務をこなす。

 副駅長となった今でも気軽に相談に訪れる社員は多い。内容はさまざまだが、多忙な中で宮川は丁寧に一人ひとりと向き合う。そしてその姿勢が部下からの信頼につながっている。「仕事はチームで行うものです。自分の仕事を限定せずに、のりしろを持ち、どうすればお客様に喜んでいただけるかを考えて仕事をしてほしいと思います。そんな風に考えて行動する社員を一人でも多く育てることが今の私の仕事です」と、気を引き締める。金沢開業3年目を迎えてなおも多くのお客様がご利用になる北陸新幹線を、仲間とともに支えていく。

※1…乗車券などを販売すること ※2…乗車券などを発券する端末 ※3…筆記・実技ともに満点で合格となる
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