旅の味めぐり 駅弁

出雲美人

◎山陰本線/松江駅

朱小菊をあしらった色鮮やかな掛け紙と容器。
箱を開けると、目にも美味しい幕の内弁当が現れる。美と健康をテーマに郷土の山海の幸を選りすぐり、丁寧に味付けした、その名も「出雲美人」。
女性好みに仕立てられたこだわりの駅弁には、
自然と歴史に培われた島根の食文化が息づいている。

郷土の自然に育まれた厳選素材を、女性好みの味わいに。

特産品が多彩にひしめき合う

 日本海に臨み、長く東西に延びる地形を持つ島根県。北東の出雲、南西の石見、北の沖合40kmにある隠岐の大きく3つの地方に分かれ、それぞれの地方には豊かな自然に育まれた食材と独自の食文化が根付いている。中でも、水都松江を中心とした出雲地方は、江戸時代後期の松江藩主・松平不昧[ふまい]公の影響が色濃く残り、食通として知られた不昧公ゆかりの郷土料理をはじめ、不昧流の茶の湯文化などの伝統が受け継がれている。さらに、島根半島沖合の漁場から届く魚介類、四季折々の宍道湖の幸、新鮮な地物野菜など、食材の豊富さも際立っている。

 これら郷土の恵みをふんだんに盛り込み、幕の内弁当に仕立てたのが松江駅の名物駅弁「ご婦人お好み幕の内 出雲美人」だ。不昧公の正室しず[しず]姫の御輿入れの長持を象[かたど]ったという容器も美しく、松江姉様人形が描かれたお品書きには、ずらりと地産地消の味わいが並ぶ。例えば、隠岐の大和堆[やまとたい]の海域で捕れ、境港に水揚げされたズワイガニ、かき揚げには中海に浮かぶ大根島の特産品 朝鮮人参が使われる。県産トビウオのすり身を炭火で焼いた「あご野焼き」、野菜や山菜を漬け込んだ「頓原[とんばら]漬け」など、古くから食べ継がれてきた伝統食品も脇を飾る。また、出雲コシヒカリは島根ワインの赤と白をブレンドした寿司酢で調味され、ほのかな色と香りを添える。

駅弁が物語る郷土の食文化

 こだわりの駅弁が誕生したのは、2004(平成16)年5月。松江市内で弁当の製造販売を営む一文字家がJR西日本の「駅弁の達人」キャンペーンへの参加をきっかけに、半年がかりで開発したものだ。旅の主役である女性を徹底的に意識し、美容と健康をテーマに県内産の食材を厳選。酢飯をワインで風味付けするという斬新な発想、577kcalと低カロリーに抑えたことなども女性の心を捉え、以来、松江駅の名物駅弁となって旅行客を出迎える。

 一文字家は、1901(明治34)年に松江城近くで旅館として創業。山陰本線が松江駅まで開通した1908(明治41)年から弁当の販売を開始したという老舗だ。「その土地ならではの食材を提供し、地域の食文化を伝えていくのが駅弁の役割」という信念のもと、山陰の豊かな味を盛り込んだおよそ15種類の駅弁を販売している。

 郷土の味を守り継ぐ姿勢は、一つひとつの食材の味付けにも表れる。「出雲美人」をはじめ、一文字家の駅弁に使われる調味料は、全て県内で丹念に生産された逸品。昔ながらの木樽でじっくり熟成させた天然発酵の醤油、奥出雲特有の米麹をふんだんに使って仕込んだ味噌、米と米麹だけを原料とした専用の料理酒など、米どころの発酵文化に培われた調味料によって、地元食材は一層味わいを増す。掛け紙には、そんな郷土の味自慢を記し、旅の味にメッセージを添えている。

【地場産の多彩な具材たち】

地元から選りすぐった食材は、どれも持ち味を活かした丁寧な味付けが特徴。 ①鶏の旨煮 ②鰆の味噌漬け ③野菜と朝鮮人参のかき揚げ ④竹の子煮 ⑤あご野焼き ⑥チーズ ⑦季節の和菓子 ⑧人参の煮物 ⑨錦糸卵 ⑩紅ズワイガニ ⑪椎茸の煮物 ⑫いんげん豆の煮物 ⑬頓原漬け ⑭島根ワインを使った出雲コシヒカリの酢飯。バラエティー豊かなおかずとちらし寿司の組み合わせで、まさに女性が好む駅弁に仕立てられている。
〔価格:1,240円(税込)〕

食材の宝庫 島根が誇る山海の幸を人気の駅弁で味わう

島根牛みそ玉丼

特産島根牛を天然醸造味噌と地酒を合わせて炊き込み、とろとろの半熟卵を添えた食欲をそそる逸品。駅弁大会のアンケート(2011年)で1位に輝いた人気の味。
〔価格:1,050円(税込)〕

蟹としじみのもぐり寿し

境港水揚げの紅ズワイガニと郷土料理しじみのしぐれ煮を組み合わせた、松江ならではの味わい深い駅弁。名前の通り、酢飯にもしじみがもぐっている。
〔価格:1,150円(税込)〕

〔価格は全て2017年6月20日現在〕

ページトップへ戻る
ローカルナビゲーションをとばしてフッターへ