ふるさとの玩具

熊野古式くじら舟 【和歌山県東牟婁郡那智勝浦町】

 紀伊半島南東部にある那智勝浦町。熊野灘に面したこの町は、南紀でも随一といわれる勝浦漁港や世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として登録されている寺院、南紀勝浦温泉などもあることから、多くの観光客が訪れている。

(写真提供:小倉家)

 そして、那智勝浦は隣町の太地町とともにかつて捕鯨で賑わった町でもある。江戸時代には、銛[もり]を突く勢子舟、網を張る網舟などの役割を持った舟が船団を組んで捕鯨を行っていた。土産物として人気がある「熊野古式くじら舟」は、その時代を偲ぶ郷土玩具で、古式捕鯨に使われた勢子舟や網舟などを再現したもの。もともとは昔の漁師たちが、子どもたちのために木を削って舟のミニチュアを作っていたそうだ。本物と同様に海上で任務が識別しやすいようにと、一番重要な勢子舟は桐と鳳凰といった具合に、それぞれの舟に松竹梅、割り菊、菊流しなどさまざまな模様が鮮やかな色彩で舟の両側面に描かれている。

 現在、熊野古式くじら舟は、那智勝浦駅近くの郷土玩具や土産物を扱う小倉家で制作・販売されている。一艘ずつ丁寧に手作りされており、予約をすれば絵付け体験もできるという。

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