鉄道に生きる

石岡 雅美 いしおか まさみ 大阪工事事務所 広島建築工事所 係長

関係箇所と連携しつつ妥協なき姿勢で工事を指揮

施工箇所の仕上がりを目視で確認。何か問題があれば、その場で解決策や対応策を指示する。

広島駅の南北をつなぐ待望のプロジェクト

 2017年度の完成を目指し、工事が進む広島駅橋上化プロジェクト。このプロジェクトは、広島駅の在来線をまたぐように南北自由通路を設置して、あわせて橋上に駅舎や商業施設を配置。同時に駅周辺では再開発事業も行われており、このプロジェクトが実現すれば、駅利用者の利便性が向上するだけでなく、広島駅の南北が有機的につながることで周辺エリアの活性化も期待されている。

「本プロジェクトは、毎日多くのお客様が利用されている駅での工事となるため、協力会社と一体となって列車の安全、安定輸送や、お客様および作業員の安全を確保できる施工計画を検討、実施しています」。そう語るのは、橋上化工事のスタートとなる基礎工事から工事管理を担当している石岡雅美。石岡は現場に入り、工事の進捗や品質管理をはじめ、行政や施工業者、駅など、関係箇所からの意見や要望の取りまとめを担当。橋上化工事を円滑かつ確実に進めるキーマンとして日夜業務にあたっている。

「広島駅の利便性や機能性が向上することはずっと前からの地元の願いです。この大切なプロジェクトの一端を担うことは光栄なことですが、大きな責任を背負うことでもあり、これまで自分の培った全てを生かしていかなければ、業務を全うできないと感じています」。

〈平成24年8月〉

〈平成26年7月〉

3年の工期を経て、広島駅の南北をつなぐ自由通路と橋上駅舎が姿を見せる。

“何が一番大切なのか”を関係箇所と共有

 石岡は1999年に入社して以来、設備区、施設課、工事事務所を経ながら業務の経験を積んできた。その経験の中で、プロジェクトを成功へと導く鍵は、関係箇所との“価値の共有”であることを認識する。

「どんな工事でも、工事に関わる関係者は多いものです。大掛かりなプロジェクトではなおのこと、多くの立場での考え方や主張があります。しかし、立場が違い、意見が対立することがあっても、その度に“何が一番大切なのか”を共有できれば、プロジェクトはあるべき方向へ進んでいけると考えています」。

 プロジェクトを進めていく過程で、常に何が一番大切なのかを関係者たちと共有したい。そのために、石岡は何よりも対話を重視している。それとともに、安易な妥協やなれ合いを排することを石岡は一貫して自身に課してきた。

「まず多系統に及ぶ関係箇所の意見をしっかりと聞きます。それぞれの立場から伝えられる意見や要望は全て重要で、無視できない大切なものです。こちらに聞く姿勢がなければ対話も成立しません。また、対話があっても、なれ合いになってしまっては意味がありません。対話を通じて、安易に妥協せず意見や要望を調整し、その結果工事完成後に関係者全員が達成感を感じられることが大切です。そして、調整する際には、私たちがこれから先ずっと存続する建物を造っているということを忘れてはいけません」。

 これから先ずっと存続する建物を造る。その使命感と責任感があるからこそ、関係者たちと“何が一番大切なのか”を突き詰めながら、石岡は日々の工事を完成へと導いている。

ホームの図面をもとに、駅員とお客様の安全を確保するための打ち合わせを念入りに行う。

社内外を問わず、妥協なき姿勢を貫く

 工事は現在、駅の南北をつなぐ自由通路と橋上駅舎の鉄骨も組み上がり、工事の全体像が外部からも周知されるようになった。秋からは連絡通路の使用も始まり、いよいよ仕上げ工事へと移行していく予定だ。ここまで大きな事故やトラブルもなく工事が順調に進んでいるのは、やはり関係箇所の連携と、石岡の言う価値の共有がなされてきたからだろう。

「それぞれの立場でさまざまな考え方があっても、お客様にとって使いやすい、高品質な建物を造るという目標は共通です。これからも安全の確保を最優先としながら、地元の方やお客様から、良い駅ができたと思っていただけるよう業務にあたります」。

 石岡のもとでは、次を担う若手のスタッフたちも従事しているが、若手に対しては、スケジュールの大切さを徹底して指導しているという。

「多系統に及ぶ工事では、工事に着手する初めの段階が特に大事です。一つの変更が他に影響を及ぼしてしまうからです。関係箇所のすり合わせは大変ですが、若手にはなれ合いや妥協を排して、皆が納得できるスケジュールを作成することを指導しています」。

 未来につながる、人々に待ち望まれたプロジェクトを担う使命感と責任感は、次を担う若手たちにも継承されている。

施工図面をもとに若手スタッフとミーティング。工事進捗の確認、課題の洗い出しを行う。

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