中井 栄(61) なかい さかえ 株式会社ジェイアール西日本メンテック 野洲営業所  所長 (現・向日町営業所  所長)

お客様が乗りたくなる、快適な車両をお届けする

鉄道に生きる

車内清掃中の社員の動きや仕上がりを確認。社員の育成、指導は現場で行うのが原則と中井。

全員が100%の力を発揮するために

 琵琶湖線野洲駅に隣接する広大な車両基地。近畿圏を走る列車が入れ代わりやってきて、ここで清掃、メンテナンスされた後、再び駅へ向かう。

 この車両基地の一角に、ジェイアール西日本メンテック野洲営業所はある。主な業務は車両基地内での列車の運転や車両の分割・連結作業、車両の清掃だ。営業所には勤続年数が20年を超えるベテランから、若手まで50人が勤務する。所長である中井の仕事は、作業にあたるチームの編成や育成指導、職場管理などである。

「清掃という仕事は、どのように作業に取り組んだのかが明確に分かる仕事です。作業の実態は結果が教えてくれます」。365日、いつもきれいで快適な車両をお客様にお届けしたい。毎日、最善の結果を出すために、中井は大事にしていることがある。

「スタッフ全員が100%の力を発揮できるよう、みんなが意見を言いやすい、明るい職場でありたい。そのために、日ごろのコミュニケーションを大事にしています」。着任当時はなかなか打ち解けてもらえなかったが、今では中井が話しかけずとも、スタッフから さまざまな悩みや相談を持ちかけられる関係になった。

安全のために、揺るがないポリシー

 ひとたび列車のダイヤが乱れると、JRを中心に関係各部署が綿密に打ち合わせをし、定時ダイヤに回復させる努力を行う。それはメンテックも同じで、JRと連携して短時間での作業完了にスタッフ総動員で対応する。

「異常時に一番注意しなければならないのはスタッフの安全です」と中井。作業をどこまで、どのように行うか。選択と決断が求められる時、中井は「絶対に安全な道」を選ぶと言う。

「やるべきことは100%の力を発揮してやる。しかし無理に頑張りすぎて安全を損なうようなことはあってはならない。それが私のポリシーです」。

 このポリシーを貫くことで、野洲営業所は連続無災害日数2,700日以上を継続している。

車両を洗浄する機械では行き届かないすき間や前面の窓部分は、人の手によって磨かれる。

目指すのは、お客様が乗りたくなる車両

「最良の結果を出すためには、基本がしっかりと身についていることも必要です。基本を徹底することーーこれは、私がJRに勤務していた時に先輩から何度も言われたことです」。中井は1969(昭和44)年、旧国鉄に入社。以来、各地で車両の検査やメンテナンス業務に従事してきた。働く場所、役割が変わっても、先輩の教えは変わらない。

「現場で何が起きているのか、何が問題なのかを知ること。いわゆる三現主義も先輩から教わりました。現場の問題点や課題を共有することで、初めてお客様に喜んでいただけるプラスの仕事ができるはずです」。中井の考える、お客様にとってプラスの仕事とはどのようなものなのか。

「お客様が乗りたくなるような車両を提供すること。それが私たちのモットーです。自分たちが列車に乗った時に、また乗りたいと思えるような清潔感あふれる車両になっているかどうか、そういう思いを持って取り組んでほしいとスタッフには言っています。この仕事には、 ここまでやれば良しというラインがありません。スタッフ一人ひとりが心を尽くして仕事に臨むことが大切なのです」。中井の見つめる先には常にお客様がいる。

「お客様と直接の接点はなくても、お客様とつながっている。これからもスタッフたちと思いを共有しながら、快適な車両の提供に努めます」。

 顧客満足の高みへ、今日も誇りを持って技と心を磨いている。

車両基地内の運転は、構内運転士が行っている。運転速度の遵守など、基本を徹底する。

野洲駅の北側にある車両基地。

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