Blue Signal
March 2005 vol.100 
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鉄道に生きる【弓岡 省吾[ゆみおか しょうご](50)神戸支社 神戸土木技術センター 助役】
コンクリートで造られたトンネルや高架橋は、
現代の鉄道になくてはならない構造物。
そのメンテナンスを行うエキスパートを訪ねた。
鉄道を支えるコンクリートのプロ
震災を機に生まれた専門家集団
管内の新幹線・在来線計350.84kmにおける土木構造物の保守管理を担う神戸土木技術センター。弓岡省吾は、そこで高架橋とトンネルの検査を担当する。

「鉄道事業はサービス業ですから、トンネルや高架橋を効率的、効果的に維持管理して安全安定輸送を提供するのが私たちの仕事です。他の機器やパーツのように“具合が悪くなったら交換する”ことが簡単にできない構造物ですから、メンテナンスが重要です」と弓岡は話す。

神戸土木技術センターが設立されたのは、1998(平成10)年4月1日。それまで土木は保線区の中の1部署だった。

「1995(平成7)年に阪神・淡路大震災が起こり新幹線が81日間止まりました。私たちの想像を超える被害を受け、どう直したらいいかさえ判らない状態でした。これを機に、土木だけの専門技術集団の必要性が高まったのです」と、当時を振り返る弓岡。かつてない被害状況の中、1日も早い復旧に向け、大学教授など土木工学の専門家にも協力を仰ぎ復旧に当たったという。

「地震から2日後、まだ余震もあり怖かったんですが、1日も早く復旧させるためトンネル内を点検して回りました。自分や、自分の家族のことより、まずはお客様。それが私たちの使命ですから」と熱く語る。
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最新システム導入でメンテの精度アップ
トンネル内の点検を例にとると、トンネル壁の外観を定期的に検査して「ひび割れ」の有無などをチェックする目視検査、注意を要する個所についての打音検査があり、さらに目視検査・打音検査の結果を受けて必要箇所の個別検査を行い補修や補強工事を実施する。

「検査や補修は翌日の始発までに行いますから、時間との勝負です。これを効率良く行うために次々と新しいシステムが開発されています。トンネル覆工表面検査システム(SATUZO)は、目視検査をレーザーで映像にするもので、専用の車両で走りながらトンネル表面を映像化できます。このデータを事前に分析して検査の効率化を図ります。またトンネル保守管理システム(TuMaS)は、トンネル設備の現状や補修工事履歴などをデータベース化したもので、トンネル保守管理の精度を高めています」と弓岡。しかし、いかに機器やシステムが発達しても、最終的に保守を行うのは人間の力だという。

「検査の結果を受けてメンテナンスの判断をしたり、実際に補修作業をするのは人ですからね。検査のプロとしての技術とセンスが最も重要です」。
優れた技術の継承も大切な役目
「私が日頃から若い社員に話すのは、検査は、ここが悪いと指摘するだけで終わってはいけないということです。検査をして、どんな工事が必要かまでを考えて指示する。検査して、直して一話完結するんだと。そのためには、この仕事では俺が一番業務に精通しているという自信を持てるよう自分を高めることが必要だと思います」と弓岡。自身のスキルアップはもちろん、後輩たちの指導にも力が入る。

JR西日本の持つ確かな技術を継承していくことも大事な仕事。「私自身もいろんなことを教わってきました。特に震災当時の保線区長に教えられたことは大きいです。私が現在あるのは、ひとえにその方のお陰です。その人の教えを脈々と後進に引き継ぐことも私の使命であると思います。震災後に入社した社員も数多くいますが、日頃から自己研鑽して知識と技術を高めることが異常時に生きるのです」と語るその目には、メンテナンスを支える陰の主役としての熱い思いが秘められていた。
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打音検査の訓練として、内部欠陥のあるコンクリート構造物のモデル「打音試験体」をハンマーで叩き、欠陥ごとの音の違いを聞き分ける。
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SATUZOの画像をチェックし、夜間作業の検査箇所を事前に抽出。検査の効率化を図る。
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「トンネル検査報告書」をチェックする。
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トンネル内検査車の仕業点検も欠かせない。
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