鉄道に生きる

品川 友克(金沢支社 金沢新幹線列車区 運転士)

使命感とプライドを胸に、北陸新幹線を走らせる

乗り継ぎでは運転状況や車両の状態を伝達。安全な運行への願いを込めて次の運転士にハンドルキーを手渡す。

注目を集める北陸新幹線、その期待に応えたい

乗務までに当日の運転に関する掲示や徐行区間などを確認。注意事項を乗務報告書に記入する。

 北陸地域と大阪・東京間に新たな流動をもたらす北陸新幹線の金沢〜長野駅間開業。3月14日の開業に向け、金沢新幹線列車区では安全で確実な運行を目指して日々の走行試験、および訓練運転が行われている。

「全国的に注目されている北陸新幹線は、お客様からの関心も非常に高いと思います。ご乗車を心待ちにしているお客様の期待を裏切らないように、快適な車内空間を提供したいです」。そう語るのは、新設された金沢新幹線列車区の運転士一期生として赴任した品川友克。品川は金沢で在来線の運転士を務めた後、大阪で山陽新幹線の運転士として約10年にわたり活躍。その実績が評価され、このたびの北陸新幹線の開業に合わせて、再び金沢の地に舞い戻った。

 品川は言う。「北陸新幹線においても、安全な運行はもちろんですが、お客様を意識した快適な運転を心掛けています。加速や減速を感じさせない乗り心地、テーブルのお飲み物がこぼれないようなスムーズな乗り心地を、金沢新幹線列車区に所属する全ての運転士が心掛けています」。

快適・確実のため、高度な運転技術を習得し、共有しあう

出勤点呼では、運転士の心身の状態をはじめ、セキュリティ鍵の確認やアルコールチェックを行う。最後に行路表を確認し乗務に備える。

 これまで慣れ親しんできた山陽新幹線とは異なり、北陸新幹線は未踏の線路を新型車両で走行することになる。品川は運転士として操縦方法を身につけるための訓練運転に従事している。

「開業する金沢〜長野駅間の特徴として、勾配のきつさが挙げられます。新幹線は定められた速度を超えようとすると、安全上自動的にブレーキが作動します。そのブレーキの影響で、お客様の乗り心地を損ねてしまう恐れがあります。特に急な下り勾配だと、ノッチ(アクセル)扱いを行わなくても重力で自然と加速してしまうため、自動ブレーキが作動しないよう細心の注意を払うようにしています」。簡単な取り扱いのように見えるが、そのためには、どこから上り始め、どこから下り始めるかなどを全て頭に入れておく必要がある。そして、運転士には快適性だけではなく、時間の正確性(定時制の遵守)も求められる。

「到着時間ぴったりになるよう運転士は常に暗算で必要な速度を計算しています。停車駅には誤差+−0秒での到着を目指しています」。

 品川はまた、自分たち一期生の後に配属された運転士たちがすぐに運転操縦を行えるよう、マニュアル作りなどにも取り組んでいる。

「金沢新幹線列車区の運転士一人ひとりが自信とプライドを持って運転することで、チームとして開業の機運を盛り上げていきたいと思います。そのためにまず自分自身が知識や技能を蓄えるように心掛けています。そして、いかに分かりやすく伝えるか気を配っています」。

運転士一人ひとりの胸に、使命感とプライドを

自動化が進む新型車両においても、運転士の技能や知識が安全と快適を支える。

 かつて山陽新幹線で指導操縦者として後進の育成にあたってきた品川だが、当時から後輩たちに一貫して伝えてきたことがある。

「私自身が親方(指導操縦者)から言われたことですが、“常に運転席の後ろに自分の家族を乗せていると思え”と後輩たちに言っています。自分の大切な家族を乗せているのと同じように、大切なお客様の安全をお預かりしていることを私たちは忘れてはいけないのです」。 

 運転技術の習得も重要だが、それ以上に運転士は使命感が大事だと品川は語る。「北陸新幹線は満席で934名のお客様の命を預かっています。それだけ重大な仕事をしているのだという使命感やプライドがあるからこそ、平常時はもちろん異常時でも対処することができるのです」。

 いよいよスタートする北陸新幹線の金沢〜長野駅間の開業。多くの先輩たちが守ってきた新幹線の安全を、また新たに継承し続ける時が到来した。「これからお客様に立山連峰の素晴らしい景色を満喫していただきたい。そして、また乗りたいと言っていただけるように、安全で快適な鉄道を皆で築き上げていきます」。

 若きリーダーの熱い思いは、開業を前にすでに走り出していた。

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