あの風景を探して

“社会派ミステリーの巨星、
清張の代表作を新たな視点から描いた人間ドラマ 2004年TBS系列ドラマ『砂の器』〜鳥取市・島根県仁多郡・山口市・豊岡市 他〜

2004年の本作品では、主人公を刑事から犯人に置き換え、その重く苦しい過去に焦点をあてた人間ドラマとなっている。 物語は、東京・蒲田駅付近での殺人事件から展開していく。キーワードとなるのは、被害者と容疑者との会話から発せられた「カメダ」。

奥出雲の山間の町に秘められた過去…宿命を背負った人間の苦悩を描いた名作。

 『砂の器』は、1960年から61年にかけて連載された新聞小説で、松本清張の数多い傑作の中でも、屈指の名作といわれている。原作は、戦後の日本が抱える問題を浮き彫りにしたメッセージ性の高い物語。1974年に映画化され、その後も相次いでドラマ化されるなど、根強い人気がある。

ロケーションマップ

捜査が進むにつれ、「カメダ」とは島根県仁多[にた]郡の亀嵩[かめだけ]であることがわかり、奥出雲がドラマの主要舞台となっていく。実は、清張にとってこの辺りはなじみ深い土地。隣接する鳥取県日野郡矢戸村(現・日南町)は父親の出身地であり、清張も何度かこの地を訪れたという。重要なシーンのロケ地となった亀嵩は、山懐に抱かれたのどかな町。刑事が事件解決を願って参拝する湯野神社をはじめ、聞き込みに奔走する集落など、郷愁を誘う風景が印象深い。

 さらに、伊根(京都府)の舟屋や、豊岡市(兵庫県)周辺の海岸、鳥取砂丘(鳥取県)などの日本海沿岸各地がロケ地として登場し、山陰地方の豊かな自然美がストーリーと一体となって映し出されている。

美しい入江を持つ豊岡市竹野町宇日の漁港。ドラマでは、主人公親子の逃亡中の風景の一つとして描かれている。

多くの清張ファンが訪れるようになったという亀嵩地区。ロケ地のひとつ湯野神社の参道入り口には、清張直筆の文字が刻まれた『砂の器』記念碑が立つ。

亀嵩地区で刑事が聞き込みに訪れた屋敷として登場した「櫻井家邸宅(可部屋集成館)」。江戸時代に製鉄業を営んだ鉄山師頭取の屋敷。

時代背景に合わせた列車の臨場感あふれる走行シーンが、ドラマを盛り上げる。

 原作の亀嵩駅は、島根県の宍道駅から広島県の備後落合駅を結ぶ木次[きすき]線にある。当初、原作どおり、亀嵩駅でSLを走らせたいというのが制作側の希望であった。しかし、既に木次線ではSLが走っておらず撮影は困難であったため、現在もSLが走る山口線での撮影となった。篠目[しのめ]駅が亀嵩駅として登場することとなり、ドラマの時代設定に合うように駅舎の壁を改築するなどした。篠目駅には、赤レンガが目をひく給水塔が今も残る。これは往時、SLに水を供給するために使われていたもの。これがドラマに登場するのだが、そのきっかけとなったのは、撮影で篠目駅を訪れた俳優の渡辺謙さんの「あの建物は何ですか?」とJRの撮影応援スタッフに発した一言だった。結果、亀嵩にやってきた刑事が、給水塔について尋ねるシーンが急きょ追加され、ドラマでは給水塔があらゆる場面で過去と現在をつなぐ象徴的な存在として描かれている。

 過去の回想シーンには、「ポニー」の愛称で親しまれるSL「C56形160号機」を撮影のため特別に3両編成で仕立てた。汽笛を響かせゆっくりとホームに滑り込んでくる姿は、ドラマのクライマックスに一層の臨場感を与えている。さらに同日、主人公が亀嵩にやってくるシーンを現在運行する車両(キハ40系)で撮影。新旧ふたつの列車の対比で、主人公の過去と現在をいっそう鮮明に映し出したシーンとなっている。

1917(大正6)年に開業した篠目駅。蒸気機関車が走っていた時代の給水塔が今も残る。

篠目駅では、ホームに入ってくる列車の速度を通常より遅く調整するなど、きめ細かいサポートで撮影は一発OKとなった。

Story & Date

原作:
松本清張『砂の器』(新潮文庫刊)
制作:
TBSエンタテイメント
出演:
中居正広、渡辺謙、松雪泰子、原田芳雄、赤井英和 ほか
放送:
2004年1月18日から3月28日(毎週日曜日)TBSテレビ・JNN系列局
DVD『砂の器』発売元:
TBS
販売元:
ビクターエンターテインメント

蒲田駅付近で起こった身元不明の殺人事件。犯人と被害者らしき人物が「カメダ」ということばを発していたのを手がかりに捜査が進む。被害者の足取りを洗い直すうちに、ある有名音楽家が捜査線上に浮上。次第に、彼の知られざる過去と事件の全貌が明らかになっていく。

  
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